Nothing Technologyのスマホが、にわかにその存在感を高めている。4月に発売された「Nothing Phone (3a)」は、初のキャリア販売として楽天モバイルが取り扱いを開始。7月には、同じミッドレンジモデルでより価格を抑えた「CMF Phone 2 Pro」を発売した。2024年に投入されたCMF Phone 1とは異なり、おサイフケータイやeSIMなどのローカライズを施した上で、こちらも楽天モバイルが取り扱っている。
さらに、8月には2年ぶりのフラグシップモデルとなる「Nothing Phone (3)」も発売になった。こちらも、機能性の高さや背面に備えた「Glyphマトリックス」はグローバル版そのままだが、日本向けの機能としておサイフケータイに対応。3機種連続で楽天モバイルの販売も決まり、同社の全店舗にNothingスマホの販路を拡大していく。楽天モバイルとの協業によって、店頭販売を加速させている。しかも全てにローカライズが施されており、日本市場攻略の本気度がうかがえる。
これまでは、どちらかいうとファッションやデザイン、ガジェットなどに感度の高いユーザーが中心で、知る人ぞ知る存在だったNothingだが、楽天モバイルとの協業を機に、一躍“メジャーデビュー”したといえる。では、CMF Phone 2 Pro以降のNothingは、どのような方針で日本市場に臨んでいるのか。Nothing Japanを率いるマネージングディレクターの黒住吉郎氏に話を聞いた。
―― まずは、直近で発売された(インタビューはCMF Phone 2 Pro発売後、Nothing Phone (3)発売前に実施)CMF Phone 2 Proについてうかがえればと思います。発売後の反響はいかがでしたか。
黒住氏 驚きの高評価です。記者さんに限らず、コアなファンの方から見ても、あのレンジの端末にeSIMまで入れてくるというところに結構な驚きがあったようです。昨年のCMFは差別化をしようという強い意識があり、素材であったり色味であったり、さらにはガチャっと裏のパネルを外して“変身”できたりがありました。今年はそこまではやっていませんが、ちょうどいい加減でエクスプレッシブな(表現力に富んだ)デザインをやったらこうなるのかというところが好意的に受け止められました。
Nothingのスマホは意識的にビス(ネジ)を使っていますが、それが表面に見えたり、CMF Phone 1では“見せネジ”ではなく、実際に取れたりというところがNothingらしいこだわりでした。自分らしさを見せる――CMF Phoneはそういうプロダクトになっています。プロダクト自体にパーソナリティーやアイデンティティーを持たせたのがCMF Phoneです。
―― 販売はどうでしょうか。
黒住氏 好調です。現在、楽天モバイルの128店舗に展開しています。100店舗が楽天モバイルのいわゆる個店で、28店舗は家電量販店内の楽天モバイルショップです。最初は個店の楽天モバイルショップから始めましたが、お問い合わせが多かったり、販売が好調だったりしたこともあり、CMF Phone 2 Proが入った段階で家電量販店にも広がっています。それならNothing Phone (3)を入れるタイミングでもっと広げようということで、全店舗での取り扱いになることが楽天モバイルのシャラッド(・スリオアストーア)CEOから発表されました。
店舗を広げるというと簡単に聞こえるかもしれませんが、やろうとすると投資が必要じゃないですか。一緒になってやっていこうということで、広げる判断をしていただけました。合計すると、1000店舗以上になります。
―― 段階的に300店舗くらいから、というのではないんですね。
黒住氏 楽天モバイルの特徴かもしれません。しっかりした自信や戦略もあると思っています。楽天モバイルは、年内に1000万契約を目指すと何度も述べていて、インフラ投資についてもめどが立っている。7月末で約900万契約、じゃあ残りの100万をどうするかというときに、その原動力の1つと見ていただけているのだと思います。Nothingは若いお客さまへのリーチもできます。
また、Nothing Phone (3)を導入する際には、いわゆる残クレ(楽天モバイル買い替え超トクプログラム)も導入していただけました。MNPだと、Nothing Phone (3)が毎月1250円になる。タイミング的にもドンピシャだと思いました。
―― 楽天モバイルはデータ利用量の多い若いユーザーを必要としている印象がありますが、そことの相性がよさそうですね。CMF Phone 2 Proも、若いユーザーを獲得できているのでしょうか。
黒住氏 若い人が取れているというデータがあり、そこには少し自信を持っています。私は2024年4月に入りましたが、6月にユーザー調査をしています。人口全体をカバーできるサンプル数でしたが、50%の方が31歳以下ということが分かりました。また、IIJが9月にCMF Phone 1を発売しましたが、やはりユーザーの40%以上が30歳以下とのことで、他のブランドと比べると圧倒的に若いユーザーがついています。確固たる自信があるのは、そのデータがあるからです。
同じ調査は今年の6月にもやりましたが、50%の数値がちょっとだけ下がりました。それはわれわれが広がっているので、平均化されたということだと思いますが、依然として若い人の比率は高い。楽天モバイルもお客さまの声はいろいろなところで拾っていますが、特にソーシャルメディアでの声が大きいとおっしゃっていました。当初はイメージで若い人が多いと思っていたものが、実ビジネスの中で証明されてきた感じです。
―― CMF Phone 1に関しては着せ替えができたのがすごいと思いましたが、CMF Phone 2 Proだとネジが飾りになってしまっているのが少し残念でした。コンセプト的には、1の方が思い切っていたというか。
黒住氏 そうなのですが、あれはちょっとギリギリで……。カバーを外してしまうと、最近では珍しくバッテリーのセルが見えてしまう。カバーなしで使っている人を想像してしまうと、(メーカーとしては)ちょっと怖いですよね。あれでよく技適が通ったなと思いました(笑)。CMF Phone 2 Proは、そこをやるよりも、シンプルで薄いということにフォーカスしています。
―― なるほど。あのギミックがないからこその薄さだったんですね。
黒住氏 そうです。構造がシンプルになりましたからね。裏のカバーは外せなくなりましたが、3Dプリンタを使ってネジ穴にはめられるアタッチメントは作れます。
―― ネジ自体は外れるんですね。後は、下の円形のパーツも残っていました。
黒住氏 アクセサリーアタッチポイントと呼んでいますが、ここは外して、メーカーズクラフトのように自由に合ったパーツを作ることができます。
―― 現在、CMF Phone 1用としてスタンドやストラップが販売されていますが、ここは広げないのでしょうか。
黒住氏 メーカーとしての難しさですが、数やビジネス性を考えるとなかなかそこを広げるのは難しいですね。というと否定的に聞こえてしまうかもしれませんが、コミュニティーメンバーに自由に作らせる方が、より需要があるのが実情です。難しいのは、それをどうやって継続するかですが、お客さまが楽しいと感じてくださる方がNothingのようなブランドのストーリーとしては正しいと思っています。
―― そんな個性や特徴はありつつも、実は価格も安いですよね。同クラスの端末としては珍しく望遠カメラを積んでいます。
黒住氏 安いですが、機能性はしっかりしています。中身はMediaTekのチップを積んでいますし、日本仕様としてeSIMやおサイフケータイにも対応しています。そういうところが充実しているのと、比較的明るめのレンズを搭載しているので、自分で撮っていても「これでいいじゃん」と思える写真が残せます。Nothingを買っていいかどうか、まだ悩んでいる方はいると思いますが、この価格ですから、ぜひ試してみていただきたいですね。
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