―― チップセットはハイエンドモデルと同じ「Snapdragon 8 Gen 2」ですが、ここまでのパフォーマンスは必要だったのでしょうか。
高島氏 HDMIで撮影した動画を映しながらエンコーディングして送るところまでやろうとなると、そのぐらいの処理能力が必要になってきます。
加藤氏 特に4Kを処理しようとするとそうですね。
―― 通信部分で、Xperia PROから強化した部分はありますか。
加藤氏 より強固に電波をつかみ、電波の範囲が広くなるよう、アンテナを設計し直しています。実際、5Gの“キワ”のような場所でも、電波をつかめたりします。
―― せっかくなので、αとセットでキャリアが販売しても面白そうだと思ったのですが、そういった売り方は検討されているのでしょうか。
加藤氏 現状では、そういった販売方法は考えていません。弊社のオープンマーケットでの展開になります。ただ、個人的にはそういったところで売ることができれば、市場のパイが広がるのではないかと考えています。
―― お話をうかがっていると、αだったりXperiaだったりのノウハウが生かされていますが、どのようなチームで開発したのでしょうか。
高島氏 セルラー通信に強い部隊とカメラの撮像のハード設計、ソフトウェア設計、さらにカメラのアプリケーションサービスの設計技術チームも加わっています。この3つの集合体ですね。
加藤氏 私ももとの所属は、業務用機器の担当です。そのチームから、この製品の企画担当として配属されています。
高島氏 私は設計を統括しましたが、通信機器を作るのに必要なメンバーを集めつつ、カメラのチームと連携をしていきました。
―― これは、αとXperiaを出しているソニーだからこその商品ですね。カメラだけだと通信機器の人材がいませんし、逆にスマホだけだとカメラのノウハウがありません。
加藤氏 はい。(一般的なカメラメーカーには)通信機器を作る経験がないと思います。ソニーはそのノウハウを持っていて、ソリューションとしてご提供できるところが強いと考えています。撮るところから、最終の映像出し、さらにはそれをアーカイブするところまで、一貫して技術を持っています。そういったところが、うまくかみ合った商品だと自負しています。
デジカメとスマホの両方を展開しているメーカーは、思いのほか少ない。国内はもちろん、海外メーカーまで視野に入れてもそうだ。
どちらも、高い専門性やノウハウが必要なうえに、スマホは規模の経済もものをいう分野。かつては両方を手掛けるメーカーもあったが、現時点ではソニーがほぼ唯一のメーカーといえる。その意味で、ポータブルデータトランスミッターは、非常にソニーらしい商品だ。むしろ、もっと早く出ていてもよかったかもしれない。5Gでソリューションを広げる大手キャリアの戦略にも合致する端末なだけに、販路の拡大にも期待したいところだ。
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