ソフトバンクは2025年6月26日、成層圏通信プラットフォーム(HAPS)のプレ商用サービスを2026年に日本国内で開始すると発表した。これに向けて、浮力を利用して飛行するLTA(Lighter Than Air)型のHAPSを開発する米国Sceye(スカイ)に出資し、日本国内にてHAPSサービス展開の独占権を取得する契約を2025年6月20日に締結した。
HAPSは「空飛ぶ基地局」とも呼ばれ、高度約20kmの成層圏から広範囲に通信サービスを提供するシステムだ。従来の2次元通信ネットワークとは異なり、ドローンや無人航空機(UAV)の増加が見込まれる6Gの時代には、上空を含めた空間全体をカバーする「3次元」通信インフラが不可欠となる。ソフトバンクでは、このHAPSがこの3次元通信ネットワークの中核を担うと考えている。
これまでソフトバンクは、大型のHTA(Heavier Than Air)型HAPSの研究開発を進めてきたが、今回、新たにLTA型のHAPSを開発するSceyeとの連携により、HAPSの早期商用化を推進する。
SceyeはHAPS業界をリードする航空宇宙企業で、地上と宇宙をつなぐ新たなインフラ構築を目指している。SceyeのHAPSは、ヘリウムの浮力で上昇し、長時間滞空できるのが特長だ。これまでに20回以上の飛行に成功しており、米国州政府や民間企業との連携も進めている。SceyeはHAPSを通じて、通信インフラが届きにくい地域への通信環境拡充、気象災害のリアルタイム検知と即時対応、精密な環境モニタリングなどを可能にし、地球環境の保護にも貢献することを目指している。
ソフトバンクはSceyeのLTA型HAPSを活用し、2026年に日本国内でプレ商用サービスを開始する予定だ。これにより、大規模災害時の通信復旧や、山間部・離島など既存のモバイルネットワークが届きにくい地域へのサービス提供を想定している。
HAPSは衛星通信に比べて高速・大容量、低遅延であり、ニーズに応じたサービスエリアの柔軟な変更が可能だという。ソフトバンクでは、このような特長を生かして、通信インフラの回復力や耐久力を強化し、国民生活に不可欠なサービスの実現を目指す。あわせて、大型のHTA型HAPSの開発も継続し、商用サービスでの活用を目指していくとしている。
ソフトバンク 代表取締役 社長執行役員 兼 CEO 宮川潤一氏は、「ソフトバンクは、世界に先駆けて2017年からHAPSのサービス化に取り組んできました。今回のSceyeとのパートナーシップにより、LTA型のHAPSを使って2026年にプレ商用サービスを開始できることをうれしく思います。HAPSは、大規模災害時の迅速な通信復旧や、6G時代の空のモビリティに対応した3次元通信ネットワークの基幹インフラとして期待されます。HAPSの社会実装に向けて、今後も技術開発とサービス実証を進め、持続可能で信頼性の高い通信基盤の構築を通して社会課題の解決に貢献していきます」と述べている。
Sceye 創業者 兼 CEO ミッケル・ヴェスターガード・フランドセン氏は、「ソフトバンクは、非地上系ネットワーク分野で豊富な実績を持ち、長年にわたり成層圏を次なるフロンティアとして位置付けてきました。ソフトバンクによる出資は、Sceyeのプラットフォームの実現可能性を強く裏付けるものです。ソフトバンクを戦略的パートナーとして迎えられることを誇りに思うとともに、商用サービスの実現に向けてパートナーシップを加速していきます」とコメントしている。
ソフトバンクでは、2017年にHAPSの機体開発検討を開始し、2020年9月には初めて成層圏での飛行に成功。5G対応ペイロードの自社開発や、バッテリー、モーター、ソーラーモジュールの開発など、要素技術の研究開発にも取り組んでいる。2023年9月には、自社開発ペイロードを搭載した無人航空機による成層圏からの5G通信試験に世界で初めて成功した。
ソフトバンクはさらに、衛星通信やHAPSなどの非地上系ネットワーク(NTN)と地上のモバイルネットワークを融合させることで、いつでもどこでもつながる「ユビキタストランスフォーメーション(UTX)」を推進している。この構想の中核を担うのがSceyeとの取り組みだという。今後も革新的な通信技術の実装を通して、強靱(きょうじん)で持続可能な通信基盤を確立し、社会課題の解決と新たな価値創造に貢献していくとしている。
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