30GBというデータ容量は、「他社の状況も判断軸」(葭内氏)だった。ご存じのように、ドコモのオンライン専用プランahamoは、2024年10月に料金を据え置きのまま、データ容量を20GBから30GBに増量。これに引きずられる形で、ソフトバンクも同じオンライン専用ブランドのLINEMOの「LINEMOベストプランV」を30GB化した経緯がある。また、KDDIはUQ mobileの「コミコミプラン」を改定。各社がahamoを追って、一斉にデータ容量を30GBまで増やした。
povoも2024年12月に30GB(30日間)トッピングを追加し、この動きには追随していたものの、1回2780円という料金は、2970円で5分間の音声通話定額や無料の国際ローミングがつくahamoに見劣りしていたのも事実だ。これに対し、180GB(180日間)であれば、半年間は使い続けなければならない代わりに、料金は1カ月あたり2480円まで下がる。550円の「5分以内通話かけ放題」トッピングをつけても3030円。ahamoとほぼ横並びになる。
長期トッピングは、ある意味、先払いによる縛りにもなるため、povoをあえて選ぶようなユーザーには避けられると思いきや、最近ではその選択率も上がっているという。大きなきっかけになったのが、ペイディの分割払いをキャンペーンとして導入したことだ。これによって、1年間トッピングの利用が16%向上したといい、現状では「1年トッピングと細切れに買う方は、大体半々ぐらい」(葭内氏)の割合になっているそうだ。
とはいえ、長期トッピングは先払いする金額が通信料としては高額になる。そこでpovoでは、ペイディによる分割払いをキャンペーンから定常的な支払い方法に昇格。少々回りくどい方法だが、長期トッピングを購入し、それを分割払いにすることで毎月の支払いを安く抑えられるようにした。これなら、一般的なキャリアで料金プランを選択するのとほぼ同じになる。
これまでも3GB(30日間)の自動更新はあったが、ペイディの分割払いを導入したことで、より幅広いトッピングを月額払いで使えるようになったといえる。長期トッピングを購入するユーザーは、途中で解約する確率は低いため、事業としての安定性も出てくる。プリペイド型でスタートしたpovoだが、徐々にポストペイの仕組みを入れているというわけだ。
もっとも、後者に軸足を移すというよりも、povoが意識しているのはパーソナライズだ。「長期の方もいるし、細切れに使う都度買いをしたい方もいる」(葭内氏)といい、二極化するユーザー層に合わせてデータ容量を拡充したり、支払い手段を多様化させたりしている。
一方で、長期トッピングを使うユーザーが増えると、アプリを開いてもらえなくなるリスクもある。工夫を凝らしたトッピングを提供しても、それが伝わらなくなってしまうのは本末転倒だ。トッピングを自由に選べるのがpovoの特徴。長期トッピングが定着しすぎると、その魅力を削いでしまうことにもなりかねない。実際、「年間トッピングはお客さまにとって楽だが、週末だけ使い放題になるトッピングをご存じない方もいる」(中山氏)という。
中山氏は「お客さまとつながってフィードバックをいただきたい」と語り、この点が課題であるとの認識を示した。「povo AIでつながりを感じていただいたり、ゲリラトッピングのようなものを数時間だけ売ったりすることで(アプリを)思い出していただきたい」というように、アプリの機能向上やイベント的な販売を通じてユーザーとの接点を強化していく方針だ。アプリを開いてみたくなる仕掛けの重要性が、今まで以上に高まっているといえる。
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