「AQUOS wish5」は、シャープがグローバル市場を意識したエントリースマートフォンだ。約6.6型HD+(720×1612ピクセル)の液晶ディスプレイや、振動で発動する防犯アラート機能など、幅広い世代に向けたモデルに仕上げた。価格は3万円台前半を実現している。
AQUOS wish5の大画面ディスプレイが動画視聴を快適にするのは間違いない。一方、初期のwishシリーズ(1〜3)に比べると小型ではなくなったのも事実だ。これは、特に子ども向けの防犯機能などを考慮すると、小型モデルの方が適しているのではないかという疑問を生じさせる。この点を含め、AQUOS wish5の企画開発に関わった下記2人に話を伺った。
【訂正:7月24日12時15分】初出時、上画像のキャプションの位置に誤りがありました。お詫びして訂正いたします。
【訂正:7月24日12時15分】初出時、岩井亜理沙氏の漢字表記に誤りがありました。お詫びして訂正いたします。
―― 6月26日に発売されたばかりですが、反響や売れ行きを教えてください(※取材は7月上旬に実施)。
今井氏 発売直後ということもあり、数値的な結果はこれからだと考えています。SNSやWeb上での反響を確認する限りは、おおむね良好な評価をいただいており、売れ行きも期待できます。順調な滑り出しを切ることができたと思います。
―― 先代のAQUOS wish4から方向転換している印象を受けましたが、やはり海外展開が大きく影響していますか。
今井氏 海外では大画面が好まれる傾向にあるのは事実です。そのため、全く影響がないとはいえず、多少の影響はあります。一方で、AQUOS wish4からディスプレイを大型化し、これがお客さまに非常に好意的に受け止められたという実績があります。そこでAQUOS wish5でも、引き続き6.6型の大画面を維持すること決めました。
―― 動画のコンテンツがスマートフォンとともに普及していることも、ディスプレイの大型化の背景ですか。
今井氏 そうですね。メインのユースケースの1つとして動画視聴が確実に挙げられます。大画面の方が映像をより見やすいという利点は少なからず影響しています。そのため、今回のAQUOS wish5のターゲットであるファーストスマホユーザー、具体的には小中学生のお子様やご年配の方々、そして法人のお客さまにも、大画面のメリットを感じていただけるのではないかと考えています。
―― 一方で、小型ディスプレイを求めるニーズがあります。初期モデルのような小型路線はやめたのでしょうか。
今井氏 判断が難しい点であることは推察いただけると思いますが、将来的に小型化するかと問われれば、現時点では「No」と回答します。しかし、市場の声を参考にし、小型モデルが適切であると判断した場合には、その検討を進めます。引き続き、市場の動向を注視します。
―― 防犯機能はどのような狙いで搭載したのでしょうか。
今井氏 まず、お子様に初めてスマートフォンを持たせる親御さんに安心感を提供することが狙いです。お子様が万が一の事態に遭遇した際にも、この機能があれば居場所を知らせることができるため、親御さんはより安心してデバイスを持たせることができます。
次に、地震などの災害時に活用できる点も重要な狙いです。あってはならないことですが、もし災害に巻き込まれてしまった場合でも、スマートフォンを振るだけでアラートが作動するというシンプルな操作で、自分の居場所を大切な人に伝えることが可能です。このシンプルなトリガーによって、お子様だけでなく、幅広い世代のお客さまに緊急時の連絡手段として活用いただけることを目指して開発を進めました。
―― 誤操作はしませんか。
岩井氏 さまざまなユーザーさんが振って使う機能のため、開発の初期段階において誤動作の懸念点に着目しました。実際に社員の皆さんの協力を得て、持ち歩いて振動のパターンを解析しました。どのような場面において誤動作につながるのかを徹底的に洗い出すことから始めました。
具体的には、ジャンプ、走り回る、自転車に乗るといったさまざまなユースケースで実際にデータを取得し、検証を行いました。これらの検証を重ねることで、「誤動作がない」と判断できるまで緻密なチューニングを施しています。
アプリの設定項目も工夫しており、誤動作を気にする人のためにも、感度を低く設定できるようにしました。逆にしっかりと動作しなければいけない場面もありますので、このUIにより、お客さまご自身でアラートが作動する感度を調整したり、事前に機能を試したりできるようにしました。これにより、「どのようなときにアラートが作動するのか」を事前に把握いただけるため、ご自身の使い方に合わせて設定を調整し、安心して本機能をお使いいただけると思います。
―― 防水がIPX9に対応しましたが、80度の熱湯噴射を浴びるシーンはあまりないような気がします。どのような意図で対応したのでしょうか。
今井氏 wishシリーズは「つよかわ(タフなのにかわいらしさのある見た目)」というコンセプトで開発しています。このコンセプトのもと、特にタフネス性能においては、他社に引けを取らないという強い思いがありました。開発を進める中で、他社がIPX9等級(高温・高水圧への防水性能)を持つスマートフォンを投入している状況を認識しました。シャープとしても後れを取るわけにはいかないので、AQUOS wish5ではIPX9等級の取得を必須目標として開発を進めました。
一方で、他社がIPX9に対応させているのは、エントリーモデルよりも上位の、どちらかといえばハイエンド寄りの機種が中心です。そのため、エントリークラスでIPX9等級に対応しているモデルはまだ少ないのが現状です。wish5が他社の同等端末に対して明確なアドバンテージとなっていると認識しています。
IPX9等級の耐久性能は、80度の高温水流噴射にも耐えられるという非常に高い基準を満たしています。もちろん、日常生活で80度のお湯を直接スマートフォンにかけるような場面は珍しいでしょう。しかし、これは極めて過酷な環境下でも耐えうる堅牢性を持っていることを示すものです。
例えば、ご家族でプールに行った際に、お子様がプールサイドで写真を撮りたいとスマートフォンを渡されても、水没を心配する必要はありません。シャワーがかかる程度であれば全く問題ありません。このように、IPX9対応は、日常生活で起こりうるさまざまなシーンにおいて、他社の端末では少し心配になるような場面でも「これなら大丈夫」と確信できるような安心感につなげられたらなという風に思っています。
―― タッチ時に誤動作をしないように工夫された点はありますか。
今井氏 この機能はAQUOS wish5に限らず、シャープのスマートフォン全般に共通している特徴です。ソフトウェア制御により、画面に水滴がついた状態でもタッチパネルの操作が可能です。弊社の全ラインアップでこの機能に対応しており、水辺などでの使用時にも安心して操作いただけるよう配慮しています。
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