三木谷氏は「狙いすましたわけではなく、皆さんから値上げするのかと聞かれるので一応言っておこうと思った」と笑うが、価格の据え置きを改めてアピールした背景には、他社の値上げを受け、契約者獲得を加速させたい狙いがありそうだ。Rakuten最強プランをなくしてRakuten最強U-NEXTに一本化し、実質的な値上げをできなかった理由も根っこは同じと見ていいだろう。
会見終了後の囲み取材で三木谷氏に、段階制、特に3GB以下の料金設定を廃止する意向がないかをたずねてみたが、同氏は「(廃止)してほしいの?」と冗談めかしつつ、「今のところは考えていない。むしろ、もっとアグレッシブに行く案もある」と語っていたほどだ。
U-NEXTをセットにしたRakuten最強U-NEXTは、データ使用量を問わずに金額が上限に達するため、ARPUを上げるには手っ取り早い料金プランだ。三木谷氏が「付加価値を高めればそこは2980円(20GBを超過したときの税別価格)になるので、今後少しずつやっていくかもしれない」と語っていたように、楽天モバイルにとって収益拡大の鍵になる。
その反面、Rakuten最強プランがないと、低容量のユーザーが離脱する可能性が高まってしまう。競合の料金プランを見渡すと、KDDIのUQ mobileは「ミニミニプラン」を廃止した一方で、ソフトバンクのY!mobileが「シンプル3」でSプランを残した。irumoの新規受付を終了したドコモも、「ドコモmini」に各種割引を適用すると、料金は880円まで下がる。
Y!mobileのシンプル3 Sは割引前の料金が値上げになっている一方、PayPayカードゴールドで支払うとシンプル2 Sより値下げになる上に、データ容量も1GB増える。条件付きながら、Rakuten最強プランの3GB以下より安くて大容量といえるあくまでドコモやY!mobileは光回線やクレジットカードをセットにしたときの料金で、Rakuten最強プランと横並びでは比較できないものの、データ容量は大きく、金額でも楽天モバイルを下回るケースがある。競合との関係を踏まえると、今の料金体系を大きく変える実質的な値上げは難しいというわけだ。
ネットワークに対するユーザーの評価も、値上げに踏み切れない要因の1つかもしれない。目下5Gを拡大している楽天モバイルだが、ユーザー数が急増したのに伴い、“パケ詰まり”する場所も増えてきた。三木谷氏も「データ的には(全体としては)そんなことはない」としながらも、「一部の混雑が起っているところでは、早急な対策が必要」と認める。
楽天モバイルでは、東京都心部の主要駅に電波対策を行うとしている他、地下鉄駅間の4Gを20MHz化することも進めている。会見で対策する場所として挙げていた駅、特に新宿や渋谷などのターミナル駅付近では、速度の低下が起きやすい。また、地下鉄も5MHz幅のままになっている場所では、まったく通信ができないということも筆者自身が体験している。駅間の20MHz化は進めている一方で、現時点でも4割超は5MHz幅のままだ。
同社では、電波改善の依頼が年々減少しているとしたが、これは着実にエリアが広がっているためだろう。その一方で、東京エリアで「つながりやすさ強化宣言」を打ち出し、上記のような対策を発表しているのは、不満の質がエリアからキャパシティーに移り始めていることを示唆する。三木谷氏は価格据え置きを「当面」としていたが、電波改善は設備投資の増加にも直結するだけに、難しいかじ取りが求められそうだ。
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