ファーウェイがイヤフォン/スマートウォッチで存在感 異例の世界初公開、ローカライズの背景を読み解く石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)

» 2025年02月08日 10時42分 公開
[石野純也ITmedia]

 米国の制裁を受け、Googleのサービスや最先端のチップセットを利用できなくなった結果、日本市場でスマホの投入を中断しているファーウェイ(Huawei)だが、それらを必要としないワイヤレスイヤフォンやスマートウォッチで着実な成長を遂げている。7日には、ワイヤレスイヤフォンの新製品を2機種発表した。

 ラインアップに追加されたのは、耳にかけてスポーツ中でも音楽を楽しめる「HUAWEI FreeArc」と、フラグシップモデルの「HUAWEI FreeBuds Pro 4」。異例なのは、FreeArcは日本での発表が世界初だったということだ。正式発売が決定した「HUAWEI WATCH D2 ウェアラブル血圧計」も、これまでにない販路が注目を集めた。2機種の事例からは、日本市場を攻略するファーウェイの戦略が透けて見える。

ファーウェイ ファーウェイ・ジャパンは、2月7日に新製品発表イベントを開催。ワイヤレスイヤフォンのFreeArcとFreeBuds Pro 4を披露した。写真左はファーウェイ・ジャパンのデバイス部門で日本・韓国リージョンのプレジデント 賀磊(ハ・レイ)氏。右は、FreeArcのアンバサダーを務めるプロランナーの神野大地氏

異例の日本先行発表となったFreeArc、その背景にFreeClipの成功あり

 FreeArcは、ファーウェイ初となる耳掛け型のオープンイヤーイヤフォンだ。同社は、ウェアラブル機器の1つとしてこの分野に注力してきた。2022年には、メガネと一体になった「HUAWEI Eyewear」を発売。その後継機の「HUAWEI Eyewear II」も、日本のメガネメーカーであるOWNDAYSとのコラボモデルが高い注目を集めた。2023年には、耳を挟むような形で装着し、左右の区別がない「HUAWEI FreeClip」を発売した。

ファーウェイ
ファーウェイ 海外に先立ち、日本で発表されたFreeArc。2月7日からGREEN FUNDINGで支援を受け付けている

 中でもFreeClipは、その独自性や着け心地のよさが評価され、グローバルで販売台数200万台を突破したという。FreeArcは、その直接的な後継機というわけではないが、オープンイヤー型イヤフォンの系譜に連なる製品といえる。形状記憶合金と液状シリコンで、耳に掛けたときの負荷を軽減している一方、形状を工夫することでフィット感を高め、落ちにくいデザインを採用した。

ファーウェイ
ファーウェイ オープンイヤー型にいち早く取り組んできたファーウェイ。中でもFreeClipは好評を博し、グローバル全体で販売台数200万台を突破した

 実際、筆者も発表会で装着してみたが、耳を挟んでしまうFreeClipよりも違和感が少なかったのが印象的だった。耳に差し込むカナル型とは違い、耳道への負荷も少ない。ファーウェイが手掛ける他のオープンイヤー型イヤフォンと同様、耳の回りに逆位相の音を出すことで、音漏れも防止している。これなら、スポーツ中に音楽を聞くだけでなく、長時間のビデオ会議や、動画配信サービスでドラマを一気見するときにも重宝しそうだ。

ファーウェイ 耳に掛けるように装着するため、負担はFreeClipより少ない印象を受けた

 冒頭で述べたように、FreeArcはこのイベントで初めてお披露目された製品になる。グローバルメーカーにとって、いちローカル市場にすぎない日本で先行発表するのは異例といっていい。実際、同時に発表されたフラグシップモデルのFreeBuds Pro 4は、1月にアラブ首長国連邦ドバイのグローバル発表会で、フォルダブルスマホの最新モデル「HUAWEI Mate X6」などと一緒に公開されている。

ファーウェイ 同時に発表されたFreeBuds Pro 4は、1月にグローバルで発表済み。その日本版という位置付けだ

 もちろん、FreeArcもFreeBud Proと同様、グローバルで販売していく製品。日本市場限定というわけではない。では、なぜファーウェイはFreeArcを日本で先行公開したのか。同社によると、これはFreeClipの販売動向が密接に関係しているという。先に挙げたように同機は200万台を突破しているが、日本はトップレベルに販売が好調だという。

 FreeClipは2万7800円(税込み)で販売されており、イヤフォンの中では比較的単価が高い。にもかかわらず、きちんと実績が出ているのが、ファーウェイが日本市場に注力している理由だ。一方で、日本は特にオーディオメーカーが多く、海外組も多数参入していることもあり、ファーウェイのシェアはまだまだ大きいとはいえない。日本市場にスマホがないため、Appleやサムスン電子のように、スマホのアクセサリーとして販売してくのも難しい。得意とするオープンイヤー型でどこまで存在感を発揮できるかが、今後の課題と言えそうだ。

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2025年12月25日 更新
  1. “やまぬ転売”に終止符か 楽天ラクマが出品ルール改定予告、「健全な取引」推進 (2025年12月23日)
  2. 3COINSで1万1000円の「プロジェクター」を試す 自動台形補正、HDMI入力、Android OS搭載で満足度は高め (2025年12月24日)
  3. 「楽天カード」は2枚持てる? 2枚持ちのメリットや注意点を解説、持てない組み合わせもあり (2025年12月23日)
  4. 「HUAWEI WATCH GT 6」レビュー:驚異のスタミナと見やすいディスプレイ、今買うべきスマートウォッチの有力候補だ (2025年12月24日)
  5. iPhoneのロック画面で「カメラが起動しちゃった」を防げるようになった! その設定方法は? (2025年12月24日)
  6. CarPlay/Android Auto対応「OttoAibox P3 Pro」発売 従来機から操作性向上、2画面表示も可能 (2025年12月23日)
  7. 「iPhone 16e」が突然登場 「iPhone SE」とは微妙に違う立ち位置【2025年2月を振り返る】 (2025年12月22日)
  8. メルカリで詐欺に遭った話 不誠実な事務局の対応、ユーザーが「絶対にやってはいけない」こと (2025年04月27日)
  9. 関東地方で5G通信が速いキャリアは? ドコモ、au、ソフトバンク、楽天モバイルでICT総研が比較(2025年12月) (2025年12月24日)
  10. 「駅で逆上し、列車遅延に」──“撮り鉄”の危険行為に広がる懸念 JR東日本が注意喚起 (2025年12月13日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー