このようにATOKを利用することによって、非常に多くのメリットが得られるのだ。とくに前項で述べたように、わざわざ単語登録をする必要がないのは効果が大きいだろう。これらの機能がATOKの変換効率の良さを加速するようになっていて、私はとても気に入っている。
入力中の単語登録は便利だが、副作用もある。よけいな単語が登録されてしまい、変換時に削除したいと感じることがままあるのだ。その点ATOKでは、「Ctrl」+「Delete」キーを押すと、変換中の単語をワンタッチで削除できるようになっている。単語の自動登録とワンタッチの単語削除は、片方だけではダメで、両方が揃って機能を発揮すると言えるだろう(図5)。
こうしてユーザー登録した辞書データは、とくに筆者のようなライターにとっては「商売道具」と言える。嬉しいのはATOK Syncと呼ぶ機能があり、インターネット経由でどのPCからも辞書データの同期が行えるようになっていることだ。この機能の詳細については割愛するが、これも筆者がATOKを手放せない大きな理由だ。
また、豊富な専門用語変換辞書や連携電子辞典、最新のオプション辞書が用意されているのもありがたい。ATOK 2006の発売に合わせて「広辞苑 第五版 for ATOK」がリリースされたほか、「goo流行語辞書 for ATOK 2006」がATOKのWebサイト「ATOK.com」から無償でダウンロードできる。「ちょいワル」や「エチカ表参道」など、gooで検索された最新の流行語や時事用語を推測変換候補として利用できるようになる省入力データだ。
最終的に“同じ日本語”が入力できればよいのだから、多少の手順の違いや付属機能の違いは問題にならないという意見がある。しかし、これは間違いだろう。日本語入力システムで大切なのは、「気持ちよく文章が入力できる」ということだ。
筆者は文章を書く仕事をしているので、単位時間あたりに作成できる文章量がそのまま収入につながる。いや量だけではない。締め切りまでの限られた時間の中でどのくらい密度の濃い文章を作成できるかは、とても重要だ。
普通のビジネスマンでも、パソコンに向かっている時間の多くは、日本語を入力しているのではないだろうか。考えたり、準備をしたりする時間でも、結局、日本語入力システムを使ってメモをとっているということも多い。
文章作成中のほんのわずかの差でも、トータルすれば確実に違いが出る。その意味からも、いったん覚えた操作を覚え直すのは大きな損失となる。とくにフレッシュマンには、大げさでなく、「これから先の長い人生を共にするツール」なのだから、しっかりと見極めて選んでほしいと思う。
松井幹彦 Mikihiko Matsui
年老いた(?)ライター。初代の一太郎(正確にはjX-WORD太郎)からのユーザーだが、ATOK、MS-IME以外に、松茸、Katana、VJE、EGBRIDGE、WXなどさまざまな日本語入力システムを利用してきた。著作は「金持ちAさんになるエクセルの賢い使い方」(技術評論社)、「Excelのビジネス成功法則」(毎日コミュニケーションズ)など。Webサイト「OpenOffice.orgユーザーのためのMicrosoft Office互換性研究室」を主宰。渋谷のロックバー「GRANDFATHER'S」のオーナーでもある。
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制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2006年4月19日