オンライン専用ブランドのpovo2.0(以下、povo)を運営するKDDI Digital Lifeは、10月7日に「いつものトッピング」の一部をリニューアルした。povoには、大きく分けて2種類のトッピングがあり、いつものトッピングはその名の通り、定常的に提供されているサービスのこと。これに加え、期間限定の「今だけのトッピング」を展開している。こちらは、季節やイベントに合わせたり、他企業とコラボレーションしたりして提供するものだ。
今だけのトッピングはキャンペーンに近い位置付けだとすると、いつものトッピングは、いわばキャリアの料金プランに近い存在。そのラインアップを変更するのは、既存のキャリアの新料金プラン導入に近い意味合いがある。では、povoは新しいトッピングで何を狙っているのか。新たに追加、廃止されるトッピングや、新しい料金の払い方などから見えてくる、同社の戦略を解説していく。
povoが追加したデータ容量は、大きく分けて2つになる。1つが5GB、もう1つが30GBだ。前者に近いデータ容量では「3GB(30日間)」というトッピングが既に存在しているが、5GBはこれと併存する形になる。また、「60GB(365日間)」というトッピングも追加される。こちらも、12カ月で割ると、1カ月あたりのデータ容量は5GBになる。
5GB(30日間)の料金は1380円。これに対し、60GB(365日間)は1万3200円だが、1カ月あたりの金額に換算すると1100円になる。長期間のトッピングは、途中で辞められないという点で期間契約に近いものと捉えることもできるが、その分、1カ月あたりの料金は抑えられる。収益が安定する分のディスカウントと捉えれば、理解やすいだろう。
5GBは通常のキャリアだと小容量プランに相当するトッピングだが、もう1つの30GBは、サブブランドやオンライン専用ブランドが得意とする中容量帯だ。30GBトッピング自体は既に「30GB(30日間)」として展開していたが、ここに90日間、180日間という2つの長期トッピングを加えて料金を抑えられるようにしたのが、10月6日までとの違いになる。
「90GB(90日間)」は7980円で、1カ月あたりに換算すると2660円。「180GB(180日間)」は1万4880円で、1カ月あたりの金額は2480円だ。いずれも、1カ月あたりの料金は10月20日まで提供している「20GB(30日間)」の2700円より安くなる。これら2つの長期トッピングがいつものトッピングに加わったのに伴い、20GB(30日間)は提供を終了する。
注意したいのは、30GB(30日間)は20GB(30日間)より80円高いところだ。わずか80円の差で10GBのデータ容量が増えるため、そもそも20GB(30日間)を購入していた人はそこまで多くなかったとみられるものの、1円でも料金を切り詰めて、ちょうどいいデータ容量がほしかった人の選択肢はなくなることになる。
90日間もしくは180日間を選択すれば実質的には容量アップで値下げになるため、ユーザーの不満に直結することはなさそうだが、毎月、20GB(30日間)トッピングを購入し続けていた人は、行動の変更を余儀なくされる。20日以降、長期トッピングを購入するか、80円高い30GB(30日間)を購入するかは、あらかじめ決めておいた方がいいだろう。
では、なぜpovoはこのようなトッピングを追加したのか。小容量の5GBと、30GB帯では理由が少々異なるが、共通している背景としてあるのは、ユーザーのデータ使用量がpovoでも増加していることだ。KDDI Digital LifeのCOO(チーフ・オペレーティング・オフィサー)を務める中山理賀氏は、「3GBのユーザーの方のデータ容量が不足していることが見えてきた」と語る。
中山氏によると、3GBトッピングを購入するユーザーの平均データ利用量は月3.7GBになっており、トッピングの容量を超過しているという。3GB中、0.7GBは「だいぶ超過している」(同)状況だ。
povoの場合、ローソンでチェックインすると0.1GBが付与される「povo Data Oasis」があるほか、「3GBを前倒しで買い足したり、『1GB(7日間)』を組み合わせたりして買っている人もいる」(同)。そのため、必ずしも低速状態で使っているとは限らないが、1つのトッピングで1カ月のデータ通信をまかなえないことに変わりはない。
こうした状況を解消するため、「結果として5GBを追加することを決めた」(同)という。5GB(30日間)の料金1380円は、3GB(30日間)と1GB(7日間)を合計した金額と同じ。小分けにして4GBを追加するより、前払いで1380円払ってもらえばより多くのデータ容量を使えるようにして、ユーザーの購入を促している。3GBを消費しきって我慢しているユーザーが5GB(30日)を買うことにつながれば、povoのARPU(1ユーザーあたりの平均収入)拡大にもつながるはずだ。
一方で、毎月のデータ使用量が「まだまだ2GBちょっとと少なめの方が多くいる」(同)ため、3GB(30日間)トッピングは残した。3GBトッピングを廃止した方が「事業者目線で言うとARPUも上がるが、まだまだニーズが残っていることを踏まえた」(同)という。低容量トッピングを廃止すると、ユーザーの離脱にもつながりかねないため、この容量帯の廃止には慎重な姿勢を示している。
もう1つの30GB帯も、「ユーザーの利用動向に基づいて判断した」(KDDI Digital Life カスタマーエンゲージメント部 マネージャー 葭内《よしうち》生悟氏)。葭内氏は、「20GBの方が30GBに移行されていたり、データ消費量が明らかに増えていたりするので、30GBのメニューを増やして選びやすくした」と語る。
90GB(90日間)や180GB(180日間)では複数月のまとめ買いが必要になる一方で、それだけでこれまでの20GB(30日間)より料金は安い。1カ月ごとにデータ使用量が大きく上下するユーザーをのぞけば、3カ月や半年のまとめ買いは手間の削減にもつながる。事実上、30GBを値下げしたともいえ、ユーザーを移行させる誘因力は強そうだ。
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