一方で、混雑しているように見えても、思っていたほど効果が出ないことがあった。以下の写真は、21時に近い混雑した渋谷のスクランブル交差点付近で撮影したものだ。ここでは、au 5G Fast Lane適用端末が104.6Mbpsなのに対し、非適用端末が105.6Mbpsと、結果が逆転している。逆転といっても、その差は1Mbpsで誤差のようなもの。速度差はなかったと捉えることができる。
原因は不明だが、人が多いだけで、あまり通信していなかった可能性は考えられる。この時間帯のスクランブル交差点は、まさにカオス。信号が青になった瞬間ダッシュして交差点中央で撮影を始める観光客も多く、“歩きスマホ”をしていると、衝突してしまいかねない。ほとんどの人は、いったんスマホを使うのをやめ、横断歩道を渡っている。あくまで推測だが、比較的リソースが空いていた可能性はありそうだ。
また、同じ渋谷でも、筆者の事務所がある東急本店跡地付近は人がまばらになることも多い。ここでスピードテストを行ったところ、案の定、大きな差は出なかった。au 5G Fast Lane適用端末が49.1Mbpsだったのに対し、非適用端末は53.4Mbpsと、ここでも結果が逆転しているが、誤差の範囲といったところ。“混雑時”に相対的な速度が上がるというKDDIの説明が裏付けられた格好だ。
夜の渋谷で測定した結果はやや不可解だが、ある程度混雑していそうな場所では、速度差がしっかり出た。とはいえ、それぞれの結果を見れば分かるように、非適用端末が突出して遅くなるというわけでもない。au 5G Fast Laneを導入したからといって、安い料金プランを契約するユーザーがないがしろになっているわけではないといえそうだ。逆に、このぐらいの差であれば、実利用では適用されていることに気付かない可能性もある。
ただ、これだと、データ無制限プランにつく特典の1つとしてのアピールが弱くなってしまう印象も受けた。実利をどう伝えていくのかは、今後の課題といえる。auバリューリンクプランを発表した際に、KDDIの代表取締役社長CEOを務める松田浩路氏は、「将来的には5G SAにネットワークスライシングが入り、お客さまに応じた通信のプレミアムな部分をご体験いただき、対価をいただく形に持っていきたい」と語っていた。
au 5G Fast Laneは、その「試金石として入れている」(同)サービスになる。ネットワークスライシングであれば、クラウドゲームに最適化した通信環境や、混み合っている場所でも、最低限決済サービスだけは通すような通信環境を作ることが可能。au 5G Fast Laneを、よりきめ細かにした対応が実現できる。Opensignalの調査でトップに立ったKDDIだが、その優位性を生かし、ユーザーにとって分かりやすい体験に昇華させていくのが次のステップで必要になるかもしれない。
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