中国のスマートフォンメーカー各社がiOSに似たUI/UXを採用する背景には、「見賢思斉(優れたものから学ぶ)」という中国で古くから伝わる考え方がある。これは単なる模倣ではなく、さまざまな分野の優れた要素を取り込みながら、独自の強みで差別化を図る「賢い模倣」と解釈できる。
スマホのハードウェア面では、他社製品のコンセプトを踏襲しつつも、カメラやバッテリーといった得意分野を進化させる手法が目立つ。例えば「iPhone 15」を意識した「Xiaomi 15」では、より高性能なディスプレイ、ライカ共同開発カメラ、大容量バッテリー、急速充電対応といった要素で差別化を図った。製品としては、お手本にしたAppleやSamsungと比較しても互角以上の性能を備える。
これはOSの操作系も同様だ。世界中で支持を集めるiOSを手本としながらも、テーマストアによるカスタマイズ性の高さ、ゲーム最適化、省電力性、滑らかなアニメーション動作などで優位性をアピール。OPPOのColorOSのように性能で劣る「廉価端末でも快適に動く」という、iOSデバイスにはないアピールポイントを備える例もある。
操作性という点では、Wi-FiやBluetooth、画面の自動回転といった端末操作を格納するコントロールセンターのデザインや操作性が分かりやすい。中国メーカーのAndroidスマホは、Android OSの標準操作ではなく、通知とコントロールセンターを分けたiPhoneに近い操作性となっており、この部分では瓜二つというレベルに仕上げている。デザインもOPPOのColorOSやXiaomiのHyperOSはかなり近いデザインになっており、さまざまなスマホを使った身としても「よく似ている」と評価したい。
興味深いのは、各社がiOSに寄せた結果、意図せず「iPhoneから乗り換えても違和感が少ない」という評価を獲得したことだ。世界中で親しまれているiOSの操作感を踏襲することで、膨大なiPhoneユーザー層を潜在的な顧客として取り込むことが可能になった。このように乗り換えのハードルを下げることは、単なる模倣の副産物を超えて、市場戦略上の重要な価値を持つようになっている。
こうした操作感の共通性を土台として、近年Android端末とApple端末の高度な連携が進んでいる。中国メーカー各社がここ数年力を入れているのが、Apple製品との相互運用性の強化だ。Apple端末側に専用アプリを入れる必要はあるものの、AirDropといったiPhoneの機能を部分的に取り込む動きが加速している。
これは単なる乗り換え促進にとどまらず、Appleエコシステムの一部を置き換える戦略でもある。例えばXiaomiのスマホとiPadやMacBookの組み合わせでもスムーズなファイル転送が可能で、既存の資産を無駄なく使えることをアピールしている。
より踏み込んだ例として、vivoの一部端末ではApple WatchやAirPodsと接続できる機能を搭載。従来、iPhoneからAndroidスマホに乗り換えるとApple製周辺機器の使い勝手が大幅に悪化していたが、これらもAndroidスマホで快適に使えるとなれば、乗り換えの大きな後押しとなるポイントだ。
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