スマートフォン市場において、AppleのiPhoneとGoogleのPixelは特異な存在です。両社ともソフトウェア開発を主軸とする企業でありながら、自社設計のプロセッサを搭載した独自のハードウェアを展開している点で共通しています。
この類似性から、両者の最新フラグシップモデルであるiPhone 15 ProとPixel 8 Proはしばしば比較の対象となります。その中でも特に注目を集めるのがカメラ性能。スマートフォンカメラの進化は目覚ましく、両社ともAIを駆使した画像処理技術を競い合っています。
これら2機種を持って北欧に出掛ける機会がありましたので、今回はどちらの方が旅カメラとして使いやすいか、比較検証してみました。
iPhoneとPixel共通してよかったところは、手軽に写真を撮れるところです。軽量で多機能なスマホはカメラと違い、ホテルから出てちょっとした散歩をするときにも持ち出します。それゆえに、思いがけない出会いに対してチャンスを逃がさず撮影できます。
特にAndroidの電源キーダブルクリックによるカメラ起動は優秀です。iPhoneも15 Proからモーションボタン長押しによるカメラ起動ができるようになりましたが、モーションボタンの位置の都合上、片手でクイックにカメラを起動する点ではPixelの方が使いやすいです。
自分の場合は海外で利用可能なSIMやApple Payが入っていた都合上、iPhoneを持ち出すことが多かったですが、どちらも画角・画質・レスポンスなどの面では信頼できる機材ですので、おおむねどんなシーンでも対応可能です。
また、アウトドアな環境でも気兼ねなく利用できるのもスマホの優位性です。ほとんどの一眼カメラはボタン、ズーム機構、レンズ交換機能ゆえに雨が降ると取り出しにくい一方で、スマホはIP規格の防水機能がついていることが多く、どんな環境でも比較的安心して使えます。
どんなにいい機材を持っていても、その場で使えなければ意味がありません。そういった意味で、常に手元から取り出せるスマホは最強です。
Pixelと比較してiPhoneの方がいいといえる一番のポイントは、オートホワイトバランス、つまり色味です。iPhoneは超広角、広角、望遠3つの画角ともに自然な色味であり、カメラによって色味が変わることもありません。特に北欧特有のビビッド目なパステルカラーはiPhoneの方が得意に感じました。
デジタルカメラが苦手とする暗いところの赤色や、ベタ塗り高彩度になりがちな夕景をそのまま〜現実より少し強調したくらいに仕上げ、無編集でも目を引くように仕上げてくれるところはさすがiPhoneといったところ。写真初心者にとって、とてもいいチューニングがなされている印象です。
暗い室内や、性能が比較的低い超広角カメラでも色があせることなく安定したカラーで描写してくれるのもよいです。どんなシーンでも期待通りのアウトプットを出してくれるため、iPhone1台でも安心して出掛けることができました。
ポートレートが使いやすいのもiPhoneがよかった理由です。Pixelの場合、ポートレートモードにするとデジタルズームをした1.5倍と2倍に加え、長押しで3倍の画角も選べます。iPhoneは1倍、2倍、3倍の3つの画角から選択可能。人に限らず、どんなシーンでも前ボケ後ろボケともに自然な仕上がりで撮影してくれました。
【訂正:2024年9月3日17時50分 初出時、Pixel 8 Proのズーム倍率について誤った記述がありました。おわびして訂正いたします。】
近頃、1型センサーを搭載して広角で何もせずともボケやすいスマホが出てきていますが、ポートレートで撮影したものはそれ以上にボケ量が大きくなります。そういった意味でも、一眼カメラの広角単焦点のような使い心地が得られるのはiPhoneの方でした。
個人的に意外だったのがパノラマ機能。画像をつなぎ合わせる都合上、AIに強いPixelの方がいいイメージでしたが、実際は逆でした。
ほぼ同じ画角で撮影したパノラマ写真を切り出したところ、iPhoneの方が断然解像度が高い結果に。さらに、Pixelには1つしかモードがないのに対して、iPhoneは3種類のカメラどれでもパノラマが撮れるため、自由度という点でもiPhoneの方が断然いい結果になりました。
余談ですが、iPhoneは海外に行けば自動的にシャッター音がなくなるため、撮影体験として非常に快適でした。Pixelは日本モデルだと海外ローミングに接続しても自動的にシャッター音が消えることがなく、美術館やレストランなど静かなシーンで使うのはiPhoneの方が断然よかったです。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.