では、ソフトバンクがNatural AI Phoneを独占販売する狙いはどこにあるのか。同モデルのターゲットは、「基本的に、イノベーター層かアーリーアダプター層だと思っている」(足立氏)という。先進的な機能や端末にいち早く飛びつくユーザーが、想定しているユーザー像だ。足立氏は、「AIエージェントにどのような使い方があるのか、われわれもユーザーも学び、それをフィードバックしていただきたい」とも述べており、実験的な位置付けであることがうかがえる。
販売台数の見込みも、「売れ筋のものと比べると少ない」としており、「チャレンジングな商品であることは社内や営業幹部にも説明している」(同)という。一方で、狙いはサブ機ではなく、メインのスマホとして使う1台になることだ。足立氏は、「まず使っていただかないと、(AIエージェントの)よさが分からない部分がある。新しい製品がお好きな方に買っていただき、メイン機として使えるかどうかをぜひ試してもらいたい」と話す。新規やMNPの実質価格を2年間月額1円にしているのも、こうした意気込みの表れといえる。
実際、エージェント的なAIを搭載するのがスマホのトレンドになりつつあるのは事実だ。中国では、ZTEがTikTokでおなじみのByteDanceと提携し、AIエージェントを搭載した「nubia M153」を発売。3月にスペイン・バルセロナで開催されたMWC26 Barcelonaにも出展し、話題を集めた。また、米スタートアップのAGIは、AIがアプリの操作を代行するアプリを出展。同社はQualcommと提携し、デバイス上での処理を向上させていくほか、メーカーにも採用を求めているという。
また、Brain Technologies自身も、2024年のMWCで独ドイツテレコムとNatural AIのコンセプトを披露している。ソフトバンクも、いち早くこうした流れに乗ったというわけだ。AIが利用するサービスを決めるとなると、アプリのエコシステムが大きく転換する可能性もある。そのときに備え、グループ企業のLINEヤフーも交えて準備を進めているとの見方もできる。
もっとも、GoogleやAppleといったプラットフォーマーも同じ方向を目指している。Googleとサムスン電子は、「Galaxy S26」シリーズにアプリをバーチャルウィンドウで自動操作する機能をβ版として搭載。現在は英語と韓国語のみだが、一部アプリを、自然言語の命令だけで操作できるようにした。
MWCで取材したGoogleのAndroid Platform&Pixel Softwareのバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャー、シーン・チャウ氏は「次期Androidでは単なるOSから『Intelligent System』のようなものへの移行に焦点を当てている」と語っており、Androidの中でこうした機能が拡大していく可能性は高い。投入が大幅に遅れているが、Appleが進化させようとしているSiriも、アプリをまたがって動作するという意味ではエージェント的な機能といえる。
ユー氏は、「(Googleなどの)ハイパースケーラーは、多くの場合、エコシステムを構築して収益を上げているので、その維持管理が必要になる。イノベーションのジレンマで、既存のアプリのエコシステムに(エージェント的なAIを)載せることはできない」と見ているという。同社には「負の遺産」(同)がないというだけに、いち早く機能をアップデートし、対応サービスを拡大することで違いを打ち出していく必要がありそうだ。
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