シャープ「AQUOS R10」はなぜ“生々しい”のか 開発陣に聞く「撮る・見る・聞く」の進化(1/4 ページ)

» 2025年07月16日 10時00分 公開
[金子麟太郎ITmedia]
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 シャープは2025年夏、「AQUOS R10」と「AQUOS wish5」の2機種を投入している。

 AQUOS R10は、2024年のフルモデルチェンジを果たしたハイエンドモデル「AQUOS R9」の後継機で、「生で見るより生々しい」というコンセプトのもと、ディスプレイ、カメラ、スピーカーを強化している。価格は10万円前後。

AQUOSR10 左がフラグシップモデルの「AQUOS R10」、右がエントリーモデルの「AQUOS wish5」

 今回はAQUOS R10について、シャープで商品企画やソフトウェア開発、機構設計に関わった以下の方々にインタビューした。なお、エントリーモデルのAQUOS wish5についても、別途インタビュー記事をお届けする。

  • 通信事業本部 パーソナル通信事業部 商品企画部 係長 原泰祐氏
  • 通信事業本部 パーソナル通信事業部 商品企画部 主任 鎌田隆之氏
  • 通信事業本部 パーソナル通信事業部 システム開発部 技師 関文隆氏
  • 通信事業本部 パーソナル通信事業部 第一ソフト開発部 技師 文元英治氏
  • 通信事業本部 パーソナル通信事業部 回路開発部 技師 三島啓太氏
AQUOSR10 左から順に、三島啓太氏、関文隆氏、文元英治氏、原泰祐氏、鎌田隆之氏

AQUOS R10の開発意図 エンタメ重視で進化を心掛けた

―― 好調だったというAQUOS R9を受けて、AQUOS R10はどのような意図で開発したのでしょうか。

鎌田氏 2024年のAQUOS R9とAQUOS wish4はデザインを象徴的に刷新しました。ブランドとしてはAQUOSの提供価値として「最高最新の映像体験をあらゆるシーンでお楽しみいただくスマートフォン」と定義して、多くの方々にお届けしようと考えました。

 その結果、広告も含めて賞をいただき手応えを感じていました。AQUOS R10の商品企画を検討する際に、なぜそこまでデザインも含めて評価いただけたのかを調べました。どのようなワードをネットで検索されるのかに着目したところ、映画や音楽、漫画を含めてエンタメ情報を収集されていることが分かりました。そのような背景を踏まえて、エンタメ体験を重視した進化を心掛けてきました。

 また、もう1つの観点として、R9とR10の間には、シャープが2024年10月29日に発表したAQUOS R9 proがあります。そのモデルで培ったカメラの技術や新機能をどのようにRシリーズにも展開していくか、というところも意識しています。

―― プロセッサをAQUOS R9と同じSnapdragon 7+ Gen 3を搭載した理由を教えてください。

鎌田氏 プロセッサの選定は皆さんが興味を持たれているところかと思います。選定は毎回悩むところではあります。最も大きな理由の1つは、Snapdragon 7+ Gen 3という7の中でも高い性能持ったプロセッサの後継が具体的に出なかったことです。

 加えて、シャープが2024年11月7日に発売した「AQUOS sense9」のSnapdragon 7s Gen 2と比べてもCPUで約2倍、GPUで約4倍と高い性能を持っていることも踏まえて、もう1度やりたいことはできそうだと思い、R10でも引き続きSnapdragon 7+ Gen 3を採用しました。

AQUOSR10 プロセッサの選定について説明する鎌田氏

―― ちなみに、MediaTekは検討しなかったのでしょうか。

鎌田氏 先ほどもプロセッサの選定は難しいと話しましたが、正直開発のだいぶ前から検討の俎上(そじょう)には乗っています。つまり、われわれとしてもMediaTekのプロセッサについては、常に注目して検討しています。しかしながら、今回のAQUOS R10でMediaTekのプロセッサを選ばなかったのは、AQUOS R9でご好評いただいた「エンタメを楽しむ」というテーマをいかに進化させるか、そしてAQUOS R9 proもQualcommのプロセッサで開発していたという点が大きく関係しています。

 ただ、MediaTekのプロセッサを検討していないわけではありません。引き続き検討は行っています。

基本的なデザインはAQUOS R9を踏襲しながらブラッシュアップ

―― AQUOS R9からサイズやデザインがほぼ変わっていないが、あえて変えなかった理由はありますか。

鎌田氏 AQUOS R9のデザインは、おかげさまで多くの方からご好評をいただきました。特に、アニメのキャラクターに似ているというようなバズり方をしたことには驚きましたし、市場での反響も非常に大きかったです。

 デザイン面では、グッドデザイン賞のベスト100に選出され、ドイツのデザイン賞であるiFデザインアワードも受賞しました。これは、スマートフォンの枠を超え、デザイン全体として高い評価をいただけた証だと考えています。

 AQUOS R10では、AQUOS R9で確立したデザインを継承しつつ、さらにブラッシュアップすることで、ブランドの刷新を図るとともに定着を狙って、お客さまにご満足いただける製品をお届けできると判断しました。

AQUOSR10 AQUOS R9(左)とAQUOS R10(右)。R10は、R9で確立したデザインを継承しつつ、さらにブラッシュアップしている

 実は、R10のデザインにはいくつか手を加えています。例えば、新たに搭載したスペクトルセンサー部分にはダイヤカットの処理を施し、本体との一体感を高めています。また、本体カラーも今回は3色展開とし、お客さまの選択肢を増やしています。

AQUOSR10 R10(右)では、LEICAのロゴの位置が変わった代わりに、スペクトルセンサーが追加された
AQUOSR10 スペクトルセンサー部分には、ダイヤカットによる処理が施されている

―― カラーバリエーションを2色から3色に増やした理由を教えてください。

鎌田氏 AQUOS R10で増やしたカラーバリエーションには、より多くのお客さまにお届けしたいという思いが込められています。AQUOS R9のグリーンは非常に好評をいただきましたが、お客さまから「黒が欲しい」という声が多かったのです。スマートフォン全体でブラックの需要が高いこともあり、今回はホワイトとブラックをしっかりとご用意しました。

AQUOSR10 カラーバリエーションは、カシミヤホワイト、チャコールブラック、トレンチベージュの3色を用意している

 R9のグリーンも深みのある独特な色で「癖になる」というお声を多くいただきましたが、今回、特徴的なカラーとしてトレンチベージュを採用しました。この色は、スマートフォンではあまり見られないような色味だと思います。

 スペクトルセンサー部のデザインは、完全な円でも四角でもない曲線にしており、大きさを変えると見え方が大きく変わるというこだわりがあります。miyake designの協力を得て、その大きさやバランス感、配置については細かく監修していただきました。少し大きさを変えるだけでもデザインが成り立たなくなるほど、緻密に設計されています。

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