NTTドコモは、2024年度決算と2025年度の業績予想を公表した。2024年度の営業収益は前年比731億円増の6兆2131億円だったが、顧客基盤と通信品質強化のためのコスト増により、営業利益は1239億円減の1兆205億円となった。
営業収益は、スマートライフ、金融決済、法人ソリューション事業などの成長分野で2000億円を超える増収があったものの、コンシューマー通信の減収や、法人PSTN(固定電話の加入電話回線ネットワーク)のマイグレーションなどがマイナス要因となった。
営業利益はスマートライフ事業を中心に増益があった一方、コンシューマー通信の減収、他社対抗コストの戦略的強化、PSTNマイグレーション(固定電話のIP化)などの影響で減益となった。しかし、下期にはMNPがプラスに転じ、ARPUは第1四半期を底に反転傾向。都市部や主要鉄道沿線の通信品質も向上し、プレゼンテーションを行った前田社長は「事業モメンタム(勢い)が明らかに回復した」と語った。
2025年度は、スマートライフと法人のオーガニック成長加速により、営業収益が1229億円増の6兆3360億円、営業利益は先行投資の継続と後年度負担軽減策により545億円減の9660億円を見込んでいる。スマートライフや法人といった成長分野では2000億円を超える増収を見込み、法人事業においては営業収益2兆円を目指す。コンシューマー通信は減収幅が改善する見込み。
2025年度も販売促進やネットワーク品質向上への投資を継続し、モメンタムのさらなる改善に取り組むという。2025年度も減益予想だが、26年度以降の成長を確実にするための取り組みに注力。25年度は成長に向けた変革の年として位置付け、マーケティング戦略とネットワークの構造改革を実行するとした。
マーケティング戦略では、新料金プランの「ドコモMAX」などを通じてモバイル通信サービス収入を2026年度にかけて増加に転じさせ、顧客獲得と販促費用の効率的な利用を実現するという。
ネットワーク構造改革では、サービスの土台となる通信品質の強化に今後も投資する。一方でネットワーク構築プロセスを抜本的に見直すことで、2026年度には基地局の投資単金を軽減し、2027年度にかけてネットワーク投資を300億円規模で効率化していくことを目指すとしている。
2025年度のコンシューマー事業では、「多様なビジネスパートナーのバリューとドコモのバリューを組み合わせ、お客さまに選ばれる新たなバリューを創出することに注力」するという。その1つの形が、6月5日から提供開始予定の新料金プラン「ドコモMAX」や「ドコモポイ活MAX」だ。
ドコモMAXは「プラン選択の軸をデータ量や価格から、バリューへとシフトした新料金プラン」と説明。長期利用割引や国際ローミングなどの特典に加え、DAZNやAmazonとのコラボレーションを通じて、スポーツ、EC、動画配信など、幅広いユーザーのニーズに応えるとした。
2024年度下期は、販促費の戦略投下によりMNPがプラスとなり、個人ハンドセット純増も改善。2025年度もMNPのプラストレンドを加速し、ユーザー獲得強化とドコモMAXの早期認知度向上による新規顧客獲得を進め、顧客基盤を強化するという。
2024年度のARPUは通期予想に10円及ばなかったものの、「eximoへのプラン変更率は4Qでも60%以上維持」した。料金プランのリニューアルを通じて、2024年度を底に上昇トレンドに乗りたい考えだ。
主な事業についての取り組みも説明した。スマートライフをけん引する金融事業はdカード PLATINUMが好調で、5月5日時点で60万会員を突破。収益拡大に貢献している。マネックス dカード積立決済額が約5倍に成長し、融資事業のローン残高も23%伸長。2025年度の金融事業収益は5160億円を目指す。
エンタテイメント事業の2024年度収益は、動画配信のLeminoや、吉本興業と共同で設立したエンタメ企業「ドコモ スタジオ&ライブ」などの成長により、2338億円まで成長。オリジナルコンテンツの開発や、Jリーグ、人気スポーツなどのイベント、ライブの主催、自社アーティスト育成を強化してオリジナルIPを開発し、2025年度は2360億円の収益を目指す。
法人事業はDX需要により、大企業向けソリューションは大きく成長したが、中堅中小向けは想定を下回った。2025年度はドコモグループのICTインフラやNTTグループの先進技術を活用し、2兆円の収益を目指す。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.