FCNTがハイエンド「arrows Alpha」で描く成長戦略 桑山社長が語る“日本メーカー”のモノ作り(1/3 ページ)

» 2025年07月17日 06時00分 公開
[石野純也ITmedia]

 レノボの傘下に入り、新生FCNTとして再始動してから間もなく丸2年になる。2024年には、新体制の元で「arrows We2」「arrows We2 Plus」を発売。6月には、同社にとって久々のハイエンドモデルをうたう「arrows Alpha」を発表し、端末のバリエーションも広げている。こうしたメインストリームの製品に加え、「らくらくスマートフォン」や「らくらくスマートフォンa/Lite」も発売。さらには、フィーチャーフォンの「らくらくホン」の復活も発表した。

 新生FCNTの端末は、同じレノボ傘下であるモトローラとのシナジー効果を生かし、コストパフォーマンスが高く仕上げられているのが特徴。一方で、使い勝手などの“FCNTらしさ”は損なわれていない。実際、スペックが近いarrows Alphaとモトローラの「motorola edge 60 pro」も、外観はもちろん、中身の作り込みまで大きく異なっており、双方が持ち味を発揮している印象だ。

 そんなFCNTを率いるのが、4月に社長に就任した桑山泰明氏だ。同氏はレノボからFCNTに派遣されてきた経営陣の1人だったが、実は富士通や富士通クライアントコンピューティング出身。グローバルと国内の両方に精通しているという点では、FCNT再建にうってつけの人材といえる。arrows Alphaの投入を決め、軌道に乗り始めている中、次の一手をどう打っていくのか。同社の成長戦略を桑山氏に聞いた。

桑山泰明 2025年4月にFCNTの社長に就任した桑山泰明氏

ハイエンドでも、日本ユーザーが使いやすい商品作りを大切にしている

―― 4月から社長を務められていますが、ここまでの簡単な経緯と抱負をお聞かせください。

桑山氏 副社長としてレノボから派遣される形でFCNTに来ました。そのときから、FCNTを改めて立ち上げていくにあたってやらなければいけないことを、副社長の立場としてやってきました。そこから約1年半がたち、arrowsを2機種、らくらくスマートフォンを2機種と、計4機種をなんとか発売することができました。4機種はいろいろな方に手に取っていただけて、ご好評もいただいています。振り返ってみても、まずはよい第一歩が踏み出せたと思います。

 ただ、まだまだ立て直しの第一歩目にすぎません。引き続き、FCNTらしいやり方で頑張っていき、より多くの方に認めていただける存在になっていきたい。これが抱負で、社長になって気が引き締まる思いです。副社長から社長になっただけで、変わらないといえば変わりませんが、責任は伴います。これまで取り組んできたことの方針や戦略は1年半前に新生FCNTとして再始動したときから策定していたので、それを継続しています。そういった意味では、何も変えずに、引き続きこれまでの流れをやっていくことになります。

―― 方針は継続しながら、ラインアップやビジネスは拡大させていくということでしょうか。

桑山氏 今回、arrows Alphaをやらせていただいた1つに、少しポートフォリオを広げたいということがありました。ハイエンドにもチャレンジしたいという思いがあり、arrows Alphaを発表しています。ただ、単に広げればいいのではなく、FCNTとして、FCNTらしい商品は追求していきます。日本のメーカーとして、日本のお客さまのために、日本のお客さまが使いやすい商品作りは大切にしています。

 ポートフォリオの計画は、その方針の下で練っていきたい。どんどん広げていくというより、まず今回はハイエンドにチャレンジして、その次にもっと広げるのか、いったん拡充していたポートフォリオを深めていくか、具体的なことはこれから決めていきます。

arrows Alpha 8月の発売を予定している(FCNTの中での)ハイエンドスマートフォン「arrows Alpha」

arrowsとして守らなければいけないところは守る

―― レノボ傘下になり、モトローラとの共通化なども進んでいると思います。一方で、完成した製品を見ると、しっかりFCNTの端末として区別されているようにも見えます。モトローラの端末をFCNTが出しているというような状態にはなっていませんが、こうしたもの作りはどうやって実現しているのでしょうか。

桑山氏 らくらくシリーズはちょっと置いておくとしても、arrowsをFCNTらしい商品に仕立て上げると、必然的にモトローラブランドの商品とは違うものになります。長年、FCNTが培ってきた技術もそうですし、商品性を追求してきた結果で、その先に今があります。arrowsとして目指すべき商品が、結果としてモトローラの商品とは違ったものになっているということで、FCNTがレノボグループに加わった価値もそこにあります。

 その中で、どうシナジーを活用し、より効率的に回していくかということに取り組んできました。そこに気づいていただけるのは、すごくうれしいですね。もちろん、それは簡単なことではありません。シナジーを追求する際に油断するとどんどん似てきてしまう。arrowsとして守らなければいけないところは守り、今まで通りの機能としてご提供し続けることで、結果的にシナジーを刈り取りつつ、特徴的な商品をお出しできると確信しています。

―― arrows Alphaを見ると、グローバルのいいところと、日本のいいところのバランスがうまく取れている印象です。

桑山氏 そこにはかなりこだわってきました。日本メーカーであることが、大きなポイントだからです。日本のスマホユーザーが求めている“かゆいところ”はどういところか。たくさんあると思いますが、その中でも代表的な部分はarrows Alphaで解決できるんじゃないかと挑戦しました。ハイエンドはかなり難しいですが、価格面でもだいぶ頑張っていて、スペックや機能についてもarrowsらしく仕立て上げられたと思います。

arrows Alpha arrows Alphaの特徴。高いスペックを確保しながら、arrowsらしい堅牢性も健在だ

―― コスト的にも、シナジーがなければここまで落とせなかったのではないでしょうか。

桑山氏 コストもそうですが、グローバルのリソースを活用できるのも大きいですね。調達だけに限らず、グローバルチームがかなりFCNTの商品やビジネスに入り込んでくれています。FCNTの商品や提供価値はグローバルメンバーも“自分事”として理解し、動いてくれている。だからこそ、リソースが使える面があり、スケールメリットが発揮できています。

―― FCNTもそうですが、PCもNECパーソナルコンピュータと富士通クライアントコンピューティングがある中で、しっかり差別化しています。レノボグループは、傘下に収めた会社の特徴を引き出すのがうまいと思います。

桑山氏 そういう文化というか、マインドがありますね。FCNTがグループに加わりましたが、モバイル事業としては(国内で)初の買収案件でしたし、(PCとは)ビジネスグループが違うので事業部門の中でも初めて経験するメンバーが多かったので、ある意味一から作り上げていきました。一方で、当然ながらFCNTもレノボグループになったのは初めてのことだったので、お互い手探りの中で始めていきました。両側のメンバーがかなり頑張り、主張するところは主張し、認めるところは認め合いながら今のワンチームになっています。

―― 1つになったときは、大変だったのではないでしょうか。

桑山氏 それは簡単ではありませんでした。グローバル側にもFCNT側にもそれぞれ戸惑いや、やりにくさはあったと思います。そこを乗り越えられたのは、本当にお互いの頑張りのおかげで、オープンマインドでまずお互いを知ろうというところから始まりました。FCNT側のメンバーは英語が得意な人間もそんなに多くないので、コミュニケーションを取るのもストレスだったと思いますが、地道に頑張ってくれました。一方で、グローバル側も歩み寄ってサポートをしてくれた。簡単ではありませんでしたが、気付けばもうそろそろ2年になります。

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