―― 新メインセンサーを採用した狙いと、具体的にどのような性能向上があったのか教えてください。
文元氏 AQUOS R10ではメインカメラのイメージセンサーが新しくなりました。新しいセンサーは、特にノイズを抑える機能に優れています。この機能を活用することで、暗い場所でのノイズを大幅に減らすことができました。これが新しいセンサーを採用した大きな狙いです。
鎌田氏 AQUOS R10ではメインカメラのイメージセンサーのサイズは1/1.55型です。カメラに関しては、AQUOS R6からライカとの協業が始まり、2025年で5年目になります。ライカの一貫したポリシーのもと、シャープは共に技術を磨いてきました。今回のR10のカメラは、見た目こそ前モデルとほぼ同じに見えるかもしれませんが、大きく進化しています。そのポイントは、新しいイメージセンサーの採用と、AQUOS R9で培った画像処理技術の融合です。
最も顕著な進化は、暗い場所での撮影性能です。単に明るく写すのではなく、光と影のメリハリをしっかり残すことに注力しました。これは、ライカが追求する「目で見た風景をそのまま切り取るリアリティー」を実現するためです。高感度に強いセンサーに変更したことに加え、AQUOS R9 proのスペクトルセンサーを踏襲しています。(無印の)Rシリーズとしては初めてスペクトルセンサーを搭載し、より正確な色再現が可能になりました。
一般的に暗所撮影では、テクスチャー感が失われる印象があるかもしれません。しかし、R10で撮影した画像では、木の質感や影になった部分、葉の細かな表現など、解像感がR9よりも格段に向上しています。これらの技術は、特に暗所や夜景といったシーンで効果を発揮します。新しいセンサーが夜景に強い特性を持ち、それにこれらの画像処理技術が組み合わさることで、高いクオリティーの撮影が可能になっています。見た目だけで判断せずに実機で試していただきたいです。
―― スペクトルセンサーの採用によりどのようなメリットが得られるのか、もう少し詳しく教えてください。
文元氏 スペクトルセンサーの主なメリットは、ホワイトバランスの精度向上と、色の再現性がよくなることに貢献している点です。AQUOS R10では、このスペクトルセンサーによって、ホワイトバランスの精度がAQUOS R9に比べてかなり向上していると思います。特に屋外での撮影など、全般的にホワイトバランスの改善を実感していただけるはずです。
鎌田氏 スペクトルセンサーの効果を特に実感していただけるのは、色温度がはっきりと特徴的に出るシチュエーション、中でも屋内の撮影が一番でしょう。AQUOS R9 proでも少しお話しましたが、例えばカフェやレストランのような、少し落ち着いた照明環境のお店で撮影していただくのがおすすめです。そういった場所で、目で見た色に近い写真が撮れるのが、このスペクトルセンサーの大きな強みです。
―― HDR処理やノイズリダクションのアルゴリズムは見直したのでしょうか。
文元氏 今回、AQUOS R10では、HDR処理や画像処理のアルゴリズムを刷新しました。 これは、AQUOS R9 proで採用されたものをベースにしており、AQUOS R9に比べて格段に精度が向上しています。特に、ディテールの表現力が大きく向上しました。この新しいアルゴリズムは全ての撮影シーンで適用されるよう工夫しており、どのような場面でも細部までしっかりと描写されるようになっています。
―― AIによる自動補正の精度は向上したのでしょうか。
文元氏 今回の新しいアルゴリズムには、AIを積極的に活用しています。AIの力を借りることで、より効率的に、そして効果的に画質を向上させています。
―― 他にもAIを活用した機能があれば教えてください。
鎌田氏 AQUOS R9では、AIを活用して料理の影を自動で消す機能がありましたが、AQUOS R10ではテキスト認識されるものであれば、その影も消せるようになりました。 例えば、免許証や新聞、記事の切り抜きなどの写真で、影が入ってしまっても除去できます。最近はやりの「推し活」で、雑誌やグッズなどを撮影する際に影が入ってしまうといった場面でも、この機能が役立ちます。
原氏 シャープは「半歩先を行くモバイル体験の実現」を目指し、AIの効率性と創造性を生かして、既存のモバイル体験の向上に取り組んでいます。
これは通話関連だけでなく、カメラの影除去や画質向上など、さまざまな機能にAIを適用しています。通話機能に限らず、多様な分野にAIを適用していくのが、私たちの基本的なスタンスです。
―― ユーザーから要望のあったAI機能はありますか?
原氏 AI機能に関して、インタビューの場などでよくご意見としていただくのが、録音や文字起こしといった議事録作成のような機能です。確かに、インタビューされる方々、特にジャーナリストのような職業の方は、そういった機能を強く希望されることが多いです。しかし、一般のユーザーの方々にとっては、その用途がそこまで高くないのではないかという考えもあります。
そのため、まずは通話のような普遍的な体験や、カメラ機能といった、より広くニーズのある機能、より多くのユーザーにご利用いただける分野へのAI適用を優先して進めています。議事録やメモ作成系の機能については、既にサードパーティーのサービスがクラウドを活用して大規模に展開されています。
ただ、さまざまなご要望をいただいており、それらをシャープで精査した上で、現状の形でAI機能を展開しているのが実情です。
鎌田氏 シャープがAIについて特に重視しているのは、「ユーザーが意識することなく、自然に役に立つAI」というアプローチです。例えば通話中に先回りして情報を提示する、あるいは「代わりにやっておいてくれる」といった形で、AIが自動的にバックグラウンドで機能することが理想です。
SIMフリーモデル限定の機能として、「Glance AI for AQUOS」というAI機能があります。これは、ユーザー自身がインカメラを使ってセルフィー撮影を行うと、AIがその写真に基づいてファッションを提案してくれるサービスです。
提案された服に似たアイテムをECサイトで購入できるのも特徴です。もちろん、この機能はオン・オフの切り替えが可能ですし、もし気に入っていただければ、ロック画面がちょっとした楽しみになるかと思います。
R10には、SIMフリーモデル限定ではあるものの、「Glance AI for AQUOS」という機能がある。ユーザー自身がインカメラを使ってセルフィー撮影を行うと、AIがその写真に基づいてファッションを提案してくれる―― これらのAI機能はクラウドとオンデバイスのどちらでしょうか。
原氏 今回ご説明した機能は、Glance AIを除き、全てオンデバイスで処理されています。シャープはAQUOS R9から生成AIをオンデバイスで扱うことに注力しており、Qualcomm様との協業を通じてノウハウを蓄積してきました。今回のモデルで特に大きかったのは、生成AIのモデルを載せ替えたことです。ここにもAQUOS R9から脈々と受け継いできたAI技術がさ生かれています。
【更新:2025年7月22日9時30分 AIの処理について、Glance AIを除き、オンデバイスで処理をしている旨を追記しました。】
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