第5回 プリンタ6モデルの印刷品質を比較検証するダイレクト/単機能プリンタ06年モデル徹底攻略ガイド(2/2 ページ)

» 2006年12月15日 11時20分 公開
[榊信康,ITmedia]
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検証を終えて――A4ダイレクト/単機能プリンタ2006年モデルのベストバイは?

 本特集では5回にわたりA4ダイレクト/単機能プリンタをチェックしてきたが、最後にこれまでの検証結果を総括する。第2回で取り上げたミドルハイ、ミドルレンジというクラス分けで、各モデルの魅力に迫ってみたい。

ミドルハイのダイレクト機は大幅に進化したPM-D870がおすすめ

 予算が3万円以内のミドルハイクラスとしては、エプソンのPM-D870、キヤノンのiP6700D、日本HPのD7630を取り上げた。いずれもメモリーカードスロットと液晶モニタを備えたダイレクトプリンタだ。ダイレクトプリンタの場合は、印刷性能に加えて、操作性や機能にも留意する必要があるだろう。これらのいずれも隙なく仕上げているのは、PM-D870とP6700Dだ。インタフェースの指向は異なるが、2製品とも多彩な機能を簡便に使用できるように工夫しており、甲乙つけがたい。無論、画質も不満のないレベルに達している。

 それでもどちらかを選ぶとすれば、今回はPM-D870を推したい。画像処理エンジンREALOIDの新搭載により、サイズの大きな画像データでもレスポンスよく扱えることが選んだ理由だ。PCプリントに匹敵する画質、印刷中でも次の操作が行える利便性など、REALOIDがもたらしたメリットは数知れない。まさにPCいらずの本格的な運用が行える。個人的には、オートフォトファイン!EXによる作り込んだ色補正にはなじめないが、写真の意図を忠実に再現して印刷したい場合はこの機能をオフにできるので、使い分ければ問題ないだろう。

 iP6700Dは手堅い作りだが、昨年モデルiP6600Dのマイナーチェンジに留まっているため、PM-D870の新型プリントエンジンと新型画像処理エンジンによる勢いに押しきられた格好になった。それでも画質、速度、操作性、そしてコンパクトなボディと、全体的なバランスのよさはさすがだ。2系統の給紙機構と自動両面印刷機能は利便性が高いので、これらの機能を重視するならば、積極的に選ぶだけの価値がある。

 D7630は、タッチパネル式の液晶モニタとキオスク端末風メニューのHP Photosmart Expressを組み合わせることで、直感的な操作を実現しているのが特徴だ。しかし、階層化されたメニュー構造と、他機種より少ないダイレクト印刷の機能は改善の余地があるだろう。その一方で、ヘッドクリーニング時の無駄なインク消費をなくすAAM(アクティブ・エアー・マネジメント)機構には感嘆した。各種テストで他社のインクがグングンと減る中にあって、平気な顔で印刷している。印刷のスパンが開けば、効果は一層上がるだろう。安心して普段使いできるプリンタだ。

PM-D870:画像処理エンジンREALOIDの新搭載により、PCからの印刷と同じような感覚でのダイレクト印刷を実現したのが魅力だ


iP6700D:ダイレクト機にしてはコンパクトな本体と、合計300枚セットできる2系統の給紙機構、自動両面印刷は大きな強みだ


D7630:タッチパネル式の液晶モニタによる直感的な操作性は見逃せない。高速かつ経済的なプリントエンジンにも要注目だ


ミドルレンジクラスは三者三様の魅力あり

 予算2万円以内のミドルレンジクラスには、エプソンのPM-G850、キヤノンのiP4300、日本HPのD7160を挙げた。このうち、PM-G850とiP4300はメモリーカードスロットと液晶モニタのない、いわゆる単機能プリンタで、D7160はメモリーカードスロットと液晶モニタを備えたダイレクトプリンタとなっている。どのモデルもほかにはない長所があるため、目的に応じて選ぶとよいだろう。

 まずは単機能プリンタだが、これは画質にウェイトを置くべきだ。それでいて、印刷速度が速ければ言うことはない。画質は、写真印刷でPM-G850、黒文字の締まりではiP4300が有利だ。印刷速度は、設定によって順位が異なり、両者が肉薄している。

 このうち、めざましい進化を遂げたのはPM-G850だ。複合機からの流用エンジンと侮っていたが、印刷速度は大幅に向上している。ここ数年、エプソンのカラリオプリンタは速度向上が最重要課題だったわけだが(多数のノズルを搭載したハイエンド機は除く)、今年はようやく結実した感がある。ノズルを増加することなく、ここまでの高速化を実現したことは賞賛したい。惜しむらくは、各色180ノズルを備えた最高峰のプリントエンジンが、複合機のフラッグシップモデルPM-T990とPM-A970にしか搭載されていないことだが、そのぶん安価なのだから納得できる。

 iP4300は、PM-G850ほどのインパクトはないが、ホビーとビジネスの両方で使える懐の深さがある。高速化したプリントエンジン、ランニングコスト、顔料ブラックインクの採用が見どころだ。ダイレクト機のiP6700Dと同様、大容量の2系統給紙機構と自動両面印刷機構を備えているのは、大きなメリットと言える。ボックス型のフラットなボディデザインに引かれる人もいるだろう。

 残るD7160は、D7360のタッチパネルを除いたことで使い勝手のよさでは少し見劣りしてしまう。しかし、日本HPのウリとするSPTプリントエンジンやAAMはしっかり搭載している。それでいて、他社の単機能プリンタのミドルレンジモデルを下回る価格帯で、購入できるのは非常に魅力的だ。コストパフォーマンスに優れたダイレクトプリンタを求めるなら、有力候補に挙げられる。

PM-G850:新しい染料6色プリントエンジンにより、写真画質の美しさと印刷速度の両立を実現。昨年より大幅に進化した


iP4300:顔料ブラックインクを含む5色インク構成がポイント。写真にもテキストにも対応できる汎用性の高いプリンタだ


D7160:低価格ながらメモリーカードスロットと液晶モニタを搭載。STPプリントエンジンとAAMも備えており、買い得感がある


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