NTTコノキューデバイスは9月9日、設立後初のグラス型デバイス「MiRZA(ミルザ)」を発表した。小売価格は24万8000円(税込み)で、NTTドコモが2024年秋にドコモショップ店頭やドコモオンラインショップなどで販売開始予定だ。
NTTコノキューデバイスはNTT系のXR(クロスリアリティ)事業会社であるNTTコノキューの関連子会社で、ドコモの100%子会社であるNTTコノキューとシャープが株主となっている。XR技術に関するデバイスの開発が主な事業内容で、NTTグループの技術力とシャープのハードウェア開発ノウハウを結集させるべく設立された。
設立後初の第1弾製品がMiRZAというわけだ。
堀清敬社長は、その特徴について「重量は125gと非常に軽い。軽さだけでなく、スマートフォンとの無線接続も可能。非常に取り回しがよく、付け外しも非常に簡単できる」とアピールする。
【訂正:9月12日10時35分】初出時、重量に誤りがありました。お詫びして訂正いたします
プロセッサは「Snapdragon AR2 Gen1」を備え、このプロセッサを搭載したデバイスは世界初(NTTコノキューデバイス調べ)という。スマートフォンとはBluetooth 5.0/Wi-Fi 6Eを介して接続する。
中央にRGBカメラが1つあり、左右(テンプルの先端部)に空間認識用のカメラが2つある。マイクは4つあり、将来的には「指向性もサービスとして提供できる」ほどのスペックを持つ。
開発のプラットフォームとして、「Snapdragon Spaces プラットフォーム」に対応しており、ゲーム開発ツール「Unity」「Unreal Engine」を利用した開発も可能だ。
一見すると、中国「XREAL」のような存在に思えるが、MiRZAはXREALにはない線のようなものがレンズに含まれる。
仕組みはこうだ。グラスのフレーム部分の内側あるmicroOLEDで表示した映像を、グラス内のミラー(扇型のような線)に反射させて、人の目では立体的な映像として見えるようになっている。
XREALも光の反射を利用する。MiRZAは光の反射の回数がXREALより1回多いが、レンズの線をハーフミラー代わりにすることで、XREALのようにレンズとハーフミラーを分けて埋め込む必要がなくなり、薄型化に成功している。
バッテリー内蔵もXREALにはない特徴だ。XREALよりは全体的に太いパーツに見え、筆者が所有する約75gの「XREAL Air 2 Pro」と比べるとMiRZAの約125gは若干重く感じるが、重量のバランスが前後のどちらかに偏らないようになっている。「物が頭にある」感はあるものの、負担になるほどではなかった。
「非常にかけ心地がライトだし、装着・脱着ともにスムーズに行えるため、ゴーグル型やヘルメット型のデバイスよりは、気楽に利用できるのではないか?」と堀氏が言うメリットは装着するとよく分かる。
さて、肝心のコンテンツはどうだろうか?
コンテンツの少なさゆえに、スマートグラスで何ができるのかが一般の人に伝わりづらいのが現状の課題だが、「このハードウェア、ハードウェアに組み込むソフトウェア、ユーザー接点となるスマートフォンアプリの全てを自社で開発できる」(堀氏)ことが、NTTコノキューデバイスとMiRZAの強みの1つとなっている。
幾つかのコンテンツを体験すると、前提としてスマートフォンが必要だと分かった。そのスマートフォンも現状はシャープの「AQUOS R9」のみ。堀氏は「MiRZAと接続するスマートフォンが、プロセッサ(Snapdragon AR2 Gen1)に対応していなければ、(接続することは)厳しいというのが現状」とした。さらに、「現時点(9月9日)ではiPhoneで利用できるようになる予定はないが、今後、他のメーカーのスマートフォンでも利用できるようにしていく」(堀氏)という。
ブラウザやカメラでの静止画撮影は「MiRZAアプリ」から行う。このアプリの企画はNTTコノキューデバイスが担当し、UI設計などはICTソリューション事業を手掛けるテックファームが担当した。
【訂正:9月12日16時25分】初出時、「このアプリの企画はNTTコノキューが担当」と表記しておりましたが、正しくは「NTTコノキューデバイスが担当している」です。お詫びして訂正いたします
コミュニケーションを意識した機能もある。対面で会話をする際やテレビの音声を文字に起こして字幕表示するような機能だ。
App StoreとGoogle Playで配信されているアプリ「XRAI Glass」をスマートフォンにインストールし、スマートフォンとMiRZAのマイクで拾った音声をクラウドサーバにアップロードし、翻訳結果や文字起こしのデータをダウンロードして、MiRZAに表示する仕組みだ。XRAI GlassアプリはNTTコノキューデバイスではなく、英XRAIが開発元となっている。
目の前の視界を物理的にふさぐデバイスだと、このような使い方はできないが、MiRZAでは「相手の表情と翻訳を同時に見られる」のがポイントだ。
目の前が透けて見えるMiRZAは、作業現場での活用も期待される。例えば、配電盤のメンテナンスの際、MiRZAにマニュアルを表示し、それを見ながら作業できる。9日時点で、MiRZAは単独で通信機能を備えていないが、これがグラスだけで完結すると、利便性が向上するだろう。
MiRZAは、ビジネス的な用途だけでなく、ゲームコンテンツをプレイするデバイスとしての可能性も秘めている。MiRZAアプリを通じたWebブラウザの閲覧や動画の視聴では、スマートフォンのディスプレイを指でなぞるなどして操作する必要があるが、ゲームのデモでは空間認識とハンドトラッキングの機能を組み合わせて、仮想空間に隠れたゴーストを手で捕まえられた。
ここで、短時間ながら分かったMiRZAのメリットと課題を整理したい。メリットは、コミュニケーションや手元を見ながらの作業に向くという点。目の前をふさがない構造は、今後、進化を遂げる上でも重要だろう。ただ、レンズの線をハーフミラー代りにするため、配電盤の疑似マニュアルは線と重なってしまい、見づらいと感じた。
内蔵バッテリーは、USB Type-Cケーブルで充電できる。連続使用時間は、カメラ使用時や明るさを最大にした際などの負荷の高い使い方の場合、1〜1.5時間となっているが、「モバイルバッテリーなどでMiRZAを充電しながら使用することも可能だ」(堀氏)という。
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