では、なぜドコモはこのタイミングで料金プランを一新したのか。NTTドコモ 代表取締役副社長 コンシューマサービスカンパニー長の齋藤武氏は、「ユーザーのニーズが多様化している」ことを挙げる。そこで、単なる通信サービスではなく、「さまざまなバリューを盛り込んだ料金プランに一新する」ことを決めた。ドコモが考えるバリューとは、「熱狂、感動、共感を生み出し、全ての人々が、生活に豊かさを感じられる世界を実現すること」だとする。
その一環で決まったのが、DAZN for docomoやAmazon、国際ローミングの特典だ。NTTドコモ 執行役員 コンシューマサービスカンパニー統括長の鈴木基久氏は「今やどの世代でもインターネットショッピングの利用率は70〜80%」「日本人の70%以上がデジタルデバイスでスポーツ観戦をしている」という統計に言及し、AmazonやDAZNの特典の意義について述べた。また、ahamoの国際ローミング30GBが「大変好評だった」ことから、MAXにも盛り込んだ。
一方で、シンプルに料金を比較すると、値上げになるのは事実。この点について齋藤氏は「データ量と値段だけでなく、価値を選んでもらうというコンセプトで変えた。値上げ以上に、DAZN、Amazonプライム、国際ローミング、長期割引など、それを上回る価値を入れ込んでいると自負している」と自信を見せた。
今回、ドコモが目玉としているのがDAZNとの協業だ。2017年からDAZN for docomoとして、ドコモユーザー向けのサービスを提供してきたが、対象プランの契約者は無料という、さらに一歩進んだ提携となった。auでも、DAZNをバンドルした料金プラン「使い放題MAX+ 5G/4G DAZNパック」を提供しているが、こちらはDAZNの月額料金を含めたもの。
DAZN Japan Investment 最高経営責任者/CEOの笹本裕氏によると、DAZNの無料化は、ドコモ以外のキャリアでは実施しない、独占的な施策だという。
ドコモは国立競技場やIGアリーナなどの運営に携わるベニュービジネス、Jリーグやプロ野球球団との協業など、スポーツ事業にも注力している。その一環でDAZNと包括協業契約を結び、今回の特典につなげた。なお、今後はドコモ MAXとドコモ ポイ活 MAXの契約者向をスポーツイベントに招待する、選手とのミート&グリートといった施策も検討していく。
一方、DAZNに興味がない人にとっては、プランの魅力は半減してしまう。この点について齋藤氏は、今回のDAZN for docomoの特典をきっかけにして「今まで見ていなかったお客さんがスポーツを見る、スタジアムに行くといった循環を進めていきたい」とコメント。また、今回発表した特典にとどまらず、今後もMAXに付帯する特典は増やしていくことも視野に入れている。
どのようにコンテンツを追加していくかはまだ決まっておらず、「プランの中に追加していくこともあるだろうし、MAXを使っているお客さまに安価に提供するという形もあると思う」(齋藤氏)とのこと。
auではNetflix、Apple Music、YouTube Premiumなどのエンタメコンテンツをバンドルしたプランも提供しているが、こうしたコンテンツがドコモ MAXに追加される可能性はあるのか。ドコモ コンシューマサービスカンパニー マーケティング戦略部長の山本明宏氏は、「その可能性は否定できない」と答えながら、DAZNのような「1つのセグメントに特化したものを選んでいただきたい思いもある」とする。
ドコモは、対象のエンタメサービスを利用すると、10〜25%のdポイントを還元する「爆アゲセレクション」を提供しており、そこにはNetflixやYouTube Premiumも含まれる。こうした汎用(はんよう)的なコンテンツは、「爆アゲセレクションで十分カバーできている」(山本氏)との考えもある。
なお、DAZNについては、DAZN側が値上げをしたことで、キャリア側もそこに合わせて値上げをしてきた過去があるが、今回のドコモ MAXも、DAZNの価格改定に伴う値上げの可能性はあるのか。齋藤氏はこれを否定し、将来的な値上げについては「今のところ考えていない」とした。
新設されたDAZN for docomoや国際ローミングなどの特典に魅力を感じるかどうかが、ドコモ MAX/ドコモ ポイ活 MAXに乗り換えるかどうかに決め手になるが、DAZNを一切見ず、海外に行かない人にとっては割高なプランになってしまう。
特典を省いた純粋な使い放題プランがないのは気になるところだが、山本氏は、月額4950円で110GBのデータ通信を利用できる「ahamo大盛り」を勧める。ただしahamoはドコモショップでは契約できないオンライン専用プランなので、ユーザーを選ぶ形になる。
ドコモの新料金プランが登場したことで、プランを選ぶ基準も変化することになる。MAX、ポイ活 MAX、ポイ活 20、mini、ahamoという5つのプランそれぞれが、どんなユーザーに向いているのかを、ドコモ自身も分かりやすく説明していく必要がありそうだ。
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