通信に価値を付加するという点では、楽天モバイルが10月に導入したRakuten最強U-NEXTも、ドコモやKDDIと方向性は一致している。通常のRakuten最強プランとの違いは、データ使用量に応じた段階制ではなく、フラットな無制限の料金プランという点。U-NEXT側も、通常契約であれば毎月付与されるポイントが付かなくなる違いはあるものの、通信と映像サービスのセットがわずか4378円で済んでしまう。
楽天モバイルにとっては契約促進につながる他、段階制ではないため、「ARPUはほぼ一番高いところにいく」(代表取締役会長 三木谷浩史氏)。複数のサービスがセットになっていることで、「脱退するリスクもかなり低い」(同)。三木谷氏が「特例」と語っていたように、開業当初から貫いてきたワンプランを崩してまで導入したかった料金プランだったというわけだ。
こうした新料金プランの導入や、なりふり構わない積極的なユーザー獲得が奏功し、楽天モバイルは12月25日に目標としていた1000万回線を突破。第4のキャリアとして、初めて契約者数が大台に達し、勢いに乗っている。もっとも、契約者数の増加に伴い、都市部などの混雑エリアではネットワーク品質に対する不満も徐々に高まっているように見受けられる。5Gの拡大で改善を図っているが、急速に増えるユーザーにネットワークが十分キャッチアップできていない印象も受ける。
セットプランで通信に何らかのサービスを上乗せしてきた3社だが、残る1社のソフトバンクは、メインブランドの料金プランを据え置きにしたままだ。他社が新料金プランを導入する中、ソフトバンクはユーザーの獲得が好調に推移しており、あえて料金水準を維持するモチベーションもあった。料金改定について問われた代表取締役社長執行役員兼CEOの宮川潤一氏は、決算説明会の場でたびたびその迷いを吐露している。
一方で、Y!mobileには9月に新料金プランのシンプル3を導入。基本料金を値上げしつつも、割引後の料金は据え置きにした。その意味で、シンプル3はより割引重視になったといえる。また、シンプル3はPayPayやPayPayカードとの連携も強化しており、決済回数に応じてデータ容量が増量される「PayPay使ってギガ増量キャンペーン」を実施中。好調な獲得を維持しつつも、サービスの利用を促進したい思惑が垣間見える料金プランになった。
映像や通信など、さまざまな付加価値をつけて料金をやや上げてきた大手キャリアに対し、MVNOはどちらかというと、ホワイトレーベル的なサービスが目立った。自身は黒子に徹して回線を提供しつつ、提携した事業者の価値をつけてユーザーに提供するというのがこのビジネスモデルだ。IIJの「JALモバイル」や、サービス全体をホワイトレーベルとしてのみ提供するミークモバイルが、これに当たる。IIJのJALモバイルは獲得も好調で、今後、こうした事業形態がMVNOの勝ち筋になっていく可能性もありそうだ。
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