ドコモとモトローラの歴史は古く、かつてはライバル的な存在でもあった。ドコモ(当時はNTT)の2Gケータイである「mova」は、モトローラの「MicroTAC」対抗として開発された端末。黒船として上陸したモトローラに触発されたNTTや同社に端末を納入するメーカーが、総力を挙げて端末の小型化を進めてきた経緯がある。一方で、2003年に国際ローミングサービスの「WORLD WING」を開始した際には、当時、ドコモ端末が対応していなかった第2世代の通信方式・GSMを利用できる端末として、モトローラの「V66」を貸し出していた。
また、2005年にはドコモ初のスマホとしてSymbian OSを搭載した「FOMA M1000」を発売。法人利用に特化したモデルとして販売した1台だったが、当時はiモード端末の全盛期だったこともあり、物珍しさもあって大きな話題を呼んだ。その後、ドコモは海外モデルの「RAZR V3xx」をベースにした「M702iS」や、その国際ローミング対応モデルの「M702iG」を発売。多機能化が進む中、薄さやスタイリッシュさを打ち出した端末として記憶に残る1台になった。
海外で販売されていたRAZR V3xxをベースに開発された、ドコモのM702iS。海外端末風の見た目だが、iモードに対応していた。写真のカラーはHOT PINK。IIJで販売中のrazr 50 ultraにも、この機種をモチーフにしたHOT PINKが用意されている(写真提供:ドコモ)その後、FOMAの90Xi/70Xiシリーズでモトローラの端末が定番化していくと思いきや、06年のM702iS/iGを最後に、後継機が発売されることはなかった。モトローラ自身はAndroidスマホも開発しており、日本ではKDDIやソフトバンクが取り扱っていたものの、ドコモでの展開はなく現在に至る。そこから、約18年の月日が経過した。
2020年に、razrブランドはフォルダブルスマホに形を変えて復活。くしくも、ドコモは18年前と同じブランドの端末を取り扱うことになった。同社でプロダクトマーケティング本部 プロダクトクリエーション部 部長を務める佐々木啓三郎氏は、「M702iSから18年、本当に長いことお待たせした」と語る。
もっとも、razr 50dはZ世代を中心とした若年層をメインのターゲットにした端末。どちらかといえば、ドコモからモトローラ端末が登場するのを18年間待ちわびていた古参のユーザーではなく、新たにドコモを使い始めるユーザーに向けた端末という色合いが濃い。ドコモは、代表取締役社長に前田義晃氏が就任して以降、ユーザー数の拡大にアクセルを踏んでおり、特にデータ通信の利用が多く、将来の基盤となる若年層の獲得には注力している。ahamoの容量拡大などで他社に先行したのも、そのためだ。razr 50dは、この戦略にマッチした端末といえる。
また、ドコモのラインアップ全体を見渡したとき、フォルダブルスマホはバリエーションが手薄になっていた。現状、同社は横折りのフォルダブルスマホとしてサムスン電子のGalaxy Z FoldシリーズとGoogleのPixel Foldシリーズを取り扱っているが、縦折りのフォルダブルスマホはサムスン電子のGalaxy Z Flipシリーズのみ。razr、Libero Flipの2ブランドでミッドレンジからハイエンドまでをそろえるソフトバンクと比べ、品ぞろえが見劣りしていた。ミッドレンジで価格のこなれたrazr 50dは、その隙間を自然と埋める1台になりうる。
ドコモが取り扱うフォルダブルスマホは、サムスンのGalaxy Z Flip、Galaxy Z Foldシリーズ(写真左)とGoogleのPixel Foldシリーズ(写真右)で、現行モデルは計3機種。いずれもハイエンドモデルのため、価格が高止まりしていた実際、本体価格は11万4950円(税込み、以下同)で、ベースとなるrazr 50のモトローラ直販価格である13万5801円よりも安く抑えられている。これに対し、ドコモが扱ってきた縦折りフォルダブルスマホの「Galaxy Z Flip6」は17万5560円。10万円は超えてしまっているものの、一段安い価格で手に入るフォルダブルスマホとして差別化が図られている。24回目の残価が下取りで免除されるいつでもカエドキプログラムを使うと、実質価格は5万9510円まで下がる。フォルダブルスマホを初めて使ってみたい人にも、手に取りやすい価格といえそうだ。
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