―― IIJと始めたサービスはいかがですか。
佐藤氏 まだほとんどプロモーションをかけていませんが、初日から普通に加入がありました。さすがIIJさんと思っています。これから少しずつプロモーションをかけていこうと思っていますが、やってよかったですね。IIJさんとリリースを出したら、いろいろなところから連絡が来ていますし、こうやって取材にも来てもらえました(笑)。
―― 経済圏にとどめておくという意味だと、月額課金のIIJの方が目的には合っているような気がします。
佐藤氏 povoはあくまで都度課金なので、僕らとしても継続型は欲しかったというのがあります。年末には電気もやりますが、固定回線もあり、10月からはセゾンさんと組んで新しいクレジットカードも出しています。電気ガス水道や通信、交通は1つ1つがもうかるサービスではありませんが、継続的にお客さまとつながれる基盤が作れることが、DMMにとってプラスになります。DMM全体を押し上げる基盤にしたいという思いでやっているので、ここは薄利でいいと思っています。
―― MVNOも数多くありますが、IIJを選んだ理由はありますか。
佐藤氏 IIJさんはMVNOではトップシェアです。最初のころは、他のMVNOとも話をしていましたが、動画配信サービスをフックにしていることもあり、MVNOのユーザーにどうしてもそれが合いませんでした。ギガをあまり使いたくないから入っているのに、ギガを使うサービスをバンドルすることになってしまいますからね(笑)。IIJさんとも最初はそういう感じでしたが、時代も変わってきました。DMM TVも動画配信の中で一番新規獲得が取れるようになり、そこを改めて評価いただき、もう一度話すことになりました。僕らの商品を売ってもらうだけでなく、IIJさんにも貢献したいということでこのような形になっています。
―― DMMポイントが付くオプションは、DMM経由で契約したユーザーだけでなく、既存のIIJmioのユーザーも買えるんですね。
佐藤氏 povoと同じです。povoでは、あちら側で売ってもらうのと、僕ら側で訴求するのを両方やったら、相乗効果がありました。IIJさんにも、povoでこういう形で両面でやって数が上がったというお話をしました。新規契約に限定してしまうと、どうしても数が少なくなってしまうこともあります。ですので、既存のユーザーがポイントを買える仕組みを作りました。
―― 料金プランもそのままですが、DMM用に何か変えようということにはならなかったのでしょうか。
佐藤氏 既存のプランにポイントを絡めて、まずは相互送客からというレベル感で考えています。利用動向を見ながらヒアリングをした上で、追加の改善をしていきたいと思っています。
―― povoとIIJは並行して話を進めていたのでしょうか。
佐藤氏 最初はそうでしたが、今回実現したのはpovoをやって一段落した後にもう1回話を始めてできました。
―― ということは、数カ月でできたということですね。
佐藤氏 そんなに複雑な開発が必要ではないモデルでやっているので、割と短い期間でできました。ガッツリMVNOをやるわけではないので、こちら側の開発も割とライトでした。われわれのページからIIJさんに飛ばして、あとは通常のフローです。自分もいたから分かりますが、通信会社は常に開発がパンパンなので(苦笑)。軽くできるところからスタートしました。
―― povo、海外eSIM、IIJでモバイルは一通りやり終えた形でしょうか。
佐藤氏 一通りそろいましたが、追加、追加でここまで来たので、今はまだバラバラに並んでいる状態です(インタビューしたのは、DMM Lifestyleオープン前日)。これからDMM Lifestyleのサイトをオープンするので、その中でこういうサービスがあって、これはこういうものということは分かりやすくしていきたいですし、プロモーションにも力を入れていきます。
特にアウトバウンドの海外eSIMは、質素なサイトを作っただけになっているので、旅行サイトを立ち上げるのを待ってこれから改善します。100点にしてスタートするタイプではなく、20点ぐらいからスタートして改善していくタイプなので、これで終わりとは全然思っていません。
DMMには「Apple Rewards Store」もオープンしたので、他事業で親和性のあるものと組み合わせると座組もあります。自分自身、モバイルには15年以上関わっているので、その仕事は続けていきたいですね。
―― それで言うと、モバイルと光をもっと組み合わせることもやった方がいいのではないでしょうか。
佐藤氏 今はありますが、バラバラに脈絡なく並んでいます。光回線はNUROベースのものと、BIGLOBE光、あとはSoftBank Airの三段構えになっていますが、よほどの人じゃないと分からない。これも整理して、こういう特典があるというのを一目で分かるようにしていきたいと考えています。
―― 独自で回線を引いているNUROと、NTT東西の回線を使うBIGLOBE、あとはモバイル回線のSoftBank Airという形で、固定回線側もモバイルのようにそろえているサービスのキャラクターがはっきりしていますね。
佐藤氏 NUROはDMM光でやっていますが、エリアが狭いのと、マンションがどうしても苦手です。それをカバーできるBIGLOBE光を入れています。それも面倒という形には、SoftBank Airの三段構えになっています。ここまで用意しておけば、何かが引っ掛かります。定期的に変えるようにはしていますが、その中でもDMMポイントは基盤として使えると思います。
また、通信だけでなく、他のサービスも同じような考え方でやっていこうと思っています。今はぽつぽつと点のように見えるかもしれませんが、コンセプトに向かってそろえ始めています。完成したら、どんなユーザーが見ても刺さるものがある、そういうものを作っていきたいですね。
DMMモバイルPlusは、DMMのモバイルサービスというよりも、DMM経済圏を作るための商材の1つという側面が強いようだ。povoやエックスモバイル、最近ではIIJがホワイトレーベル的に回線を提供し、それぞれの企業が持つ経済圏と組み合わせてサービスを作り上げているが、立ち位置としてはそれに近い。仕組みとしてはMVNOではないものの、各企業のブランドを冠しているという点では、ライトMVNOよりさらに軽いスーパーライトMVNOともいえそうだ。
IIJと組んでJALモバイルを手掛ける日本航空しかり、DMMしかりで、最近ではライフスタイルサービスとホワイトレーベル的なモバイル回線を組み合わせる動きが目立つにようになってきた。ライトMVNOとはいえ、MVNOになるのは設備投資がかかり、技術力も必要になってくるが、このような座組であればより気軽かつ身軽に参入できる。経済圏を作りたい企業のニーズとマッチしていることもあり、DMMモバイルPlusのようなサービスは、今後も増えていく可能性がありそうだ。
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