JR東日本を含むJRグループ6社では、会社をまたいでも運賃を通算できる制度が導入されている。
元々、この仕組みは旧国鉄が分割民営化される際に盛り込まれた。分割民営化後、JRの本州3社(※5)が完全民営化されることに伴い、国土交通省は2001年に「新会社がその事業を営むに際し当分の間配慮すべき事項に関する指針」を発出し、JR会社法(※6)の適用対象外となる3社を含めてJRグループ間の運賃は通算するように“指導”されている。その後、九州旅客鉄道(JR九州)もJR会社法の適用対象外となったが、その際もほぼ同文の指針が発出されており、現在に至っている。
(※5)JR東日本、東海旅客鉄道(JR東海)、西日本旅客鉄道(JR西日本)
(※6)正式名称は「旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律」で、現在は北海道旅客鉄道(JR北海道)、四国旅客鉄道(JR四国)と日本貨物鉄道株式会社(JR貨物)の3社に適用される
現在、JRグループの本州3社の運賃は電車特定区間を除いて共通だ。一方で、JR北海道、JR四国、JR九州の3社は本州3社よりも“割高”な運賃を適用している。
しかし先述の通り、JRグループの運賃は通算できるようになっている。そのため、運賃の異なる3社にまたがって乗車する場合は「通算加算方式」で運賃を計算する。この方式では本州3社の運賃を「基準運賃」とした上で、以下の手順で運賃を計算する。
(※7)幹線区間の営業キロと、地方交通線区間の「換算キロ」を合計したもの
加算運賃の額は、JR北海道/JR四国/JR九州の各社で異なり、2社以上にまたがる場合はそれぞれの会社において加算運賃を算出する。例えばJR四国の高松駅(香川県高松市)から児島駅〜(本四備讃線/宇野線)〜岡山駅〜(山陽本線)という経路でJR九州の門司駅(北九州市門司区)に至る乗車券を買う場合、運賃計算は以下の通りとなる。
(※8)運賃ルール上、山陽本線(幹線)の岩国〜櫛ケ浜間(または両駅を通過する)乗車券を購入する場合、距離の短い岩徳線(地方交通線)経由で乗車したとみなして計算を行うため「運賃計算キロ」となる
(※9)本四備讃線の宇多津〜児島間(瀬戸大橋区間)の加算運賃を含む
今回の運賃改定が成立した場合、JR東日本の運賃はJR東海/西日本と異なるものとなる。そこでJR東日本では現行の運賃(≒改定後のJR東海/JR西日本の運賃)を「基準運賃」とした上で、自社区間に「加算運賃」を設定する。加算額は「JR東日本における値上げ相当分」とされている。
ニュースリリースで例示されているものとして、JR東海の御殿場駅(静岡県御殿場市)から国府津駅を経由して自社の大船駅(神奈川県鎌倉市)に至る乗車券の運賃計算がある。その計算手順は以下の通りだ。
日本における高速鉄道の代名詞ともいえる「新幹線」だが、その名の通り「新しい幹線(鉄道)」として誕生した。そのこともあり、新幹線の多くは運賃上「在来線の別ルート」という扱いとなっている。この扱いに当てはまる新幹線は以下の通りだ。
運賃は基本的に新幹線乗車時も在来線経由とみなして計算される。そのため、上記の区間を含む新幹線の乗車券は在来線経由でも有効で、逆に在来線経由の乗車券は新幹線経由でも有効だ。
ただし、運賃の計算や乗車経路など、例外も多数存在する(説明したいところだが、長くなりすぎるので割愛する)。
運賃ルール上、多くの新幹線は在来線の別線扱いとなっており、新幹線経由の場合でも在来線を経由したとみなして運賃を計算する。ただし、一部の駅で発着/乗り換えをする場合は、その駅に絡む一部の区間を“別路線”とみなして運賃計算を行うことになっている(出典:JR西日本)先述の通り、JR東日本が運賃を改定すると、JR東海/JR西日本との間に運賃差が生じる。
例えば東京山手線内(※10)と熱海駅の往復を考えた場合、現在(運賃改定前)はとりあえず「東京山手線内→熱海」「熱海→東京山手線内」の乗車券を買っておけば、在来線経由でも新幹線経由のどちらでも利用可能だったが、改定後は在来線(JR東日本)経由と新幹線(JR東海)経由で運賃に差が生じてしまうため、このような取り扱いは難しくなる。
(※10)東京駅から片道101km以上200km未満の乗車券に適用される特別な制度で、運賃計算を東京駅から(まで)とした上で山手線(環状系統)とその内側にある中央本線の東京〜新宿間の各駅で乗降可能としている(ただし、東京山手線内に指定されている駅での途中下車は不可)
運賃改定に伴いJR東日本(とJR東海)は東海道本線と東海道新幹線の東京〜熱海間を“別路線”とすることとした。これにより、東京(山手線内)〜熱海間の普通乗車券を購入する場合は必ず「東海道線(在来線)経由」か「東海道新幹線経由」を事前に指定しなければならなくなる。
ただし、運賃値上げ後も以下の取り扱いは継続される。
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