質疑応答では、なぜ億単位の不正取引が、長年に渡って見過ごされていたのかについての質問が相次いだ。特別調査委員会 委員長 弁護士の名取俊也氏は「グループ全体として、事業に対する知見が不十分だった」ことを根本要因に挙げる。「a氏らによって巧妙に組み立てられた架空循環取引に対して、それぞれの(グループ内)企業で疑問を持った人もいたが、知見の不足も相まって納得してしまったことが重なったと理解している」
広告形態がアフィリエイトだったことも、発見のしづらさにつながってしまったようだ。「役員の方々が、実際にどのように広告が配信されているかの知見が徹底的に不足していた」と名取氏。特別調査委員会 委員 弁護士の辺誠祐氏は「ジー・プランは広告主や掲載媒体と直接やりとりしているわけではなく、仲介するところで売り上げを上げていた。成果物の直接の確認が難しく、a氏とb氏でそこの説明が巧妙になされていた」と補足する。
ビッグローブの流動資産が増えていることに対して違和感はなかったのか、という問いに対し、最勝寺氏は「確認は可能だったが、実際、われわれが検証していたのはビッグローブ全体で、広告事業を特化して見られていなかった。ビッグローブの広告事業がなぜ伸びているのか、これまでと少し違うところに危機を察知して、より突っ込んで指摘できなかったことには反省している」と述べる。
架空循環取引には21社の代理店が関与していたが、これらの代理店は架空循環取引だと認識していたのか。この点について、「ヒアリング調査では、いずれの取引先も、不正取引だと認識していなかったとの説明だった」(名取氏)という。ただし、メールやSNS上のやりとりなど、全ての証拠を入手できたわけではなく、「提出を拒まれたこともあった」(辺氏)という。「代理店の認識を確定的に評価するのは適切ではないと考え、調査報告書には明記していない」(辺氏)が、不正と認識していた代理店がいた可能性は否定できない。
「民事裁判、刑事告訴の中で、その点の事実がより明らかになってくると調査委員会は考えている」(辺氏)
「21社の取引先のうち、架空循環取引の認識があったという回答はなく、商流に入ることで手数料が入ると認識されている。しかし、一部の代理店は、架空循環取引の認識がある可能性がある。ここの事実認定は司法の場でと考えている」(松田氏)
本事案はa氏の焦りが発端だとされているが、広告代理事業のノルマに対して、上司や親会社が過度なプレッシャーを与えていた事実はなかったのか。「非合理な目標を設定している、ハラスメント的な追及がなされるというときは会社の問題として捉えられるべきだが、今回はそういった事情は確認されていない」(辺氏)
またa氏は、「架空循環取引の関係者や自身の私的な利益のために本件架空循環取引を行ったものではないと述べている」(報告書)という。
ただし、ジー・プランの一部の上流代理店の代表取締役社長からa氏に対して、2023年9月から2025年12月までに約3000万円が飲食代などとして交付されていたことも判明した。架空循環取引によって、a氏は結果的に莫大(ばくだい)な利益を得ることになり、こうした状況に満足してやめることができなかった、とも調査委員会は評価している。
特定の個人に対して、巨額の飲食代が交付されるというのは、通常のビジネスマナーや接待の範囲を明らかに超えている。これは単なる親睦ではなく、不正取引を継続させるための便益供与とも解釈できる。
辺氏が述べていた、証拠の提出を拒んだ代理店についても、知られたくない内情、つまり不正の認識があったこと示唆している。当該の上流代理店が架空循環取引を認識していた可能性は極めて高い。手数料収入を優先し、商流の全体を把握しようとしない慣行が、架空循環取引を支える結果となった。
このように、代理店の内部告発や疑念の声が表面化しなかったことも、長期わたる不正継続の要因ではないだろうか。今後の民事裁判や刑事告訴を通じて、これら代理店の法的責任がどこまで追及されるかが焦点となる。
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