マーケットプレースの基本原則は2020年〜2021年にかけて策定されたが、社会情勢に応じてアップデートする必要もある。そこで、メルカリは外部有識者を交えて「マーケットプレースの在り方に関するアドバイザリーボード」を定期的に実施しており、必要に応じて基本原則を見直している。
このアドバイザリーボードの第5回で議題に挙がったのが、Switch 2への対応方針だった。メルカリではSwitch 2の発売当初から、出品禁止の対象にしてこなかったが、迫氏によると、「会社の評判を守るという観点では、別の対応もあったのではないか」という意見も出たという。例えば、出品価格に上限を設けるといった対応だ。
しかし、Switch 2そのものは、安全を脅かすものや犯罪行為を助長するものではない。信頼という観点では、不正出品の排除に努めてきた。そのため、マーケットプレースの基本原則にのっとってSwitch 2の出品を禁止するという判断に至らなかった。
そこで議題に挙がったのが、基本原則では禁止できない商品を例外的に禁止すべきかどうかという点だ。例えば、経営判断で出品を禁止するという判断もある。経営判断は「伝家の宝刀」ともいえる手段で、出品を禁止すれば「批判もされず、意思決定のコストを抑えられる」と、アドバイザリーボードのメンバーとして参画してきた慶應義塾大学 経済学部 教授の坂井豊貴氏は振り返る。
「経営判断によって安易に出品禁止にする方が楽」(坂井氏)だが、その基準はあいまいだ。具体化するために、中期経営計画のKPI(目標)とひも付けるのはどうかという議論も出たという。つまり、Switch 2の出品が、メルカリの業績にマイナスの影響を及ぼすのかという点だ。「SNSでの一時的な盛り上がりだけで判断すべきではない」との意見も出た。
こうした議論の末、Switch 2については、基本原則では出品を禁止できないものの、誤認を招く出品や誹謗中傷など、マーケットプレースの安心・安全が著しく損なわれたと振り返る。メルカリとしては出品の削除やアカウントの利用制限などの対応を行ったが、「このような事象が発生したこと自体が、安心・安全を損なった」(迫氏)と判断。「Nintendo Switch 2は発売時においては、マーケットプレースの安心・安全を守るために、出品禁止すべきだったと考える」と結論づけた。
今後、不正出品やトラブルの急増、極端な価格の乱高下など、マーケットプレース内での安心・安全が損なわれるような可能性がある商品については、出品禁止を含む対応を行うことを明らかにした。
メルカリは、基本原則の在り方や、アドバイザリーボードでの議論の経緯を「ホワイトペーパー」として策定し、10月9日に公開した。メルカリの考え方を外部の開示することで、透明性の高いマーケットプレースを目指す。
「メルカリは、真面目にマーケットプレースを運営しているが、真面目さが世間に伝わっているとは限らない。そういうものをきちんと作るべきではとの意見が出た」(坂井氏
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