―― 話は変わりますが、ここ最近、ドコモ回線の品質低下が問題視されています。IIJも影響を受けると思いますが、フルMVNO側もauやソフトバンクと接続するというような計画はありますか。
矢吹氏 費用対効果が一番です。技術的には仮想化やコンテナ化が進んでいるため、最初のときのような投資ではない形で安くなるシミュレーションはしていますが、それでもまだ高いですね。もう少し安いとつなぎやすいのですが。
また、KDDIのフルMVNOをやるといっても、今はデータ通信だけの世界です。電話番号も含めた音声接続を考えると、かなりの投資になってきます。そこが見えていない中で、他のキャリアは難しい。昔と違って卸協議も進んでいて、音声eSIMの提供もできています。ですから、フルMVNOにこだわるのは、よりIoT的なものになってくる。そのときに2回線必要かと言われると、ちょっと微妙なところですね。
―― 現状、タイプDからタイプAに移るような動きは健在化していますか。
矢吹氏 あまりないですね。ただ、電波が原因かどうかは分かりませんが、KDDIのeSIMを出したこともあり、獲得比率は上がっています。
亀井氏 ドコモの音声eSIMは後から出しているので、これを出したらKDDIの比率は落ちるかな……と思っていたのですが、そうはなりませんでした。
―― 最後になりますが、ここからのMVNOの競争環境をどのように見ているかを教えてください。
矢吹氏 ここ2年はahamoやpovoや楽天モバイルもそうですが、オンラインで安いものが登場し、MVNOにとっては激動でした。話題先行でいろいろなものが動いたと思っています。特に去年の春ぐらいからは、市場全体が落ち着いている印象があります。例えば、われわれがMVNEとして提供している地方のケーブルテレビだったり、リアル店舗を持つMVNOだったりは非常に獲得が好調です。地に足がついた感じがあり、広く薄く伸びているような印象があります。
大手キャリアの大容量プランとは異なり、IIJmioのそれは、データシェアに狙いがあった。1回線ごとの使用量は少なくなるため、実態としては合算での料金を下げたいユーザーが利用することになるのかもしれない。一方で、大手キャリアのサブブランドやオンライン専用プラン/ブランドは、この容量帯が手薄になっている。その上となると、100GBや無制限になってしまうため、オンライン専用ブランドの20GBでは足りないというユーザーにとってもいいプランといえる。
ガイドライン改正に伴う端末割引や長期利用特典も、現在、検討していることがうかがえた。矢吹氏と亀井氏の言葉通りなら、夏ごろに何らかの新サービスが投入される可能性がある。端末割引などを絡めた施策は、既存ユーザーにとってもうれしいはずだ。このような手を打てるようになったのも、ガイドラインが改正されたからこそ。2024年以降、その競争環境が徐々に変わっていくことになりそうだ。
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