通信品質を磨いたら「auマネ活プラン」が好調で、金融事業にもプラス効果(課題もあり)――KDDI高橋社長が語る2024年度第1四半期決算(1/2 ページ)

» 2024年08月02日 23時00分 公開
[小山安博ITmedia]

 KDDIは8月2日、2024年度(2025年3月期)第1四半期の連結決算を発表した。売上高は前年度同期比4.2%増となる1兆3891億3800万円、営業利益は同3.9%増となる2769億8800万円で増収増益となった。業績予想に対する進捗(しんちょく)率は、それぞれ24.1%、25%となり、順調な結果であることを高橋誠社長はアピールした。

KDDI高橋誠社長 報道関係者向けの決算説明会に臨むKDDIの高橋誠社長(画像提供:KDDI)

MVNO/ローミング収入減も通信収入はプラス 秘密は「通信品質」

 営業利益を見ると、グループMVNO収入(※1)や楽天モバイルからのローミング収入が計62億円減少した一方で、マルチブランド通信ARPU収入(※2)が29億円増、金融/エネルギー事業が46億円増、DX(ビジネス)事業が54億円増となり、差し引きで1030億円の増益となっている。

(※1)KDDIグループが運営するMVNOサービスによる収入
(※2)au/UQ mobile/povo各ブランドにおけるハンドセット(音声通話対応)端末における収入(沖縄セルラー電話との合算)

四半期決算 2024年度第1四半期決算のハイライト。前年度同期比で当期利益は横ばいだが、売上高と営業利益はプラスで、計画に対する進捗も順調だ
増減 営業利益の増減図。グループMVNO収入と、楽天モバイルからのローミング収入以外は順調に成長している

 マルチブランド通信ARPU収入は前年度同期の3707億円を超える水準で、業績の改善に貢献している。これを支えるのが、通信ネットワークの強化だ。

 同社では、au 5GにおいてSub-6エリアを高密度に展開することで、通信品質を向上す戦略を取っている(参考記事)。Sub-6基地局の数でも、同社グループは携帯4キャリアの中では最多の約3.9万局を開設しており、現在もエリアの拡大を進めている。

 このSub-6エリアについて、高橋社長は「(4G LTEからの)転用エリアと比べると、通信速度が約3倍に向上している」と説明する。

 また、同社グループは3.7GHz帯において近接した2つの周波数ブロック(100MHz幅×2)を保有しており、3.7GHz帯と4GHz帯の2つの周波数帯に対応した「Massive MIMO」を導入することで、「通信品質向上と効率的なエリア展開が可能」だという。

通信ARPU マルチブランド通信ARPU収入は前年度同期比でプラスに転じ、2022年度(2023年3月期)第1四半期と同水準に“回復”している
Sub-6 5GのSub-6(6GHz以下の帯域で、LTEからの転用帯域を除く)基地局は、既に約3万9000局を展開している上、周波数配置に優位性があることから、通信品質面で競合他社に対して有利という見方を示す

携帯回線の解約率は増加傾向 なのに収益が改善したのはなぜ?

 KDDIの主力である「パーソナルセグメント」では、事業のベースとなるスマートフォン稼働数が3246万台まで拡大した。回線の解約率は、UQ mobileやpovoを含む「マルチブランド」基準では1.11%と上昇傾向にある。ただし、メインブランドの「au」における解約率は「0.5%より上だが、1%よりは低い――その中間ぐらい」で、低水準を維持しているという。

 解約率上昇の背景には、SIM単体での契約があるという。SIM単体で契約したユーザーは、短期でキャリアを移動することが多く、「健全かどうかという話は置いておいて、それが影響して解約率が上昇している」と高橋社長は説明。SIM単体で契約したユーザーの流動性と共に、解約率の推移を注視していきたいとする。

 ブランド別の通信ARPU(1契約当たりの収入)はauブランドで約3%、UQ mobileで約8%のプラスとなったという。auブランドでは機種変更時に使い放題プランに切り替える人が8割超となったこと、UQ mobileブランドでは新規契約時に中/大容量プランを選択する人が7割超となったことが、ARPUの“押し上げ”に貢献した。また、UQ mobileからauへ移行するユーザーが前年度同期比で約2.2倍になったことも、収益のプラスにつながったようだ。

スマホ稼働数 スマートフォン稼働数が増加し、比較的高単価なauブランドの解約率を低水準で推移している状況が、ARPUのプラスと合わせて収入拡大につながった
プラン 容量がより多い(≒単価の高い)プランやブランドを選ぶユーザーが増えたことが、ARPU増の主要因のようだ

金融連携の「auマネ活プラン」も好調 ただし課題もあり

 KDDIでは、通信サービスと付加価値サービスの連携強化も進めている。特に金融サービスと連携した「auマネ活プラン」は、7月に100万契約を突破するなど好調で、解約率が他のプラン(※3)と比べて約2割改善し、通信ARPUも約1割増となったという。

(※3)auマネ活プランではない「使い放題MAXプラン」シリーズ

auマネ活プランが好調 KDDIでは、通信サービスに付加価値サービスをバンドルする取り組みを進めている。その中において、auマネ活プランは100万契約を突破し、通信サービスへのプラス効果も見られた

 auマネ活プランのユーザーは、「auじぶん銀行」の口座保有率が他のユーザーと比べて約4.8倍多いという。auじぶん銀行は、対前年度比で預金残高が53.3%増、住宅ローンの貸し出し残高も56%増で、住宅ローンの融資実行累計額も4.5兆円に達しているという。auマネ活プランの成長は、金融サービスのプラスにもつながっているようだ。

auじぶん銀行にはプラス auマネ活プランは、auじぶん銀行の基盤拡大に貢献しているという

 同プランは、auじぶん銀行だけでなく、auフィナンシャルサービスと共同で発行するクレジットカード「au PAY カード」にもプラスの効果をもたらしているという。一方で、同じ金融サービスでも「auカブコム証券」の利用は「大きく伸びている状況ではない」。2024年1月から「新NISA(少額投資非課税制度)」が始まったものの、口座開設数はそれほど伸びていないようだ。

 auカブコム証券は「少し立て直しが必要」ということで、KDDIは共同経営パートナーである三菱UFJフィナンシャルグループ(MUFG)との間で協議を進めているとのことだ。

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