2024年10月4日、北海道新幹線の新函館北斗駅と札幌間を結ぶ212キロの間で現在、工事が進んでいる。
この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2024年10月5日に配信されたものです。メールマガジン購読(税込み月額550円)の申し込みはこちらから。
北海道二海郡八雲町にある渡島トンネル上二股工区では、Starlink基地局が設置されており、トンネル内でもauのスマートフォンだけが利用可能となっている。公衆網となっているため、自分が普段使っているau回線もちゃんと使えた。
KDDIの事業創造本部LX基盤推進部、通信ビジネスグループリーダーの今村元紀氏によれば「現場の業務効率化だけでなく、トンネル内がエリア化されることで、子供が病気になったり、奥さんが妊娠中といったときにもすぐに連絡が取れるという安心感が働く人にとってありがたがられている。家族のことが心配でも圏外にいると、モヤモヤした気持ちで仕事をしなくてはならない。そうした状況から解放されるというのが大きいようだ」と語る。
トンネル内のみならず、長期間、海を航行する船で働く人や、南極といった局地で働く人にとって、これまでは高速で快適な通信環境の提供が難しかった。しかし、Starlinkの登場で、家族との連絡のみならず、ヒマなときにはYouTubeなどの動画が楽しめるようになったというのは、画期的な進化といえるだろう。これまで通信環境がなくて「働きたくない」と思えるような現場も、通信があれば「働いても良いかも」となるわけで、労働力不足という課題を解決する意味でも通信の果たす役割は大きいだろう。
トンネル内でStarlink基地局が活躍する様子を見て、個人的疑問を抱いたのが「ローカル5Gっていらなくね?」ということだった。
Starlink基地局であればKDDIが運用、保守をするので、事業者の負担はかなり小さい。ユーザーは普段使っているスマートフォンをそのまま使えてしまう。高速通信が可能なので、映像や音声に乱れがなく遠隔地から安定した監視が可能だ。
KDDI総合研究所では現場をスキャンし、点群データを生成、さらに圧縮する技術を提供しており、4G回線でも十分、実用性のあるソリューションを提供していた。
わざわざローカル5Gとして、専用の無線機や設備を導入しなくても、Starlink基地局で、今求められているニーズがすべて満たされているような気がしてならないのだ。
「重機を遠隔操縦するにはローカル5Gの超低遅延が必要」なのかも知れないが、そもそも、超低遅延を実現するには、山間部に光ファイバー網を敷設する必要がある。
そんな面倒なことをするよりも、Starlinkによる遅延があっても遠隔操縦できる技術を開発した方が、現場のためになるだろう。
そう考えるとローカル5Gの需要は本当にあるのか、見極める時期に来ているのではないだろうか。
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