店頭で携帯電話の契約(購入)をする際に、事務手数料に関する説明を受ける――誰しも一度は経験したことがあるだろう。
かつて携帯電話を“売る側”だった筆者も、「初回の請求には契約事務手数料が合算されて、本日案内した毎月の利用料金より少し割高な請求となります」「今回は機種変更ですので、事務手数料は○○円となります(無料です)」といった案内はよくしていたし、今でもスラスラと口から出てくる。
その事務手数料に今、大きな変化が起きている。端的にいうと“値上げ”だ。主要通信事業者(キャリア)では、店頭における事務手数料を新規契約なら3000円程度、機種変更なら2000円程度を相場に設定していた。しかし、数年前には4000円程度となり、2025年には一部キャリアが5000円近くにまで値上げしている。
本件に対して、SNSでは「(ドコモの場合は)オンラインショップなら引き続き無料なので、店頭で買う意味をさらに見いだせなくなってくる」「ソフトバンクはWebでも(LINEMOブランド以外は)手数料取るようになるのか」「ドコモやソフトバンクは(客が)店頭に行ってほしくないのかな?」といった反応が見られた。
反応にもある通り、店頭での事務手数料の値上げは、キャリアショップや家電量販店、併売店といったリアル店舗にとってマイナスの影響となりうる。そこで、今回は携帯電話販売に携わる複数の現役店員に事務手数料の値上げに関して話を聞いた。なお、話を聞いたのは事務手数料の変更前となる。
先述の通り、店頭での事務手数料を約5000円にまで値上げしたのはドコモとソフトバンクだ。そのせいか、両社のキャリアショップなどでは「事務手数料が値上げする前に!」という趣旨のチラシやポスターを制作し、“今なら”まだおトクに契約できるという旨をアピールしていた。
チラシやポスターを見た来客は、本件にどのような反応を示したのだろうか。
携帯電話の買い替えサイクルが鈍化していることもあり、(既に値上がっている)今の事務手数料で手続きをされるお客さまも多いせいか、今回の値上げについてあれこれ言われることはあまりありません。「初回のみ事務手数料がこれだけかかります」という話をしても「ああ、そういうの(事務手数料)あったよね」みたいな感じで価格設定に関する言及はあまりないです。
ただし、このポップ(チラシやポスター)をフックに機種変更を決めたお客さまからは「約5000円って高いよね」的な話は聞きます。今の手数料と比較すると1000円ほどのプラスなんですけど、字面から受ける印象は結構違うようです。
事務手数料そのものは「携帯電話を買ったらかかるもの」として意外と認識されてはいるようだ。
その一方で、別の店員からはこんな話が出てきた。
事務手数料について、契約の翌月や翌々月、要するに新しい携帯電話を買った後に「思っていたよりも(料金が)高いんだけど!」と相談頂くことは多いです。契約時にどれだけ説明しても、そしてお客さまに「理解した」と署名までいただいたはずなのに……。
手数料が約5000円となると、いくら「最初の請求は高くなりますよ」と説明しても、実際に請求された金額を見て「何かおかしなサービスに加入させられたんじゃないか?」と思うお客さまが増えるんじゃないと、今からちょっと心配になっています……。
携帯電話の販売では、目の前にいる店舗スタッフ“以外”にも人手がかかっていますし、システムにも運用するための費用や人手が必要です。そう考えると事務手数料は「仕方がないもの」ではあるのですが、支払うことに納得されないお客さまも意外と多いです。「どこの店に行っても同じようにかかりますよ」と説明しても「払いたくない」と帰ってしまう方もたまにいます。
これが値上げとなると、事務手数料の説明時に「じゃあいいや」と手続きをキャンセルする方が増えたりしないかなと考えてしまいます。
筆者も長いこと携帯電話販売員をやっていたが、事務手数料が理由の請求金額へのクレームや手続き中のキャンセルは何度か経験したことがある。「事務処理に掛かる料金で、店舗ならどこで買っても同じように請求される」と説明しても納得しない(理解しない)お客さまもいるのだ。
「今より高くなる」は、契約時あるいはその後のトラブルやキャンセルにつながる不安要素である――かつて店員だったからこそ、その懸念は大いに理解できる。
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