現在、総務省は固定電話サービスを「ユニバーサルサービス」に位置付けているが、契約者数は減少の一途をたどっている。そのせいか、今では固定電話のない家庭も珍しくない。
そのこともあり、総務省ではユニバーサルサービスについて、今後の“在り方”を検討している。具体的には、モバイル(携帯電話)通信や光ファイバー回線をユニバーサルサービスの対象に含めるかどうか、責務を負う事業者をNTT東日本(東日本電信電話)とNTT西日本(西日本電信電話)以外に広げるかどうかといった議論が進められている。
固定電話におけるユニバーサルサービスは、NTT法(日本電信電話株式会社等に関する法律)に基づいてNTT東日本(東日本電信電話)とNTT西日本(西日本電信電話)が提供責務を負っている。先述の議論において、両者の親会社であるNTTは、今後のユニバーサルサービスは、1人1台以上の回線数が普及しているモバイルを軸に検討すべきと主張している。
NTTは、ユニバーサルサービスをモバイルを軸にして、その責務をドコモを含むモバイル通信事業者全体で負うべきだと主張している。モバイルインフラを構築する上で重要な高速通信回線(光ファイバー回線など)については、NTT東日本/NTT西日本が最終提供責務を負う一方で、他の回線事業者(特に都道府県内で高いシェアを持つCATV事業者など)にも一定の責務を課すべきだと主張している前日に行われたソフトバンクの2024年度決算説明会でのユニバーサルサービスに関する質疑を受けて、NTTの決算説明会でもユニバーサルサービスの在り方に関する質疑が行われた。
―― 改正NTT法が施行されました。他社が“本丸”としている、旧日本電信電話公社時代からの「特別な資産」や外資規制、ユニバーサルサービスの在り方など、(今後のNTT法に関するう)議論の進ちょく状況をどう捉えていますか。ソフトバンクの宮川(潤一)社長は、ユニバーサルサービスについて「携帯電話回線ではなく、光ファイバー回線を指定すべきだ」と主張していますが、その点の受け止めもお聞かせください。
島田社長 総務省のワーキンググループにおける論点は大きく3つあると考えていますが、一番重要なのはユニバーサルサービス(自体)をどうしていくのかという点だと思います。
議論を促進するために、私たちは(ユニバーサルサービスを)「モバイルでやった場合」「光(ブロードバンド回線)でやった場合」の試算を提示しました(参考リンク)。具体的には、光でやると毎年720億円の赤字が発生する一方で、ワイヤレス固定電話を活用しつつモバイルを使えば毎年30億円くらい(の赤字)で収まる――という選択肢を示しています。
専門家の方々に基本的なデータを見ていただいて、「どういう形が利用者が一番に使えて、負担が少ないのか」という観点で整理をしていくのが、経済合理性や利用便益の上で重要だと考えています。試算の前提条件や中身についても、ワーキンググループで要望があったので説明をしています。
これから、議論は進展していくでしょう。(議論は)利用実態や経済合理性や利用便益の観点を踏まえて「国民にとって何がふさわしいのか」を踏まえて進めていくべきだと思います。光でやるのは1つの選択肢ですが、コストが掛かるので、私たちとしては(モバイルとの)組み合わせか、モバイルを多く使った形での展開がいいのかなと考えています。
「外資規制」「公正競争の確保」といった他の論点は、ユニバーサルサービスをどうするか方向性を決めてから考えるべきでしょう。
外資規制について議論の経緯を見ていくと、それぞれの立場の人が(その人にとっての)保守的な議論をしているように見えます。もちろん、安全保障は重要なのですが「何を日本国として守るのか」という軸がブレないように議論を進めてもらいたいです。ずっと保守的に物事を考えていると、世の中の変化は起こりません。「どうあるべきか」の議論を進めるべきだと思います。
公正競争については、基本的には(電気通信)事業法で内容が確立されています。私たちはそれに粛々と対応していきたいと思います。携帯電話事業者へのNTT東西の光ファイバー回線への貸し出しについては、現状提供しているエリアはもちろんのこと、提供していないエリアでもご要望があれば設置するようにしているので、引き続きこのように対応していきます。
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