NTTドコモの新料金プランは分かりづらい──。6月5日、ドコモは新料金プランの提供を始める。データ容量無制限をうたう「eximo」と、低容量向けで他社のサブブランドに対抗した「irumo」を刷新し、実質値上げとなったドコモの新料金プランだが、条件の多さにXでは「分かりづらい」との声が発表直後から飛び交った。
しかし、金融サービスや他の付加価値サービスを組み込み、条件を加えて安く見せるやり方は、今に始まったことではない。これは、他キャリアも以前から取り入れている戦略であり、特別なことでもない。
ドコモの前田義晃社長はどのように考えているのか。5月9日の決算会見で持論を語った。
ドコモの新料金プランで特に注目したいのが、「ドコモ MAX」「ドコモポイ活 MAX」の2種。ドコモでは、ドコモ MAXとドコモポイ活 MAXへの加入者を対象に、スポーツ配信サービス「DAZN for docomo」を追加料金なしで提供する。前田氏は「価値を軸としたサービス展開へとマーケティング戦略を転換していく」考えを述べており、いわば料金以外のバリュー(価値)の強化が新料金プランのポイントといえる。
前田氏は、「現在の事業環境や経済状況を鑑みれば、あらゆるコストが上昇傾向にある」と値上げの背景にも触れ、こうした状況下でも「お客さまにはできる限り高いレベルの価値を感じていただき、その対価としてご納得いただける料金をお支払いいただくサービスモデルを構築したい」と、今後の方向性を示す。
ただ、それ以前に「通信サービスはドコモがさまざまな価値を提供する上での基盤」であり、「通信基盤の上にどのような付加価値を創造し、他社との差別化をどのように図るか」、さらには、「そうした価値を必要とされているお客さまにどのように提供するか」という点も重視しているようだ。
「分かりづらいとのご意見をいただいている」──。前田氏はこう続ける。なぜネガティブな意見がドコモに寄せられたのだろうか? 前田氏は、ドコモの料金設計における基本的な考え方を交えて説明する。
ドコモでは、DAZNとのセット提供や、金融関連サービス(dカードの利用状況など)、光回線サービスとのセット契約など、複数のサービス利用に応じた割引を設けている。これは、単に通信サービスを提供するだけでなく、グループ内の多様な事業と連携することで、「お客さまが個別にサービスを利用するよりも大きなメリットを享受できる」ように設計した結果だという。
“分かりづらい”という声があるものの、ドコモユーザーの中には割引条件を全て満たし、割引を最大限に受けているユーザーもいると前田氏は語る。「現行の料金プラン『eximo』をご利用のお客さまのうち、実際に何らかの割引を受けていらっしゃる方は約半数いらっしゃる」(前田氏)
ドコモ MAXとeximoの比較表。eximoよりも受けられる割引が多くなっていることが分かる。メリットとなる一方で、条件が多くなってしまい、これが「分かりづらい」というネガティブな印象につながっているようだ前田氏は、「ドコモが多様な価値を提供しつつ、可能な限りリーズナブルな価格設定を追求している」ことに触れ、「サービス全体で価値を創出しようとする取り組みの表れであり、お客さまにとってもメリットのある形だ」との考えを述べる。
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