KDDI代表取締役社長の松田浩路氏は、11月6日の決算説明会で楽天モバイルについて、「競争と協調の関係性にある」とのコメントを述べた。楽天モバイルについては、前日5日にソフトバンクの宮川潤一社長が楽天モバイルの「値上げしない」宣言に対し、地方のインフラ整備に触れ「アンフェアだ」と厳しく批判したばかりだ。
KDDIと楽天モバイルとのローミング契約は、もともと楽天モバイルが自社での基地局整備が十分に進められないエリアを、KDDI側が補完する形でスタートしたもので、楽天モバイルはローミング契約をエリア化の足掛かりにした。その後、契約期間を当初の「2026年3月末まで」から「2026年9月まで」に延長した。KDDIにとって、このローミング契約はあくまで一時的に手を差し伸べるにすぎず、主な収入源としては捉えていない。
松田氏は、「楽天モバイルが自前のエリアを構築するまでの間、暫定的に貸し出している。この考えに沿って今後も進めていきたい」とした上で、「次のタイミングにいくつかご相談を差し上げていきたい」と述べた。
楽天モバイルも現在、ローミング契約の終了に向けて、自社基地局の整備やネットワーク拡充に積極的に取り組んでいる。KDDIは、楽天モバイル側によるエリア化や投資の進捗に応じて、「ローミングの提供を(段階的に)減らす」(松田氏)方針を示しており、これは今後も変わらないようだ。
一方、楽天モバイルは2024年11月、報道陣向けの説明会で、自社が取得した「プラチナバンド(700MHz帯、帯域幅が3MHz幅)」の重要性を強調。障害物を透過して電波が回り込みやすい性質を持つため、地下鉄や屋内の通信品質改善が期待される。通信品質を“飛躍的に高める鍵”であり、「大きな武器」とも位置付けている。
同年6月27日に提供を開始したプラチナバンドは、狭い路地や屋内でも電波が届きやすい性質を生かし、既存の1.7MHz帯を補完するバンドとして運用している。1.7GHz帯で運用しているデュアルバンド対応のアンテナに、プラチナバンドの無線機を併設することで、早期にエリアを構築し、コストを抑えられると強調している。
楽天モバイルのプラチナバンドは周波数帯が700MHz帯で、帯域幅が3MHz幅。障害物を透過して電波が回り込みやすい性質を持つため、地下鉄や屋内の通信品質改善が期待される。楽天モバイルはプラチナバンドを1.7GHz帯とのベストミックスで展開しているただ、楽天モバイルが1から完全に自前のネットワークを構築せずに、ローミングに頼っている状況下で、値上げしない宣言を発表したことが、かつてプラチナバンドの取得を含めてネットワーク構築に苦労したソフトバンクには「いい印象」につながっていないのだろう。
一方、松田氏は、楽天モバイルがアピールする“最強”のネットワーク(通信品質)を目指すことについて、「最強という言葉は私ども(KDDI)のローミングを含めて、おっしゃっているのだろうと受け止めている」と述べ、国民の財産である周波数をしっかりと展開していくことが通信キャリアの使命であるとし、ネットワーク構築の重要性を改めて示した。
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