―― FCNTとしてフォーカスしているのは、日本市場だけでしょうか。海外進出もありえるのでしょうか。
桑山氏 海外をやらないと決めているわけではありませんが、まずは日本のメーカーとして、日本のお客さまに提供したいという思いがベースにあります。だからと言って、海外をやらないと思っているわけではありませんが、グループにはモトローラがあり、海外でバリバリ売っているブランドです。FCNTがそこでやっていく必要があるのか。これは、グループ全体の事業として捉えたときに判断が必要になるポイントです。
もう1つは、やはり日本のお客さまのために作っている商品なので、海外にニーズがあるかどうかもポイントになります。海外のお客さまにもニーズがあるようなぜひ挑戦はしたいのですが、その点は明確にした上で検討していきます。この部分は、本当にこれからですね。
―― 再出発後に、シェアの目標などはありますか。
桑山氏 まだシェアうんぬんを言える立場にはありません。FCNTとして地道にできるところから頑張っていき、結果として後からシェアはついてくると思っています。
―― とはいえ、各種市場調査を見ると、出荷台数は上向きです。これはarrows We2がよかったのでしょうか。
桑山氏 そうです。シェアでは貢献しています。ただ、あまりシェアを追いかけすぎると、FCNTが何をすべきかというところからズレてしまいます。昨年(2024年)arrows We2、We2 Plusを出し、今年(2025年)はarrows Alphaをやらせていただき、少しずつポートフォリオを拡充しています。商品ごとに価値が少しずつ違っていますが、そういった選択肢を日本のユーザーにお届けできたらいいなと思っています。それが、今、目指していることです。
―― 旧FCNTが破綻した際には、台数が出ていたarrows Weの開発コストが高騰したことが原因の1つでした。価格的には大きく変わっていませんが、今はスケールメリットを生かせるので大丈夫ということでしょうか。
桑山氏 当時のことは分かりませんが、arrows We2に関しては利益体質になっていて、少しばかりの利益は出せています。それなりの数が出せているのは、新生FCNTの1つの大きな成果だったといえるかもしれません。
―― 逆に、arrows Alphaよりさらに上を攻めていくということもお考えでしょうか。
桑山氏 (考えが)ないわけではありません。私自身、折りたたみをやりたいということは、最初のころからずっと言っています。今でもやめたわけではありませんが、もっと上のハイエンドや折りたたみもただやればいいのではなく、FCNTとして、arrowsとして必要なのかは考えていかなければなりません。お客さまがお求めになるのか、お求めならどういうハイエンドやどういう折りたたみならFCNTとしてやる意義があるのか。こういうところを明確にしていかなければ、やる意味がありません。
arrows Alphaを出すことができたので、その次をどうするかは、まさに今プランニングをしているところです。その過程の中で、これはハイエンドにした方がいい、そうじゃなくて折りたたみにすべきだという結論が出てきます。ただし、ベースになるのはFCNTらしさ、arrowsらしさです。日本のお客さまが求めているものをベースに置き、商品計画をしていきたいと考えています。
―― 今年はarrows Alphaでしたが、arrows Weが出ていません。発売のサイクルは、どのようになっているのでしょうか。
桑山氏 (arrows We2は)1年で終わりではないと考えています。フレッシュさが求められる商品については、できるだけ1年サイクルにしていきますが、フレッシュさより長期的にご提供した方がマーケットとしてもいいというものは長く続けていきます。そういう意味では、使い分けになっていくと思います。
コストの高騰が経営を圧迫し、破綻に追い込まれてしまったFCNTだが、レノボグループの下で確実に再建が進んでいることがうかがえた。ミッドレンジやエントリーモデルはスケールメリットを生かせて安定するのはもちろん、より上位の端末開発に挑戦しやすくなったのもグローバルメーカーの後ろ盾があってこそといえる。
インタビュー中のやりとりにもあったように、レノボグループはこれまでも、PCで複数のブランドを使い分けてきた。バックグラウンドとしてスケールメリットを生かしながら、傘下に収めたメーカーの開発陣も尊重する姿勢が、こうした成功につながっているように見える。FCNTの経営再建でも、その文化や考え方は生かされているようだ。
モノ作りの観点では、モトローラのよさを取り入れつつ、FCNTの独自性をしっかり出せている。arrows Alphaのような新しいコンセプトの端末も投入でき、旧FCNTを超えたメーカーに成長する可能性も予感させた。よりとがったハイエンドモデルや、グループの資産をフル活用したフォルダブルスマホの登場にも期待したい。
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