NTT、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの宇宙戦略を解説 衛星や空飛ぶ基地局で「圏外」はどう消えるのか(1/2 ページ)

» 2026年01月19日 12時00分 公開
[金子麟太郎ITmedia]
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 日本の通信インフラが、従来の地上から宇宙や成層圏へとその領域を急速に広げている。2025年後半から2026年にかけて、国内主要4キャリアは、人工衛星や無人航空機を活用して上空から広範囲にネットワークを届ける非地上系ネットワーク(NTN:Non-Terrestrial Network)の商用化に向けた動きを加速させている。先行するKDDIに続く形で、他3キャリアも2026年に向けて商用化への動きを本格化させている。

 キャリア各社がNTNの商用化に向けて動く背景には、山間部や離島における圏外だけでなく、激甚化する自然災害へのレジリエンス(復旧力)という課題がある。地上基地局が物理的に損壊した場合でも、上空からの通信網が機能していれば、被災地での孤立を防ぐことが可能だ。そこで、この記事では、NTT、KDDI、ソフトバンク、そして楽天モバイルの4社の取り組みと、その思想に焦点を当てて解説する。

直接通信 宇宙 Starlink HAPS NTT、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイル

NTT:IOWNを核とした「分散と自立」による宇宙インフラの構築

 NTTグループは、宇宙ビジネスのビジョンとして「光通信を使った宇宙コンピューティングネットワーク」の構築を掲げている。その思想は、NTTが提唱する「分散と自立」という言葉に表れている。地上の通信網や海底ケーブルに加え、成層圏を飛ぶ無人航空機(HAPS)、低軌道衛星(LEO)、静止軌道衛星(GEO)という多層的な宇宙レイヤーを構築することで、ネットワーク全体を分散化し、一部が切断されても他で補完できる冗長性を確保する方針だ。

直接通信 宇宙 Starlink HAPS NTTグループは「分散と自立」を掲げ、光通信による宇宙コンピューティングネットワークを推進。HAPSや衛星等の多層レイヤーと地上網を統合し、障害時も互いに補完し合える冗長性の高い分散型基盤の実現を目指す

 NTTが他社との差別化要因に掲げるのが、インフラの自律運用だ。NTTは、衛星設備を他社から調達するだけでなく、自社で保有・運営することを目指している。具体的には、2026年からサービス化を予定しているHAPS事業、2027年以降に打ち上げる独自の観測衛星サービス、そして2028年以降に開始予定の光データリレー衛星など、主要なインフラを自前化する計画が進行している。

 HAPSとスマートフォンの直接通信については、Space Compass、NTTドコモ、日本電信電話(NTT)、スカパーJSATが早期実現に向けた開発を加速しており、2026年のドコモでの商用化を目指す。LEOについては衛星観測で4D地図やデジタルツインを構築、GEOについては光データ中継で高速通信の実現を目指している。

直接通信 宇宙 Starlink HAPS NTTグループが描く宇宙事業の具体策。HAPSは成層圏から通信を提供し、2026年のドコモでの商用化を目指す。LEO(低軌道)は衛星観測で4D地図やデジタルツインを構築、GEO(静止軌道)は光データ中継で高速通信を実現する。空と宇宙を網羅し、あらゆる場所へつながる次世代インフラの姿だ

 これらの構想を支えるのが、次世代光技術「IOWN(アイオン)」だ。現在の宇宙通信は無線が主流だが、周波数の枯渇や速度の限界という課題を抱えている。NTTは、地上で培った高速・大容量・低電力なIOWNの光チップを宇宙仕様に転換し、その試作品を公開した。従来の光通信端末の速度を数倍から数十倍に引き上げるこの技術は、宇宙通信を無線から光へとシフトさせるゲームチェンジを狙ったものだ。通信と観測データを統合し、リアルタイムで地上に伝送するプラットフォームを構築することで、安全保障やインフラ監視などの分野で革新的なユースケースを生み出すことが期待されている。

直接通信 宇宙 Starlink HAPS NTTは次世代光技術「IOWN」を宇宙へ展開し、無線から光通信への転換を図る。高速・大容量・低電力なチップで通信速度を大幅に向上させ、観測データのリアルタイム伝送により安保やインフラ監視等の分野に革新をもたらす方針だ

KDDI:Starlinkとの連携がもたらす即時性とエリアの全土化

 KDDIは、1963年の日本初の衛星通信実験から続く歴史を背景に、既存の強力なパートナーシップを最大限に活用した実用性と即時性を重視する戦略を取っている。衛星通信に関する会見などで「地上の電波がないところで、衛星通信は重要な通信手段になる」ことを繰り返し強調しており、その実現に向けて欠かせないのが米SpaceXの衛星通信「Starlink」との深い連携だ。

直接通信 宇宙 Starlink HAPS KDDIは1963年からの歴史を強みに、実用性と即時性を重視。米SpaceXの「Starlink」と深く連携し、地上の電波が届かない場所でも通信を確保する、衛星通信の社会実装を強力に推進している

 既にKDDIは、能登半島地震の被災地支援や、山小屋、長距離フェリーでの通信提供など、地上の電波が届かないシーンでの実績を積み重ねてきた。そして、2025年4月からは、スマートフォンと衛星が直接通信を行う「au Starlink Direct」を提供している。これは、通常のStarlink衛星よりもさらに地球に近い高度340km付近を周回する専用衛星を使用することで、市販のスマートフォンでの直接通信を可能にするものだ。

直接通信 宇宙 Starlink HAPS KDDIは能登震災や山間部等での通信実績を経て、2025年4月に「au Starlink Direct」を開始。高度340kmの専用衛星により、市販スマホでの直接通信を実現し、圏外エリアの解消を推進している

 このサービスにより、auのエリアカバー率は、従来の居住地域中心の約6割から、日本全国土へと事実上拡大される。提供価値としては、登山中のメッセージ送受信や、圏外での「緊急速報メール」の受信、さらには生成AI(Google Gemini)の利用やSNS投稿などのデータ通信が挙げられている。NTTが将来的な自前インフラの構築を重視するのに対し、KDDIはStarlinkという既存の完成されたシステムを自社網に深く統合することで、他社に先駆けて今すぐつながるという利便性を市場に提供している。また、その先には「月面5G」の構築を目指す「アルテミス計画」への参画も見据えており、地球上から月面へとカバレッジを広げる構想を描いている。

直接通信 宇宙 Starlink HAPS KDDIはStarlink活用により、圏外でのAI利用や緊急通信を即座に実現。将来構想重視のNTTに対し実用性で先行する。さらにアルテミス計画を通じた「月面5G」構築も見据え、通信圏を月面まで拡大する方針だ
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