ドコモは新料金プランで反転攻勢へ、通信品質1位の目標を「なかったことにするつもりはない」 決算会見で語られたこと(2/3 ページ)

» 2025年05月10日 10時29分 公開
[房野麻子ITmedia]

ネットワーク品質向上に引き続き注力

 2024年度は通信サービス品質向上を最重要課題として取り組んだドコモ。全国の主要都市中心部や主要鉄道動線で、5G基地局数を対前年で20%拡大させ、イベント対策も強化。結果として、平均スループットは主要都心部で対前年20%、主要鉄道動線で30%向上。特に山手線周辺では80%向上した。前田社長は定期的に山手線に乗車して品質測定を行っているといい、「以前よりも高いスループットを確認している。お客さまの体感品質が着実に向上していると感じている」と語っていた。

ドコモ 通信品質向上の取り組みで体感品質が向上した

 2025年度は、Sub6の全国展開を拡大し、4G周波数帯による5Gエリアも、これまで以上に拡充する。また、MMU(Massive MIMO Unit)や最新型基地局装置の導入、置き換えを進め、端末の送信電力を高出力化するHPUEのスマホ対応も開始する。

ドコモ 25年度も通信品質向上に引き続き努める

 ネットワーク構造改革による効率化も進めていく。通信品質向上の投資は継続しつつ、組織・体制、業務プロセス、調達プロセスを変革してコスト効率化を図る。これにより26年度は5G基地局の投資単金を20%低減。ネットワーク関連投資を300億円規模で削減し、通信品質向上とコスト低減を両立させるとした。

NTTの「ダイナミックループ」を加えたロゴに刷新

 最後に、刷新したコーポレートブランドロゴを紹介した。新しいロゴは、従来のドコモロゴにNTTのコーポレートロゴである「ダイナミックループ」を融合したもの。カラーは今までと同じ「ドコモレッド」だ。加えて、NTTコミュニケーションズをNTTドコモビジネスに、NTTコムウェアをNTTドコモソリューションズに社名変更し、NTTドコモ・グローバルも含め、新たなコーポレートロゴを策定している。

ドコモ 新しいコーポレートブランドロゴ。NTTコミュニケーションズやNTTコムウェアの社名も変わる

質疑応答:銀行業や衛星通信の見通し、料金プランの考え方など

ARPUをどのように上げるのか

 プレゼンテーション後は記者からの質疑に応じた。

―― モバイル通信サービス収入について、25年度を底に26年度、27年度で反転する絵を描いている。先日発表した料金施策など、どんな形で絵を描いているのか。

前田氏 1つは以前から取り組んでいる顧客獲得をしっかりやっていくということ。正直、一昨年度(2023年度)までは、他社さんに比べて、販促コストに関してわれわれの投入額が多くなかったと思っている。獲られ放題をしっかり止めるということ。24年度は戦略的に販売コストをかけ、それによって下期はMNPがプラスになったが、この流れを25年度以降も続けていく。この中で顧客基盤が強化され、マイナスが少なくなっていく。ハンドセット純増もプラスにしていき、顧客基盤に関してのマイナスはなくなっていくと思っている。

 ARPUに関しては、24年度第1四半期で下げ止まっている状態にできている。ポイントや金融・決済といったバリューとの組み合わせで、高い料金プランを選んでいただけるような努力をしている。そのためeximoの移行率が60%になって、ARPUが上がってきていると認識している。

 新料金プランによって、さらにこの流れは加速できると思う。これらの掛け合わせによって、26年度には(モバイル通信サービス収入を)なんとか反転できる、再度狙えるような状況を作っていきたいと考えている。

銀行業の進展はめどが立っておらず

―― 銀行機能の獲得が後ろ倒しになっている。現段階の進捗(しんちょく)状況、銀行機能の獲得に対する考えを聞きたい。

前田氏 25年3月までにめどをつけたいと豪語していたが、かなわなかった。大変残念だと思っている。正直、現時点で何も決まっているものはないが、あらゆる可能性を探っている。

 銀行機能の必要性の認識はまったく変わっていない。特に今は金利も上がっており、銀行機能を取り込むことによるビジネス拡大のチャンスはある。銀行機能を取り込むことで、お客さまに提供できる金融サービスの幅も広がり、お客さまからのお支払い、われわれがパートナーに対して支払いをすることに関しても、銀行機能があるかないかで、やりやすさが変わってくる。改めて頑張って進めたい。

通信品質ナンバーワンは諦めずに取り組む

―― 通信品質向上の取り組みで一定の効果があった一方、25年度も取り組みを継続する。また、4月下旬に発表されたOpensignalの調査レポートではKDDIが多くの項目で優位に立っている。前田社長は過去に『一貫した品質』の体感評価ナンバーワンを目指すという発言もした。24年度を終えて、現状の通信品質についてどう感じているのか。

前田氏 向上してきているところはあると思っている。その結果が、Opensignalの5Gのダウンロードスピードやカバレッジの高評価につながったと思う。ただ、全体的には他社さんが上回っている。現時点で、他社さんを上回る状況には、必ずしもなっていないだろうとは思っている。25年度も26年度もしっかり投資していき、(通信品質を)向上させていく。

 私が昨年度、(通信品質改善を)お話させていただいた後、社内で一緒に取り組んできたが、やはり一定時間かかることがあるのは事実。その中で、どのように取り組んでいくべきか分かってきたこともある。そういった部分を充実させていき、なんとか向上させていきたいと思っている。

 サブランドも含めた通信品質でいえば、そこまで他社と乖離(かいり)しているレベルではないと思っている。

―― Opensignalの一貫した品質でナンバーワンを目標に掲げていたが、今回は(調査方法が変更されたため)発表されなかった。次回に持ち越しするのか。それとも、もうなかったことにするのか。

前田氏 なかったことにするつもりは全然ない。そこに向けてしっかり努力を進めていきたい。

2026年に衛星とスマホの直接通信サービスを開始予定

―― 衛星とスマホの直接通信について、KDDIはサービスを開始し、楽天モバイルは少し先の話を開示し、ソフトバンクも来年(2026年)開始すると明らかにした。ドコモにはHAPSもあり、NTTグループには宇宙ビジネスの「C89」もある。この状況が競争環境にどのような影響を与えると見ているのか。

前田氏 われわれも、衛星とスマホの直接通信に関して、来年夏にはサービス開始できるめどが立っている。そういう意味ではソフトバンクさんと同じ状況にあると思っている。

 HAPSはもともと26年度内に商用サービスしていきたいということで実験をいろいろ繰り返している。課題ももちろんあるが、目標をそこに定めており、今後もそこに向けて努力をし続けていきたい。

 いずれにせよ、KDDIさんが先行していることは事実だと思うので、われわれとしては来年度のサービス開始に向けた準備を確実に進めていくことだと思う。災害対策という意味では、必ずしも衛星とスマホの直接通信だけではないと思っている。やれることをしっかり取り組んでいくことでカバーできるんじゃないかと思っている。

―― 来年夏のサービス開始時、どこの事業者の衛星を活用するのか。

前田氏 それに関しては回答できない。できるようになったらお話したい。

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