―― 自治体への導入を進めたいという話もありましたが、確か2024年1月に発生した「能登半島地震」の際に、ヨシノパワーのバッテリーを提供していましたよね。どのようなきっかけで提供したのでしょうか。また、提供時の自治体や避難所の反応はいかがでしたか。
桜田社長 1月1日の出来事だったので、よく覚えています。当社のホームページの問い合わせフォームに、老人ホームの方から「明日には電気がなくなるので、バッテリーなどがあれば提供してほしい」というメールが届いたのがきっかけです。
当時は、道路などのインフラが送れるような状況ではありませんでした。しかし、ちょうどオフィスに充電済みのポータブル電源が10台ほど置いてあったので、「それを持って行こう」と決断し、震災の翌日の1月2日から運び入れました。
持っていった際には、とても喜んでいただけました。実際に現地は停電中で電気が通っていなかったので、必要な箇所に全部置いていきました。
―― ちなみに、震災では停電の続く場所にポータブル電源を持っていかれたわけですが、電源自身の充電はどのように行ったのでしょうか。
桜田社長 バッテリーと一緒にソーラーパネルも持参しました。現地で充電のやり方も説明してきました。時間がかかるものの、自動車の12Vアクセサリー(シガー)ソケットからも充電できることも案内しました。
―― こういったポータブル電源を実際の災害現場などで利用した際のデータを取るのは難しいと思いますが、施設の方はどのように使っていたのでしょうか。給電時間はどのくらいだったのでしょうか。
桜田社長 一番利用されていたのはストーブや電気毛布ですね。震災が起こってから数日間は寒かったこともあり、暖を取る目的で使われていました。お湯を沸かしていらっしゃる人もいました。
―― となると、相当消費電力の大きい用途に使われていたんですね。
桜田社長 その通りで、容量の大きい製品を持っていく必要がありました。電気毛布は比較的消費電力が低いので、B300やB600でも大丈夫でしたが、電気ストーブなどは(容量や出力の)大きいモデルが必要でした。電気ストーブの種類にもよりますが、大容量モデルなら1日程度は持ったそうです。
―― ポータブル電源に使われている電池に話を戻しましょう。ヨシノパワーが取りそろえてるレンジにおいて、他社ではリン酸鉄リチウムイオン電池を使った製品が多いという認識です。同じ容量で比べると、例えば240Wh前後の製品なら他社が3万円前後で買えるところ、御社の製品は4万2000円ほどです。思った以上に価格差がありますが、この点はどうお考えでしょうか。
桜田社長 価格は、当社製品における一番の弱点だと認識しています。当面の間は、先述した固体電池の特性や強みをお客さまに訴求し、価格差が生じる理由を理解していただいた上で購入していただこうとも考えています。
ヨシノパワーのポータブル電源を購入頂いているお客さまのうち、おおむね7割は固体電池のメリットを理解した上で、高くても購入していただいているという認識です。
ただし、販売数が増えれば、規模の経済で固体電池の調達価格を抑えられるはずです。それは製品の価格を押し下げる効果もあるので、今後は手頃な価格を実現することにもチャレンジしていきたいと思います。
―― 今回、インタビューをしようと考えたきっかけは、御社のポータブル電源が「固体電池を採用している」と知ったことでした。少し失礼かもしれませんが、日本の自動車メーカーですらまだ採用していない固体電池を「本当に使っているのか?」と疑問に思ってしまったのです。そもそも、固体電池はどのような技術に基づく充電池なのでしょうか。
桜田社長 液体やゲルを使わない「全固体電池」について、正直なところ現在は業界でも明確な定義がないという認識です。一応、電解液の割合が5%以下の電池を「全固体電池」と呼ぶことが多いですが、定義が変わったら問題なので当社では単に「固体電池」と呼んでいます。
「電解液の割合が5%以下の電池」という観点では、当社のポータブル電源が採用する固体電池は定義を満たしています。詳細は企業秘密ですが、充電池の電解質のほとんどが固体で構成されています。
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