このように、Xperia ファン感謝イベントはとにかく体験重視のイベントで、一般の人にとってはメディアの人間以上に貴重な機会なのではないだろうか。カタログやスペックだけでは分からないことを実感できるため、筆者としてもこのようなイベントは重要だと感じた。
ソニー モバイルマーケティング部門 マーケティングコミュニケーション部 統括部長の湯原真司氏は、Xperia ファン感謝イベントは「いまソニーが注力している取り組みの1つだ」と打ち明けた。加えて、本文の冒頭でも触れた通り、日本でのXperia発売15周年を記念したものでもあり、今後の開催はないのか? とも感じてしまったが、ソニーはこうした機会を可能な限り作りたいそうだ。
ソニーが今回、ファンイベントを開催する理由の1つにマーケティング手法が挙げられる。商品を売っていくためのシェアマーケティング(市場シェアの拡大)から、今後は「カスタマーマーケティングを重視していく方向性だ」(湯原氏)という。
カスタマーマーケティングとは既存の顧客に向けたアプローチを重視する手法で、「2024年までソニーマーケティングの会長を務めた粂川滋氏によって、カスタマーマーマーケティングの考え方がソニーの社内でも浸透している」と湯原氏は語る。
湯原氏は、マーケティング手法をシフトする中で、「新規顧客を獲得することを全く無視するわけにはいかない」としつつも、「既存の顧客にいかにXperiaを気に入ってもらい、再購入(リピート)していただくかを重視している」とも話す。
「現在、Xperiaを購入しているお客さまの半分以上が既存顧客というサイクルになっており、既存の顧客をいかにしてつなぎとめるか、何度も継続して購入してもらうことがテーマになっている」(湯原氏)
それゆえ、日本での発売から15年も続いているXperiaブランドや商品性をファンに向けて丁寧に説明し、さらにはソニーで商品企画に携わるチームとファンの関係性を深めていく「ファン エンゲージメント」にも直結しているようだ。「まずはファンの方々に上質な体験や情報を適切なタイミングで届けていくことを強く意識している」と湯原氏は続ける。
特に意識しているのは、こうしたイベントを通じて、「ファンの声を聞く」ことだという。実は今回のXperia ファン感謝イベントも「ファンの声を聞くのが最大の目的だ」と湯原氏。ファンの声をただ聞くだけではなく、「次の商品やサービスに反映し、さらにイベントなどでファンからのフィードバックを得る」と、サイクル化していく考えも示す。
イベントの開催を機にファンが増え、SNSなどで口コミが広がれば、「確かにいいね。自分も使ってみよう、買ってみよう」という動機にもなり、「その共感が広がれば、Xperiaファンの方々の喜びにつながる」(湯原氏)という。このいわゆるサイクル化は、「われわれが1年ほど前から強く意識している」ことでもあるそうだ。
湯原氏は「私たちがファンとのエンゲージメントを深め、かつXperiaファンの方々の経験を他のユーザーに広げていく場を提供する。このファンエンゲージメントプラットフォームを構築していくことが現在の私たちの意識であり、その代表的なものが今日のイベントだ」と開催の狙いを話す。
ファンとの交流を「丁寧」に行っている点も、ファンとのつながりを意識してのことだろう。湯原氏は会話のきっかけになったネームプレートを例にこう語る。「今回は事前に実施したアンケートをもとに、お客さまのハンドルネームとこれまでご使用の機種名をプリントしたネームプレートを準備した」(湯原氏)
「ちなみに、われわれソニー側の人間もそれぞれが担当している業務や思い入れのある機種名を記載したネームプレートを持参した。これだけで会話が進むし、実際に私は3人の方と会話し盛り上がった。このような(お客さまとの会話の)きっかけを多く用意した」(湯原氏)
湯原氏は「今回のイベントには約70人のお客さまが来場しているが、その半数を超える40人以上の開発者が参加し、お客様全員と直接対話できる場を作れるのは、日本のメーカーにとって大きな強みだ」と胸を張り、「自信を持ってXperiaを拡げていくアクティビティーにもなる」と続ける。
【訂正:2025年5月19日23時05分 初出時、湯原氏の発言で「その半数以上と直接対話できる関係を築けているのは」としていましたが、意図が異なっていましたので「その半数を超える40人以上の開発者が参加し」に修正しています。】
同様のイベントは日本国内のみならず、海外でも展開しており、「台湾では2日前にも同様の発表イベントを開催した」そうだ。「台湾での発表イベントではファンの方々にお集まりいただき、製品体験の機会を提供したところ、非常に好評だった。その際には、日本のエンジニアと企画担当のマネジメントレベルの2人が直接お客さまの接客を行った。こうした活動を日本国内だけでなく、海外でも積極的に実施していこうと考えている」(湯原氏)
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