ソニーは9月12日、ミッドレンジモデル「Xperia 10 VII」を発表した。9月中旬以降に発売予定だ。カメラ、ディスプレイ、オーディオといった性能を向上させ、バッテリーの長寿命化やOSアップデートの保証期間を大幅に延長した実用性の高いモデルとなっている。
Xperia 10シリーズは、フラグシップモデルと同じタイミングでの投入が通例になっていたが、ソニーは「市場動向や社内開発状況を総合的に判断した」とし、2025年秋頃に投入する予定と5月頃に予告していた。
外観は先代の「Xperia 10 VI」から大幅に変更。後述するアウトカメラが横長の棒状の土台に収まる。従来モデルの縦に並んだ配置から、水平な横配置へとレイアウトを変更した。レンズ周辺の装飾的なパーツを減らし、全体的にすっきりとした見た目を実現している。
ボディーカラーは、ビジネスシーンにも馴染む「チャコールブラック」、真っ白い紙のような「ホワイト」、そして青や緑の系統色を持つ天然石のような「ターコイズ」の3色から選べる。
他社製品では高性能化に伴い本体重量が増加する傾向がある中、Xperia 10 VIIは約168gという軽量設計を維持した。横幅も72mmに抑えられており、多くの人が片手で持ちやすいサイズ感となっている。
本体の側面に、カメラの操作などに役立つ物理ボタン「即撮りボタン」を新たに搭載した。ユーザーは、撮りたいと思った瞬間に、画面を操作することなく素早く撮影体勢に入ることが可能だ。
具体的な操作として、スリープ状態のスマートフォンをポケットやバッグから取り出し、このボタンを長押しするだけでカメラアプリが起動する。そのままもう一度ボタンを押すと写真が撮影できるため、決定的瞬間を逃しにくい。このボタンは動画撮影の開始・停止や、スクリーンショットの撮影にも利用できる。
アウトカメラは、広角(24mm相当、5000万画素)と超広角(16mm相当、1300万画素)の2眼構成で、ハイエンドモデルのような望遠専用レンズはない。広角カメラのクロップズームによって望遠域の撮影に対応する点は先代と変わらない。記録は全て1200万画素(3000×4000ピクセル)となる。
メインの広角カメラには、先代と比較して面積が約1.6倍大きい、新型のイメージセンサーを採用した。より多くの光を集めることが可能になり、レストランの室内や夜景といった光量が少ない場所での高画質化に期待できる。
画像処理には、ソニーのデジタル一眼カメラ「α」シリーズで開発された技術が応用されており、過度な加工を抑えた、目で見たままに近い自然な色合いで記録されるという。
撮影後の楽しみ方として、ソニー独自の動画編集アプリ「Video Creator」を利用できる。このアプリを使えば、専門的な編集知識がなくても、簡単な操作でVlog(ビデオブログ)風のショート動画を作成できる。
利用者は、本体に保存されている動画や写真素材をいくつか選ぶだけで、あとはアプリが自動的にBGMやトランジション(場面転換の効果)を付けて一本の動画に仕上げてくれる。動画の雰囲気を変える9種類のカラーフィルター(ルック)も用意されており、手軽に自分好みの作品を作ってSNSなどで共有することが可能だ。
ディスプレイは6.1型の有機ELを搭載。リフレッシュレートは先代の60Hzから120Hzにアップデート。WebサイトやSNSのタイムラインを上下にスクロールする際の表示が滑らかになり、画面のチラつきが抑えられる。
ソニーのテレビ「BRAVIA」で培われた高画質化技術をスマートフォン向けに最適化したものを採用している。これにより、被写体の色を忠実に再現し、明暗の差がはっきりとした映像を表示できる。
合わせて、ディスプレイのアスペクト比(縦横比)を、従来の21:9から19.5:9に変更。YouTubeなどで主流となっている16:9の動画を再生した際の表示サイズが、先代と比較して約13%大きくなった。画面の黒帯部分が減り、より迫力のある映像視聴が可能になる。
アスペクト比の変更とその理由は、2024年に発売されたフラグシップスマートフォン「Xperia 1 VI」と同じだ。2025年夏に登場した「Xperia 1 VII」も、Xperia 1 VIと同じアスペクト比を継承した。
本体前面には、ディスプレイを挟んで上下にスピーカーを配置したフロントステレオスピーカーを搭載している。音が利用者の正面から直接届くため、動画やゲームの音声を立体的に楽しめる。「エンクロージャー」と呼ばれる箱型の構造部品をシリーズで初めて採用。スピーカーユニットを覆うことで、音を再生する際に発生する本体の不要な振動を抑制する。その結果、音が濁らずにクリアになり、音圧も向上した。
近年では搭載機種が減少している3.5mmイヤフォンジャックを搭載しており、手持ちの有線イヤフォンを変換アダプターなしで直接接続できる。内部のオーディオ回路設計を見直し、左右の音声信号の分離性を高めたことで、音の広がりや立体感が改善された。
ワイヤレス接続では、Bluetoothの送信電力を先代モデルの2倍に強化。駅のホームや繁華街など、電波が混雑する場所でも通信が安定し、音楽再生時の音途切れが発生しにくくなった。
さらに、音楽ストリーミングサービスなどで圧縮された音源を再生する際には、「DSEE Ultimate」という機能が働く。AI技術を用いて圧縮時に失われた高音域のデータを補完し、CDを超えるハイレゾリューション・オーディオ相当の音質に近づける。
同じ製品を長く使い続けたいというニーズにもXperia 10 VIIは応える。バッテリーの容量は5000mAhで先代と同じだが、ソニー独自の充電制御技術により、充放電による劣化を抑制。4年間使用しても、バッテリーの最大容量を高いレベルで維持できる。
ソフトウェア面では、購入後「最大4回」のOSバージョンアップと、「6年間」のセキュリティアップデートの提供が保証されている。これは先代モデル(OSアップデート2回、セキュリティアップデート4年)から大幅な延長であり、この点においても長期間にわたって安心して同じ製品を使用し続けることが可能だ。
メインメモリは先代より増加した8GB、ストレージは128GBとなっている。プロセッサにはQualcommのSnapdragon 6 Gen 3を搭載することで、処理速度が向上したという。
Xperia 10 VII専用のアクセサリーとしては、クリアケースが用意される。本体カラーに調和したグラデーションデザインと、黄変しにくい背面素材を採用している。ステッカーを挟めるが、挟む素材の厚みや材質によっては決済機能や無線性能に影響が出たり、固定できなかったりする場合があるという。
このように、「即撮りボタン」や「大型イメージセンサー」によるカメラ性能の向上、「120Hz対応ディスプレイ」や「改良されたステレオスピーカー」による視聴体験の改善といった、ユーザーが日常的にその効果を体感しやすいよう、Xperia 10 VIIは先代から大幅に機能改善が図られた印象を受ける。
それに加え、「4年間性能が持続するバッテリー」や「6年間のセキュリティアップデート保証」も長期使用を見込んだ仕様だ。Xperia 10 VIIは、ソニーらしさのこだわりと、実用的な機能のバランスをより重視したモデルだといえる。
この他、画面の一部分を囲うと詳細情報を確認できる「かこって検索」や、マルチモーダル生成AIの「Google Gemini」、写真の管理・編集が可能な「Googleフォト」を利用できる。指先1つで高品質な編集をこなしたり、的確でスマートなアイデアを容易に得たりすることができ、創造性を高められるという。
Xperia 10 VIIは必要最低限の機能・スペックを備え、ミッドレンジスマートフォンの新定番になりそうだ。
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