ホームユースのトレンドを作るVAIO山田祥平の「こんなノートを使ってみたい」(2/2 ページ)

» 2008年02月05日 11時00分 公開
[山田祥平,ITmedia]
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携帯電話ユーザーがPCを志向する?

──携帯電話のユーザーが携帯に最適化されたコンテンツに不満を感じ始めているということになりますか。

NECの「Lui」に対するソニーの回答ともいえるのが、CESで参考展示されていた開発中のTP1風ホームサーバだ

黒岩氏 携帯やスマートフォンのユーザーが一番やりたいことは、PC向けのメールサービスが使いたい、PC向けのWebコンテンツが見たい、PC向けの音楽サービスを利用したい、といったポイントに集約されます。みんな“PCが”が枕詞なんですね。これは、ユーザーのフィードバックから明確に出てきている事実です。

 コンシューマー向けPCの新しいトレンドは、PCのアーキテクチャで作られます。でも、(ソニーが開発するVAIOには)究極の方向性を持たせるように意識しています。“DLNA”などの環境ができたことで、個人の住宅でもサーバの必要性が高まるはずです。欲しいコンテンツはビューアで見る。個人が家庭で使う用途ならそれで十分ですね。このような環境で本当に必要なのは“利口”なサーバとその利口なサーバに対応できるビューアです。だから、NECが「Lui」で提案している新しいデジタルライフに対するアプローチは正しいと思います。VAIOとしても、そこをどう展開していくかを考えなければなりません。

 現時点で不満を感じさせる要素があるとすれば、それはPCの平均単価かもしれません。(VAIOのバリュークラスA4ノートPCでは)すでに15万円を切ってきているのですが、モバイル向けのノートPC(VAIO type Sやtype T、そしてtype Uも)はまだそこまで安くなっていません。ユーザーが比較的気軽に手の届く価格に設定することが重要かもしれませんね。

──気軽に買える価格のモバイルPCを2台目、3台目のPCとして購入してもらうという方向性ですか。

VAIO MusicBoxは、音声解析技術「12 TONE ANALYSIS」によって、メロディ、コード進行、テンポ、音符の数などから特徴を判断して、音楽データの種類を分類する機能を持つ

黒岩氏 そうですね。iPodが、サードパーティ製のケースでアピールしているように、着せ替えの需要は認識しています。そのためにも、単価が下がってこないとどうにもなりません。その上で、その人が欲しいデザイン、その人が欲しい色をそろえることができればステキだと思います。

 今は「どこのメーカーのPCでも同じだ」といわれることが多いので、そこをなんとかするのが、VAIOのチャレンジです。いかに情報家電としてやさしいものにするかが課題です。VAIOに付属するアプリケーションでは、バックエンドでインテリジェントエンジンが動いていることで、ユーザーがやりたいことを自動化してやってあげるようなものが増えています。それがソニーの差異化です。「VAIO Music Box」などで、コンテンツが持っているメタデータを有効活用したり、個人がよく見ているコンテンツを分析し、それとマッチしたコンテンツをインターネット上のデータから引っ張ってくることで、ユーザーがそれまで存在を知らなかったコンテンツを提示します。それがVAIOならできるんです。まるで“プライベートAmazon”ですね。業界の中でも同じようなことを考えているはずですが、それを最速でやるのがソニー流だと考えています。

未来のノートはクラムシェル? それとも……

──ノートPCの形状はこれからも変わることはないのでしょうか。

HSDPAに対応したVAIO type Sに用意されたアンテナ。WiMAXがサービスインしてLTEが本格化したときに、モバイル向けノートPCの価値は大きく変わるとVAIO開発チームは予測している

黒岩氏 コンシューマーの市場で、クラムシェルの必要性は必ずしも高くないとは思います。ですから、そこは変わっていくかもしれませんね。そのときはPCの機能をフルで持たなくていいかもしれません。クラムシェル(が求められるのは)はやっぱりビジネス用途でしょう。ビジネス市場はこの形態がずっと続くはずです。それがベストですから。でも、コンシューマーでは変わる可能性が高いかもしれません。

 もっとも、高校生や大学生が自分専用のPCを持ち歩くようになったら、学校で毎日使うPCの形態もクラムシェルが主流でしょう。今のところキーボード以上の入力デバイスは出てきていないですから。

 OSが動いていてアプリケーションを動かすという基本的なPCの操作スタイルには、多少の変化が起こり、SaaS(Software as a Service)がトレンドになっていく可能性もあるとわれわれは認識しています。マイクロソフトなら「Windows Live」のサービスですね。そこではWebブラウザを立ち上げることが、物事を起こすきっかけになるわけです。そして、そのためには、安くていつもつながる太いネットワークインフラが必要です。そこのところは、5年先くらいに実現しそうな兆しが見えています。

 なぜ、5年先かというと、WiMAXがサービスインしてLTE(Long Term Evolution)が始まるのが2010年で、その後、LTEの人口カバー率がある程度の水準に達するのが5年後と思われるからです。また、もう1つ、業界全体の動きとして、安くて定額のデータ通信サービスを提供することも重要です。通信キャリアにとってはそこが生命線なので、価格を下げても生き延びていくという大きなチャレンジになるでしょう。そのヒントとしてSaaSがあり、コンテンツのディストリビューションサービスに可能性を見い出します。

 こういう環境が実現しても、PCには依然としてローカルストレージが必要ですが、容量は何百Gバイトもいらないかもしれません。そうなったらシリコンストレージで十分ですし、そのころにはシリコンの価格対容量の関係が今のHDD並みになっている可能性もあります。VAIO type U(VGN-UXシリーズ)はSSDを世界で最初に使ったPCの1つですが、このトレンドは確実に加速します。そのくらい「NANDシリコン」単価の下落はすごいですから。おそらく2010年にはHDDとビット単価コストが逆転してくるでしょう。そうなったら、モバイル向けノートPCのストレージはフラッシュに置き換わります。ソニーとしてもそういう方向にドライブしていきたいと考えます。VAIOのCTOサイトを見ると分かりますが、必ずフラッシュのストレージオプションを用意しています。

 トレンドはソニーが作ります。それがソニーの魅力なのです。


 カセットテープ対応ウォークマンの時代、筐体の色が「白」「黒」「シルバー」のモデルが売れセンだったが、その次にはブルーの製品が人気だったという。ところが、21世紀のVAIOでは、「ピンク」がすごく売れているのだそうだ。さらに、暖色系の製品も人気があるらしい。この傾向の違いは、PCのカラーイメージに対するユーザーの考えがウォークマンユーザーとは異なることを意味している。黒岩氏は、製品の価格が10万円を切った時点で、ユーザーの製品に対する思い入れは変わってくるのだと力説する。このラインを切ったところで、人とは変わった色の製品を欲しがるようになり、いろいろなカラーバリエーションを求めてくるのだという。

 貴重品ではなくガジェットとして認識されるようになればPCの世界は変わる。それをワイヤレスブロードバンドが後押しする。ノートPCは、まだまだ面白くなるに違いない。

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