大手3キャリアが相次いで料金を改定し、事実上の値上げに踏み切る中、楽天モバイルはあえて記者会見まで開催し、代表取締役会長の三木谷浩史氏が「価格据え置き」を宣言した。10月1日に開始された「Rakuten最強U-NEXT」やそのキャンペーンの発表に合わせた形だが、既存のRakuten最強プランは低価格なままであることをうたい、差別化を図った格好だ。
一方で、物価や人件費の上昇に加え、円安の影響は楽天モバイルにも直撃している。他社が値上げに踏み切る状況の中、なぜ同社は価格を維持できたのか。三木谷氏によると、その理由は3つあるという。また、キャリア4社の競争環境を踏まえると、同社には値上げに舵を切れない事情もありそうだ。同社が他社とは異なる方針を打ち出す背景を読み解いていく。
「今日は楽天モバイルも値上げするという発表……ではなく、低価格、無制限は継続する」――こう語ったのは、楽天モバイルの三木谷氏。物価高や為替高、人手不足といった日本経済を取り巻く一連の状況を説明し、「すわ、値上げか」と思わせた後の価格据え置き宣言だっただけに、参加した記者は盛大な肩透かしを食らったように感じたはずだ。筆者自身も、一瞬だまされかけてしまった。
三木谷氏は、改めて3278円でデータ通信が使い放題になることに加え、海外ローミングの2GB無料や、Rakuten Linkによる通話無料になるRakuten最強プランの特典をアピールした。データ容量を絞った料金プランだと他社にも安いものはあるが、無制限かつ海外ローミングや音声通話までという条件だと、確かに楽天モバイルは群を抜いて安い。
とはいえ、冒頭で挙げたように物価が上がっているのも事実だ。三木谷氏によると、特に「大きなところでは電気料金が上がっていたり、極端な円安が進んで(海外から購入する基地局などの)調達コストも上昇したりしている」という。キャリアが常時通信をするには、基地局に通電していなければならない。電気料金の高騰は、運用コストに直結する。実際、他キャリアも大きなコストとして電気代を挙げていたほどだ。
また、基地局などのネットワーク機器を海外から調達していた場合、円安はコスト高に直結する。日本メーカー製だとしても、中で使われている部品や材料を海外から買っていれば、最終的には製品価格に転嫁される。三木谷氏が「サステナブルに健全経営をしなければならない」と語るように、利益は出さなければならない。特に同社は、2025年に通期で黒字化できるかどうかの正念場にある。本来であれば、他社以上に値上げに踏み切りたいはずだ。
では、なぜ同社は低価格を維持すると宣言できるのか。三木谷氏は、1つ目として同社が完全仮想化ネットワークで、かつOpen RANに対応していることを挙げつつ、次のように語る。
「楽天モバイルのネットワークだけは、世界で唯一完全仮想化していて、基地局の機器の部分もソフトウェア、とりわけOpen RANのソフトウェアで運用している。それプラス、最近大きく出てきたAIも活用している。設備投資は一般的な比較で大体40%、事業の運営費も大体30%ぐらい削減できている」
楽天モバイルは値上げせず、三木谷氏が宣言 なぜ「低価格×無制限」を維持できる?
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