iPhoneでマイナンバーカード機能が6月24日から利用可能に――スマホ新法が足を引っ張らないか不安大石川温のスマホ業界新聞

» 2025年06月15日 10時00分 公開
[石川温]
「石川温のスマホ業界新聞」

 今週、NERAが主催する「スマホ新法ガイドライン案の多角的検討:イノベーション・市場競争・消費者利益の視点から」という勉強会を取材してきた。

 弁護士や教授などが登壇していたが、いずれも「スマホ新法」に懐疑的な立場であったのが興味深かった。

この記事について

この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2025年6月7日に配信されたものです。メールマガジン購読(税込み月額550円)の申し込みはこちらから。


 iPhoneに向けてAppStore以外のアプリストアを作ることを可能にし競争を促進するのがスマホの新法の狙いだ。しかし、すでに自由にアプリストアを作ることができるAndroidにおいては、グーグルのPlayストア以外が成功しているとはほど遠い状況だ。

 サムスン電子などメーカーがユーザーに向けて提供するアプリストアぐらいが成立してる状態で、Amazonは今年の夏に撤退が決まっている。Amazonという巨大で資金力のあるプラットフォーマーですら採算が合わずに撤退を余儀なくされるなか、これからアプリストアを運営したいという事業者が出てくるというのか。

 強引にアプリストアの導入をしたがるスマホ新法であるが、結局、蓋を開けてみれば仕組み自体が形骸化する恐れもあるだろう。

 そんななか、デジタル庁は6月24日からiPhoneで、マイナンバーカード機能が使えるようになると発表した。

 国民の多くがマイナンバーカード機能を普段から持ち歩くようになるわけで、マイナンバーカードの活用も一気に広がるだろう。

 保険証の対応に関しては7月から実証実験が始まる。運転免許証の対応も検討が進みそうだ。

 ただ、個人的に気になっているのが、スマホ新法が、iPhoneのマイナンバーカード機能搭載の足を引っ張るのではないかという点だ。

 12月にスマホ新法が始まると、「サイドローディングや機能開放が進むため、iPhoneから個人情報が抜かれる恐れがある」と警告をせざるを得なくなる。もちろん、サイドローディングによって配布されるアプリが、直接、セキュアエレメント内の情報を抜き出すなんて事はあり得ないだろう。ただ「サイドローディングでiPhoneのセキュリティレベルが下がる」となれば「マイナンバーカード搭載は辞めておこう」という雰囲気になりそうだと危惧している。

 ちなみにデジタル庁の大臣会見で、平将明大臣にこの懸念に関して質問したところ「個人的には自民党でサイバーセキュリティなどを担当しており、サイドローディングに関しては否定的な立場をとっている。しかし、いまはその担当を離れてしまっている」とのことであった。

 iPhoneのマイナンバーカード搭載に関しては、サイドローディングの問題もあってアップルが懸念を示したことで、開発が遅れたという話もあったりする。

 このあたり、デジタル庁と内閣官房での足並みがそろっていない感じがするだけに、どこまでiPhoneのマイナンバーカード搭載が普及するか、ちょっと心配だったりもするのだ。

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