これに同意する評者もいる。ジェームズ・ゴスリング氏のブログにコメントしているフレデリック・オルソンと名乗る人物は以下のように語っている。
わたしはソフトウェア特許を支持していない。だが、GoogleはJavaの精神である互換性を踏みにじった。Googleは、Javaランタイムと非互換のDalvikを意図的に作り出し、互換性テストとライセンス料を免れようとした。GoogleはJavaの利点(開発者のマインドシェア、既存のフレームワーク、優れたツール群)を、互換性やコストを気にせずにつまみ食いする目的でDalvikを開発した。Dalvikで稼働するAOP(Aspect志向プログラミング)かモックアップツールを使ってみれば分かる。OracleがGoogleを提訴した理由は間違っているかもしれないが、Googleは驚いてはいないだろう。
ゴスリング氏のブログにコメントしたアダム・ロックと名乗る人物は次のように言う。
だが、DalvikがJVM(Java仮想マシン)だとされたことはなく、Googleは(おそらく法的な理由で)そう言うよう心を砕いた。プログラマーはJava言語を使ってプログラミングするかもしれないが、成果物は明らかにJavaではないものだ。わたしは、GoogleがJVMを使わなかった要因は多数あると思うが、その中にはライセンシング、金、性能、SunとOracleが必要な機能の提供を拒否する可能性、プラットフォームを“所有したい”、少なくともSunにプラットフォームに関して口出しされずに済むという保証が欲しいといったことが含まれる。現段階では、わたしはGoogleはおそらく同社とAndroidにとって正しい決断をしたと思う。わたしはJavaを愛しているが、まだ携帯電話のまともな実装は見たことがない。この訴訟はただの領土争いだというのがわたしの印象で、GoogleがSunとOracleをライセンス侵害で反訴しても驚かない。最終的には例によって、金のやりとりを伴うクロスライセンス合意で落着するだろう。
また、米調査会社IDCのアプリケーション開発プログラム担当ディレクターであるアル・ヒルワ氏は、Java実装「Apache Harmony」とDalvikの関連がこの訴訟の争点であると指摘する。同氏はeWEEKに次のように語った。
興味深いことに、Androidの重要なコードの1つであるDalvik JVMは、Apache Software Foundation(ASF)のJava SE実装Harmonyに基づいている。Harmonyの承認とTCK(Test Compatibility Kit、互換試験キット)をめぐっては、長い確執が続いている。今回の訴訟で指摘されている侵害行為がHarmonyにも及んでいるかどうかははっきりしない。GoogleがDalvikの開発にJavaのコードを使ったことに関してSunが騒ぎ立てるだろうが、Androidの成功が確実になるのを待っていたとみる向きも多い。これは典型的な知財保護訴訟だが、Android市場と端末メーカーのAndroid採用に深刻な影響を与えるだろう。基本的に、Oracleは獲得したJavaの資産を経済的に利用したがっているようだ。Googleは、Apacheライセンスの下でAndroidをオープンソースとしてリリースしている。このライセンスでは、ベンダーが独自製品を開発するためにコードを追加することを許可している。
データベース「Apache CouchDB」プロジェクトの開発者であるダミアン・カッツ氏は、同データベースをAndroidに移植したことに関するeWEEKのインタビューの中で、Androidのオープン性をたたえ、「AndroidをApache CouchDBの最初の移植先携帯プラットフォームに選んだのは、Androidが非常にオープンだからだ」と語った。
だが、Googleが2007年にAndroidとDalvikの計画を発表した当初、その内容はSunの多くの技術者の神経を逆なでした。当時Sunの副社長兼Sun Fellowだったゴスリング氏もその1人だ。Sun買収後、同氏はOracleに移ったが、4月に同社を退いている。
ゴスリング氏は、2009年6月に開催されたJavaOneの会場で行ったeWEEKのインタビューで、GoogleとAndroidに関して次のように語った。
われわれがライセンス料を課す理由の1つは、互換性テストを行い、例えばGPS APIなどが統一されるよう、複数の端末メーカー間で話し合いを持つための組織を運営していることだ。一方、Androidの世界は、責任を持つ大人がいない状態になっている。Android端末のメーカーは好き勝手なことをしている。つまり、このままでは混沌となるだろう。このやり方では多数の端末が登場するだろうが、めちゃくちゃになる可能性もある。わたしの見たところでは、おそらくめちゃくちゃ以上のことになりそうだ。
だが、Sunは裁判を起こさなかった。ゴスリング氏が示唆したように、恐らく企業文化によるのだろう。Sunは2006年にJavaの大部分をオープンソース化した。
Googleを特許侵害で提訴するのはSunのDNAにそぐわないのかもしれないが、同社はかつて米MicrosoftをJavaの著作権侵害で提訴し、10億ドル以上の賠償金をせしめている。
ゴスリング氏はこのいざこざに巻き込まれたくないと言っている。だが、すぐに和解にこぎつけられない限り、そうはいかないだろう。ゴスリング氏に出廷のお呼びが掛かれば、同氏は少なくとも1人は“なじみの”顔を見ることになるだろう。IT業界のスーパー弁護士、デビッド・ボイス氏だ。Oracleはこの訴訟に当たって法律事務所Boies, Schiller & Flexnerを雇った。ボイス氏は、米司法省がMicrosoftを独禁法違反で提訴した画期的な訴訟で司法省側の主任弁護士を務めた。その裁判で、ゴスリング氏は司法省側の証人だった。ボイス氏は、直近ではsalesforce.com対Microsoftの係争でsalesforce.com側の弁護士を務めた。この訴訟は和解に至っている。
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