ソフトバンクも、「この春から、5G SAのエリアが急速に広がっている」(ソフトバンク 専務執行役員兼CTO 佃英幸氏)として、講演では2024年と2025年を比較したエリアマップの一部を示した。この図によると、もともと5G SAを展開していたエリアだけでなく、北海道の札幌市や福岡県の福岡市、宮城県の仙台市なども新たに5G SAエリアになったことが見て取れる。
同社は、この5G SAの上で新たなサービスの展開も開始した。1つ目が、「Apple Watch Series 11」や「Apple Watch Ultra 3」などが対応した、IoT向けの通信規格「5G RedCap」だ。また、10月からは5Gで音声通話を行う「VoNR」にも対応した。「今までは通話が始まると4Gに落としていたが、5Gのシングルレイヤーでサービスが提供できる」(同)と、よりシンプルなネットワーク構成で通話が可能になる。
5G SAの商用展開は2026年以降になる楽天モバイルは、「Sub6やミリ波は順次展開を加速している」(楽天モバイル 執行役員 先端技術開発統括部 ディレクター 大坂亮二氏)。一部のエリアは「衛星との干渉条件緩和でカバレッジを上げていくことが前倒しできている」(同)として、エリアが広がっていることを強調。内8割のアンテナが大容量化を可能にするMassive MIMOに対応していることもアピールした。
SA化と同時に各キャリアが取り組んでいるのが、5Gの大容量化だ。現状でも十分なキャパシティーがあると思われがちだが、「モバイルトラフィックは今後もさらに増加する。渋谷や新宿などはSub6を2波活用しているが、30年代にはそれでも収容できないトラフィックが発生する場所が出現すると予想される」(KDDI吉村氏)からだ。
この対策として、KDDIはミリ波を活用する。ただ、ミリ波は周波数が高く、障害物などがあると減衰も大きいため、「1つの基地局を設置するだけでは十分にエリアを確保できず、技術的な課題がある」(同)。そのため、KDDIは「世界初となるミリ波の無線中継」を京セラと開発。これを使うと、「中継器同士がメッシュ状に接続して、ミリ波を効率的かつ容易に展開可能になる」(同)という。
この中継器は、「各アンテナが送受信機能を具備しており、360度、最も強いミリ波を到来方向から受信できる。どこかのパスが切れても、他のパスで中継できる」(同)という特徴がある。実際、KDDIはこの中継器とミリ波の基地局を西新宿に設置。商用環境でエリアを展開している。
吉村氏によると、中継器を使わない場合、カバー率は33%にとどまるが、使った場合には99%まで拡大できたという。ミリ波は、10月13日に閉会した関西万博の会場にも設置されており、「トラフィックは通常の約8倍で、これがミリ波に分散されたことで一般の方の(ミリ波非対応端末の)通信品質向上にも寄与した」(同)という。
ミリ波の活用はドコモも進めており、特に「力を入れているのがスタジアム」(引馬氏)だという。ドコモが運営に携わる東京都の国立競技場や愛知県のIGアリーナでは、「スタジアムの中で多くの人が集まる中でも、非常に高速な通信を実現できる」(同)という。ミリ波で大容量のコンテンツが送受信できるようになることで、「今までのスマホでは提供できなかった新しい価値提供が可能になる」(同)のも、ドコモがスタジアムなどにミリ波を整備している理由だ。
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