このようなスマートフォンにてシャッター音が強制的に鳴る仕様も、日本では少しずつ変わり始めている。特に通信キャリアを介さないオープンマーケット(SIMロックフリー市場)では、一部機種でシャッター音を鳴らない設定にすることが可能だ。
この流れは広がりつつあり、2024年には日本市場で長らく商品展開を行うソニー、シャープのスマートフォンでも、オープンマーケット向けに販売される機種はシャッター音をオフにすることができる。
これについてシャープは「海外展開を意識して、シャッター音をオフにできる仕様にしている」とインタビューで語っており、海外市場のニーズもくみ取った仕様としている。その一方でキャリア向け商品は、通信キャリア各社の要望に応える仕様とした。
日本以外にグローバル展開する海外メーカーも同様だ。日本で商品展開を行うXiaomiでは、オープンマーケット向けの商品についてXiaomi Japan広報は「日本と韓国以外の地域の設定にすると、カメラの設定にオンオフの切り替えスイッチが表示される」としており、利用者が任意でシャッター音をオフにできる。
さらに、日本と韓国以外の地域に設定すると「シャッター音が小さくなる」とのこと。これは明確な音量の規定がある韓国に合わせた仕様と思われる。
興味深いのは、ソフトバンクの回答にあった「iPhoneについてはAppleの判断になる」という点。このことから、iPhoneは通信キャリアの自主規制の外にいるものと考えられる。
仮に「市場ニーズがあった」として、Appleが日本向けiPhoneのシャッター音をオフにできるよう、ソフトウェアアップデートなどで仕様変更したとする。この場合、ソフトバンクの回答通りなら法的拘束力のない自主規制を強制することはできず、Appleの判断に従うといっているようなものだ。
現に日本向けのiPhoneも韓国を除く地域で、現地SIMの使用や国際ローミング海外の通信キャリアの電波をつかむ状況では、シャッター音をオフにできるような仕様にOSアップデートで変更されている。
このアップデートは韓国も同様であり、現地メディアの朝鮮日報も、世界シェアの大きいメーカーがソフトウェア更新でシャッター音に干渉できるため、場合によっては「国内の規定が意味をなさなくなるのでは」と指摘している。
防犯という意味では効果や抑止力があると思われるスマホカメラのシャッター音。一方、アンケート結果から多くの利用者が、必要に応じてシャッター音をオフにできる設定を求めていることも分かる。
同じく携帯電話のシャッター音が規定されている韓国では、 前述のアンケート調査の結果をもとに、業界団体へ規定の見直しを働きかける動きも見られる。
日本で携帯電話のシャッター音が自主規制によって規定されてから、間もなく4半世紀が経過する。25年もたてば携帯電話もスマートフォンが大半となり、利用者の声も含め自主規制が始まった頃と状況は大きく変わってきている。
そろそろスマートフォンのシャッター音に関して、日本でも見直しを議論すべきタイミングなのではないだろうか。
佐藤颯
生まれはギリギリ平成ひと桁のスマホ世代。3度のメシよりスマホが好き。
スマートフォンやイヤフォンを中心としたコラムや記事を執筆。 個人サイト「はやぽんログ!」では、スマホやイヤフォンのレビュー、取材の現地レポート、各種コラムなどを発信中。
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