「au Starlink Direct」はどこまで実用的? 24時間の船旅で分かった、衛星通信のリアルな使い勝手(1/3 ページ)

» 2025年08月27日 13時31分 公開
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

 8月の夏季休暇に、日本で最も遠い場所である小笠原諸島へ旅に出ました。東京から1200km以上の距離、博多よりも遠い小笠原諸島には空港がなく、アクセスする方法は船だけ。竹芝を11時に出発し、翌朝11時に到着する「おがさわら丸」に乗るのが唯一のルートです。

 丸1日、ちょうど24時間の船旅でずっと外洋を航行するおがさわら丸は伊豆諸島近海を通過する一部時間帯を除いて圏外の時間が続きます。

au Starlink Direct 東京、竹芝を出発するおがさわら丸。ここから24時間の船旅が始まる

 映画や電子書籍などエンタメコンテンツを事前ダウンロードしておけば、ネットにつながらなくても船旅を楽しめます。しかし、インターネットにどっぷり漬かった筆者は、どうにかしてネットへ接続できないか、考えてみました。

月額1650円のau Starlink Directを契約

 圏外エリアでインターネットにつながるには、衛星通信しかありません。というわけで、最初の選択肢に挙がったのがSpaceXのStarlinkです。とはいえ、専用のアンテナが必要なStarlinkを個人で船に持ち込むわけにもいきませんので、気軽にStarlinkを試せるサービスとして「au Starlink Direct」を契約してみました。

 au Starlink Directは2025年4月から提供しているauの衛星通信サービスです。スマートフォンと衛星が直接通信でき、5月からUQ mobile、povoユーザーや非auユーザーでも利用できるようになりました。auユーザーはオプションとして、それ以外のユーザーはauの専用回線を追加契約する形での利用になります。

 私は非auユーザーなので、新たにauを契約することになりました。auの公式サイトから新規契約することで電話番号が割り当てられ、その回線で衛星通信をする仕組みです。UQ mobileやpovoユーザーも新規契約が必要になります。

au Starlink Direct au Starlink Direct専用プランを契約、eSIMを選択して1時間もかからずに契約できた

 料金は月額1650円。衛星通信に加えて、auのデータ通信1GBとSMS送受信が無料で付いてきます。これは、auのSMS付きデータ回線に衛星通信オプションが付いていると考えると分かりやすいでしょう。

 2025年8月時点では2つのキャンペーンを実施しています。1つ目が、UQ mobileユーザー向けの月額利用料割引で、UQ mobileのトクトクプランとコミコミプランバリュー契約者が同じau IDで申し込んだ場合に、毎月1100円のキャッシュバックによって月額料金が実質550円になります。

 2つ目は初期契約手数料のキャッシュバックで、au IDにひも付くau PAYを設定することで初期契約手数料3850円がau PAY残高としてキャッシュバックされます。

 筆者はおがさわら丸が出航した後、東京湾を航行している最中にau公式サイトから申し込んだところ、20分ほどたった浦賀水道を通過したあたりで無事開通し、スマートフォンでStarlinkとの接続ができる状態になりました。

衛星通信で利用できるサービスは乏しい

 au Stalink Directを契約すれば、5Gネットワークのように何でもできるわけではありません。

 2025年8月時点でできることは以下の通りです。

  • テキストメッセージの送受信
  • シンプルAIチャットの利用
  • 位置情報の送信
  • Gemini in Googleメッセージの利用(Androidのみ)
  • 画像・動画などファイルの送信(Androidのみ)

 音声通信やデータ通信など普段は使える機能が大きく制限されています。山岳遭難など緊急時の通信やメッセージのやりとりや、圏外エリアでのAI利用などを想定しているのだと思います。

 筆者が利用しているiPhoneは、SMSとシンプルAIチャットの2つに対応しているので、衛星への接続とこれらのサービスを試してみました。

衛星とつながれば普通に通信できる驚き!

 陸地の基地局との通信ができない外洋に出た頃に、空がよく見える船上のデッキに移動したところ、早速アンテナピクト表示が「SpaceX-au 衛星」になり、接続できました。その状態でSMSの送信ができました。

au Starlink Direct iPhoneのメッセージアプリで位置情報とメッセージの送信をする様子

 使い勝手は、陸上でSMSを送付するのと全く同じで、文字と位置情報の送信が可能です。タイムラグは1分以内とリアルタイムではないものの、手紙のようにやりとりするには十分実用的だと感じました。7月中旬のアップデートで衛星との接続が2分から30秒に短縮されたと公式発表されています。コミュニケーション手段としては十分実用的だと思います。

 auが提供するシンプルAIチャットも利用してみました。

au Starlink Direct シンプルAIチャットを使う様子。画像がないので使い道は限られるが圏外でもAIサービスが利用できる

 「小笠原航路で見られる野生動物を教えて」「小笠原での食事プランを立てて」といったキューを投げたところ、これも30秒程度で回答が届きました。

 Androidスマートフォンのau Starlink Direct対応機種では、これに加えて画像の送信も可能なので、今の船内の写真を家族や友人に共有するといった使い方もできますし、「この野生動物は何?」といった画像認識を使ったGeminiの活用も可能です。もちろん圏外の山岳エリアでも同様の通信は可能でしょう。

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2025年12月07日 更新
最新トピックスPR

過去記事カレンダー