世界を変える5G

5G SAや大容量化で“真の5G”がいよいよ本格始動へ 4キャリアの最新ネットワーク戦略を解説石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)

» 2025年10月18日 06時00分 公開
[石野純也ITmedia]
前のページへ 1|2|3       

上り速度を重視するソフトバンク、AI時代を迎えるネットワークとは

 対するソフトバンクは、同じ大容量化でも「一番重要なのはアップリンク」(佃氏)と力説する。スマホのAIが一般化すると、クラウド上のAIに、テキストだけでなく、カメラで撮った写真や動画をアップロードすることが増えてくるからだ。佃氏は、「AIという脳にコンディションを与えるのは、今だとテキスト入力や音声だが、今後はカメラで人間の目に相当する入力をすることが出てくる(増えてくる)」と語る。

ソフトバンク ソフトバンクは、広帯域化だけでなく、アップリンクの品質向上も重要になるという

 実際、スマホに搭載されるAIはマルチモーダルが当たり前になった。例えば、Androidに標準搭載されるGeminiでは、ストリーミングをしながらAIにその映像に写ったものを問いかけることができる。こうした使い方がより一般的になると、ダウンリンクを優先していたモバイルネットワークの在り方を変えていく必要も出てくる。

 「広帯域の周波数とアップリンクの品質をもっともっと高めていく」(同)というのが、ソフトバンクの戦略だ。そのためには、まず5Gの周波数帯域を増やし、「キャリアアグリゲーションを実装することで、大容量化を実現する」(同)。アップリンクは、「ローバンドも足すことで徐々に5G側に持っていき、5Gでサービスしている周波数をサポートする」(同)方針だ。

 各社が対応する、送信出力を上げるHPUE(High Power User Equipment)も、そのためのものという位置付けだ。HPUEは、もともと「ソフトバンクとChina Mobileで提唱したもの(仕様)だが、通信速度が30%〜40%も上がる」のが特徴。端末からの送信出力が弱いとアップリンクが確立せず、通信そのものができなくなってしまうことがあるが、こうした事態も防げるため、結果としてパケ詰まりの抑止にもなる。

HPUE ローバンドを組み合わせてアップリンクの品質向上を図るとともに、HPUEによって送信出力も上げている

 広帯域化とアップリンクを強化した基地局は、「中央に頭脳に当たる部分(BBU)を集約して、現場にはアンテナとアンプに当たる部分だけを置き、クラスタ単位で基地局をハーモナイズさせる」(同)予定だ。このような構成は、2026年度に導入する。「どこかの基地局がパンパンになったら、他がオーバーレイして助けてあげることで、全体の使用率が上がってパンクやパケ詰まりしない」(同)のが集約化のメリットだ。

 この基地局のクラスタ編成は、「AIによるリアルタイムな最適化」(同)を行う。「今まではルールベースでパラメーターをセットしていたが、AIでダイナミックにパラメーターを変更できるものを目指している」(同)という。

ソフトバンク
ソフトバンク さらに、基地局をクラスタ化することで、偏りをなくして周波数を有効利用する。26年度には、その制御にAIを活用していく

 将来的に、ソフトバンクは「AI-RAN」の導入を目指す。GPUを組み込んだ基地局で無線の性能を向上させつつ、その処理能力をMEC(Multi-access Edge Computing)サーバに使ったり、サードパーティーのAIアプリを駆動させたりするための計算資源にするというものだ。慶應大学の湘南藤沢キャンパスでは、実際に基地局を設置し、実証実験を進めている。近いコンセプトにはドコモも取り組んでおり、引馬氏は「ネットワークのためのAIと、AIのためのネットワークがある」と語る。

ソフトバンク
ソフトバンク ソフトバンクは、AI-RANの導入を目指す。無線制御にAIを使うのはもちろん、基地局自体をAIサーバとして活用するというのが、そのコンセプトだ
ドコモ
ドコモ ドコモも、「ネットワークのためのAI」と「AIのためのネットワーク」というコンセプトを示した

 前者の一例として、引馬氏はドコモがNTTやノキア、SKテレコムと共同で行ったAIによるネットワーク制御の研究を紹介。基地局と端末の双方で電波の伝搬環境を推定し、補正を行うことでパイロット信号を削減でき、通信速度が18%向上したという。5GはSA化が本格化したばかりだが、その面展開が始まったことで、各社とも次のステップに移りつつあることがうかがえる。ソフトバンクやドコモが示したように、ネットワークと融合したAIが6G時代の鍵の1つになることは間違いないだろう。

5G基地局 NTT、ノキア、SKテレコムとの実証実験では、AIの推定を入れることでスループットが18%向上した
前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2026年08月11日 更新
  1. 楽天の三木谷氏がStarlinkに言及――「正直に言って……」 AST SpaceMobileは過疎地域や海上で効果発揮か (2026年08月10日)
  2. LINEの「ミュートメッセージ」有料化へ 相手のスマホを鳴らさずに送れる便利機能 (2026年08月10日)
  3. KDDIからの独り立ちを目指す楽天モバイル、ローミング交渉の現在地――両社の考えを整理 (2026年08月10日)
  4. ソニーに聞く「Xperia 1 VIII」の裏側 デザイン刷新や20万円超えの理由、物議を醸したAIカメラ新機能の真相 (2026年08月10日)
  5. 【ワークマン】1900円の「アーバンマルチストレージショルダー」 大きく開く小分けポケット搭載 (2026年08月10日)
  6. NHK受信料パトカー・消防車から徴収問題、猛反発を受け「検討を進めていく」と会長 (2026年08月07日)
  7. ハイエンドスマホ「arrows Alpha」、IIJで半額以下の3万円台に 11月4日21時59分まで【スマホお得情報】 (2026年08月10日)
  8. 楽天モバイルのローミングは「予定通り9月末に終了」 ただし「ルーラル限定で継続」の可能性も (2026年08月07日)
  9. JR東日本「分かりにくい」新幹線券売機を改善へ なぜ、スマホではなく「駅での最短1分購入」を実現? (2026年07月04日)
  10. KDDIが値上げしても解約率が低下した理由 au、UQ mobile、povoを循環させ「脱・販促費競争」へ (2026年08月07日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー