―― CMを流す時間帯は決まっていたのでしょうか。
福田氏 そこはお任せしていましたが、CMを流したのは関東と静岡です。全国一律でいこうとすると、7億円ぐらいになってしまうので……。そこに絞りつつ、どのぐらい投入すれば多くの人が1回、2回は見たとなる量をやっています。1回、2回見れば、話題になるからです。
最初は群馬(※福田氏は群馬県出身で現在、前橋工科大理事長も務める)と静岡で流そうと考えていました。テストマーケティングとして、地方だけなら安いのでと思っていたのですが、完成したものがよかったので、一度は関東全体でやらないとダメだろうということで、全域に投入しました。中途半端だともったいないので、関東では、このぐらいの投入量であれば、多くの人に見てもらえるという量でやりました。
静岡では、それよりも投入量を増やしています。効果測定するために、そこだけは3割増しぐらいにしました。あとは、インターネットやSNSで、関東、静岡と関西圏も含めてやっています。検索広告は全国です。CMはその3段階です。
―― ターゲットはやはり一般層に広くということでしょうか。
福田氏 日本通信SIMになってからは、MNPで入ってくる方が圧倒的に多い。これは、b-mobileのときになかった傾向です。これが意味しているのは、メイン回線としてご利用する方々が増えているということです。実際、料金プランもメインで使っていただける内容になっています。そうなってくると、ターゲットは誰彼問わずになってきます。分かっている方だけに向けるのであればインターネットで十分ですが、一般の方々に届かせようとすると、やはりテレビの力は絶大です。
―― 効果はどうでしたか。
福田氏 申込数は増えていますが、今、それを測定しているところです。やはり知らなかった人が圧倒的に多かったという感触があります。「そんなのあるんだ」という感じで、調べたあと乗り換えるという声はいろいろなところに書き込まれていますし、実際、数自体も増えています。そういう意味では、ペイしています。
これは今検証中ですが、通信は典型的なサブスクモデルで、3年間続けばペイすることになります。やはり予想通りというか、普段「テレビを見ません」という人からも「テレビ見ました!」って言われるんですよ(笑)。特定の番組を見るために見るというのではなく、テレビがついている状態にはあるのだと思います。
―― 次回作はありますか。
福田氏 考えています。これは、どこかでやらなければいけない。データを取りながら状況を見ていますが、2年後に向け、その後のことも考えています。
最近、考えていることがあって、今はアンテナピクトにdocomoやau、SoftBankと出ますが、音声の相互接続をすれば、ここに日本通信と出すことができます。その準備もしつつですね。
―― 大前提として、黒字化したからできたCMですよね。
福田氏 もちろんです。本音では黒字、赤字は関係ないと思っていますが、ドコモとの音声接続でフルスケールのサービスができるようになる。当社としては、大きな勝負どころです。2年後にスタートではなく、今のうちから少しずつです。ビジネスはいつもそうですが、勝ちパターンを探す旅のようなところがあります。こういうふうにしたらいけるというところを見つけて、あとはそれを拡大再生産していければいいからです。
やや唐突にも思えた日本通信のテレビCMだが、その背景には2年後に控えたドコモとの音声接続があった。フルMVNOとしてサービスを展開する際に規模を拡大すべく、今のうちから徐々に知名度を高めていくというのが日本通信の戦略だ。シンプル290を題材に選んだのは、そのインパクトがあったからだ。その意味では、フルMVNOサービスにつながる第2、第3のCMがあっても不思議ではない。次回作でどのような工夫を凝らしてくるのかも注目しておきたい。
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