私たちの生活に欠かせないスマートフォン。しかし昨今、メモリ価格の高騰や円安の影響により、端末価格は数万円規模での値上げが相次ぎ、新品にはもはや簡単には手が出せない状況となりつつある。この「スマホ高騰ショック」は、個人消費者以上に、ビジネスの現場においてデジタル化(DX)を推進しようとする企業にとって極めて深刻な障壁となっている。
現在、現場のペーパーレス化、電子カルテの導入、モバイルオーダーやPOSレジの活用など、あらゆる産業でDXが叫ばれており、業務用のスマートフォンやタブレットは「一人一台」の必須ツールとなっている。しかし、数十台、数百台の新品端末をまとめて調達しようとすれば、その初期費用は莫大(ばくだい)なものになる。
この強烈なジレンマを解消する手段として、法人向けの中古スマートフォン市場がかつてないほど活況を呈している。事実、2022年度から2025年度にかけて、法人利用の端末販売台数は約3.6倍へと急激な成長を記録した。世界的なメモリ価格の高騰による新品端末の価格上昇が、企業の「中古シフト」を強力に後押ししている格好だ。
しかし、単に「中古を買って初期コストを抑えれば万事解決」とはいかないのが、企業向けIT機器の恐ろしいところである。端末の貸与台数が増えるにつれて、企業は新たな「管理の壁」に直面する。
Belongが6月10日に発表した「社用スマートフォンの管理に関する実態調査」によれば、企業が社用スマホを運用する上で抱える「三大課題」として、「紛失・盗難時の情報漏えいリスク(43.8%)」「データ通信料や遊休回線の把握漏れによる無駄なコスト(41.3%)」「従業員からの問い合わせ対応によるヘルプデスク業務の圧迫(40.8%)」が明確になった。
中でも特に深刻なのが、退職者の返却端末や予備機として、社内に放置された「眠るスマホ」の存在である。驚くべきことに、実に84%以上の企業で使っていない社用スマホが社内に眠ったままになっているという。
さらに、約4社に1社(23.5%)では、不要なスマホを「貸与した社員がそのまま持っている(デスクに入れっぱなしにしている)」というずさんな実態も明らかになった。
使われていない端末が個人の手元や社内に放置されている状態は、目に見えない通信コストを垂れ流すだけでなく、重大な情報漏えいリスクを常にはらんでいる。別の設問では、84.1%もの企業が「保管・処分に伴うセキュリティリスクへの対策が必要」と回答している。これほど多くの企業が危険性を認識しつつも、現場では有効な手が打てていないというジレンマがあるのだ。
こうした課題は端末の貸与台数が増えるほど顕著になり、「100〜299台」の規模になると情報漏えいリスクや遊休回線コストへの対応が顕在化し、「300台」を超えると終わりのないヘルプデスク業務が管理部門をパンクさせるという明確な傾向が示されている。
この「初期費用は抑えたいが、管理の手間とセキュリティリスクは抱えたくない」という企業のニーズに対する最適解として、今急速に支持を集めているのが、中古スマートフォンの「レンタル」という運用モデルだ。Belong 法人事業部門長の内田弦希氏によれば、「レンタルという選択肢を選ぶ企業が急速に増えてきている」そうだ。
内田氏が、同社の法人向けサービス「Belong One」における2025年の問い合わせ実績データを分析したところ、レンタルの需要が前年比1.4倍に伸長し、購入の問い合わせ件数と比較しても2.4倍に達していることが明らかになった。
中古端末を購入する場合、コストを少しでも下げるために安価で古いモデルが選ばれがちだが、レンタルであれば初期費用を平準化できる。実際、同データから算出された「人気機種ランキング」を比較しても、レンタルであればiPadなどのタブレットや、iPhone 15 Plusといった比較的新しい高機能モデルであっても現場に支給しやすくなるという大きなメリットがある。
その効果と需要は既にさまざまな業界へ波及している。実際の法人からの問い合わせ業種ランキングを見ると、情報通信業(13.4%)や製造業(13.2%)が上位を占める一方で、医療・福祉(10.2%)や建設業(9.2%)といった現場仕事が中心の業界も上位に食い込んでいる。
これまで中古端末に縁が遠かった広告業(前年比7.1倍)や建設業(同3.4倍)などでも、こうした恩恵を求めて導入が急増しているという。
内田氏は実際の導入事例について、「ある医療法人(東香里病院)では院内の連絡用端末をPHSからスマホへ切り替える際、中古スマホのレンタルを活用することで、新品購入時と比較して約956万円もの予算削減に成功した」と語る。
また、「全国展開する大手飲食チェーン(サイゼリヤ)では、POSレジ用端末として月額1000円程度の低コストでタブレットをレンタル導入し、故障時のサポート窓口も外部に一本化したことで、本社の集計・管理業務を75%も削減するという劇的な効率化を実現している」と、その具体的な成果を強調した。
さらに、自動車販売大手の大阪トヨペットでは、車両撮影用として通信契約が不要な端末単体のレンタルを活用。全店舗への短期配備とセキュリティ確保を両立し、撮影業務の工数削減に成功した事例もあるそうだ。
デジタル化の波は止まらず、端末価格の高止まりも当面続くと予想される。企業が自社で大量のIT資産を「所有し、自前で管理する」時代は終わりを告げようとしている。「単に端末の提供にとどまらず、法人様のDXに合わせた運用そのものを丸ごとご支援していきたい」と内田氏は力を込める。
これからのビジネスシーンでは、端末の調達から日々のヘルプデスク対応、故障トラブル時の交換、そして安全な回収処分までを外部サービスに委託できる「MMS(Managed Mobility Service)」や「MDM(Mobile Device Management)」を組み合わせた「中古×レンタル」が、企業のDXを推進する新常識となるだろう。
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