3月3日〜6日にスペイン・バルセロナで開催された世界最大級のモバイル展示会「MWC Barcelona 2025」。例年のようにNTTドコモも出展し、同社が注力する分野の最新技術を展示した。ブースの入り口あたりに展示されていたのは、世界中で導入に向けた動きが加速しているNTN(非地上系ネットワーク)。特に、2026年の商用化を目指すHAPS(成層圏プラットフォーム)が注目を集めていた。
XR事業を紹介するコーナーでは、眼鏡型スマートデバイス「MiRZA(ミルザ)」を体験でき、2025年に発売予定の新モデルのプロトタイプも展示されていた。それぞれの取り組みについて、キーパーソンに話を聞いた。
HAPSについては、NTTドコモ コーポレートエバンジェリストの中村武宏氏に話をうかがった。
―― 2月にケニアで行った実証実験が成功したことが発表されました。今後、実用化に向けて、どのような動きになるでしょうか?
中村氏 2026年の商用化に向けて、実際に打ち上げる場所などを検討していく段階に入ります。ケニアで実験を行ったのは、気象条件が比較的安定しているからで、AALTO(HAPSの機体を手掛けるエアバスの子会社)が選びました。実際には日本で使うわけですから、その実験だけでは十分とはいえず、さらなる検討や実験が必要だと考えています。
―― 2026年というと来年ですが、間に合うのでしょうか?
中村氏 それを心配しても仕方ないですから、とにかく2026年を目指して進めています。HAPSは太陽光発電を利用するので、当初は(発電の効率が良い)南の方からスタートさせることを考えています。その後、機体の性能改善も含めて、北の方でも使えるようにしていきたい。3月3日に「能登HAPSパートナープログラム」を発表しましたが、2028年には石川県で飛ばせるようにしたいです。
―― 周波数はBand 1(2.0GHz帯)を利用するのでしょうか?
中村氏 いろいろな検討をしています。Band 1はFDDですが、現在使っていないTDDを使えば、さらに性能を上げられるのではないかという検討もしています。TDDを使う場合も標準化されている周波数帯を使うので、端末には問題ありません。現行のスマートフォンで受信できます。
―― バッテリーはどれくらい持つのでしょうか?
中村氏 太陽光発電も利用しますが、永遠に飛び続けられるわけではなく、数カ月に一度は地上に下ろして充電する必要があります。その際、機体のメンテナンスが必要になることもあるでしょうし、それをどこで行うかも早急に決めなければならない課題です。
―― HAPSは比較的広いエリアをカバーして、直接スマホで受信できることが利点。となると、地上でのネットワークではつながらない遠隔地や災害対策などが主用途になるのでしょうか?
中村氏 当初は一般のお客さまというより、エンタープライズ系がメインになると想定しています。例えば、運輸関係、電力関係。へき地での保守監視に利用したいという話も聞きます。災害対策、安全保障、離島での利用なども注目されています。初期は数機からの開始になりますが、いろいろなユースケースを積み重ねて、機数を増やしてカバーするエリアを広げていきたいです。
―― 利用料金はどれくらいを想定されていますか?
中村氏 全く決まっていないので、何とも言えませんが、仕組みとしては、ユーザーがどちらにつながっているかを意識することなく、地上とHAPSが自動で切り替わるようにしたいと思っています。
―― HAPSは昨年のMWCでも出展されていましたが、海外の事業者などからの反響はいかがですか? Starlinkなど、LEO(低軌道衛星)への関心の方が高いようにも見受けますが……。
中村氏 ドコモはGEO(静止軌道衛星)にもLEOにも取り組んでいますが、LEOへの関心が高いですね。HAPSの重要性は国によって違うとは感じていますが、説明すると関心を持ってくださる方は多いです。やはり、スマートフォンに直接つながることは大きな利点ですし、まずは、実績を作ることが重要だと考えています。
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